ツインリンクもてぎで行なわれたMotoGP第16戦・日本GPで優勝したマルク・マルケス(レプソル・ホンダ・チーム)は、25歳と246日という若さで最高峰クラス5度目の年間総合優勝を達成した。125ccクラスとMoto2を含めて7度目の…

 ツインリンクもてぎで行なわれたMotoGP第16戦・日本GPで優勝したマルク・マルケス(レプソル・ホンダ・チーム)は、25歳と246日という若さで最高峰クラス5度目の年間総合優勝を達成した。



125ccクラスとMoto2を含めて7度目の年間王者に輝いたマルク・マルケス

 マルケスは、MotoGPに昇格した2013年と2014年を連覇。2015年はランキング3位で終えたものの、翌2016年から今年まで3年連続で王座を制覇した。

 ホンダの最高峰クラス5回チャンピオンといえば、誰もが思い浮かべるのはミック・ドゥーハンだろう。1994年から1998年まで圧倒的な強さを誇示し続けたドゥーハンが最初に年間総合優勝を達成したのは29歳の時、5度目が33歳の時だったが、マルケスは25歳という若さで同じ数字に到達してしまった。また、最高峰クラスで5回の年間総合優勝の最年少記録は、バレンティーノ・ロッシが2005年に達成した26歳221日だったが、マルケスはその記録を塗り替えた。

 だが、今回の日本GP決勝レースに至るまでのウィークの流れは、マルケスにとってけっして優位に推移してきたわけではなかった。

 下馬評では、マルケス対アンドレア・ドヴィツィオーゾ(ドゥカティ・チーム)の一騎打ちになるだろうという予想が多く、実際に金曜午前のフリープラクティス(FP)1回目はドヴィツィオーゾがトップタイム。午後のFP2は雨の影響で路面が濡れたウェットセッションになり、マルケスはコースに出ず様子を見たままこの日を終えた。

 土曜午前のFP3でもトップはドヴィツィオーゾ。午後の予選に先だつFP4は、翌日の決勝時刻に時間帯が近く、ほぼ同様のコンディションを期待できるため、大半の選手がレースを想定してユーズドタイヤを履いたシミュレーションを実施する。

 このセッションでは、マルケスが一頭地を抜くレースペースだったが、終了直前に転倒。これが響いて、グリッドポジションを争うタイムアタックの予選では6番手タイムで終えることになってしまった。一方のドヴィツィオーゾは予選トップタイムでポールポジションを獲得する。

 このふたりは、最終ラップの最終コーナー立ち上がりまで続く激しいバトルを、これまでに何度も繰り広げている。昨年のもてぎでも、雨の中で激しい接近戦を続け、最後はドヴィツィオーゾが制した。

 土曜予選までの推移を見れば、やはり皆の事前予想どおりに、今年のもてぎもこの両雄が真っ正面からぶつかり合う気配が非常に濃厚だった。そして日曜午後の決勝レースは、まったくそのとおりに推移した。

 午後2時にスタートした全24周のレースは、周回ごとに緊張感を高めながら終盤へと向かっていった。だが、23周目の後半セクション、バックストレート手前のヘアピンでドヴィツィオーゾが転倒し、勝負は決した。

 マルケスがホンダのホームコースであるツインリンクもてぎでチャンピオンを確定させたのは、2014年と2016年に続き、今回が3回目となる。日本GPはシーズン終盤戦に開催されるために、チャンピオン争いの天王山となるのは、ある意味では当然の成り行きともいえる。

 だが、そのチャンスを逃さずにきっちりとものにする彼の強さは、「運」や「流れ」などの漠然とした偶然性とは明らかに異なる、強靱な意志と覚悟、そして周到な準備に裏打ちされたものであることは、彼が発するさまざまな言葉の端々からもうかがえる。

 ともあれ、今年もチャンピオンを獲得したことで、ツインリンクもてぎに何か縁のようなものを感じるのか、それともシーズン終盤戦ゆえの単なる偶然の帰結と割り切っているのか。そんな質問を投げかけてみた。

「(ホンダから)もっと予算をもらうためだよ!」と、マルケスは軽くジョークを飛ばし、こう続けた。

「どうしてここでチャンピオンを何回も獲れるのかはわからないけど、ホンダの皆はそれを祈ってくれるし、日本のスタッフたちもとても喜んでくれている。

 今日は、朝のウォームアップのあとに社長が来て、『今日は決めてくれるね』と言われたんだ。『あ……わかりました』と返事したんだけど(笑)、そのあと、エミリオ(・アルサモラ/マルケスのマネージャー)とアルベルト(・プーチ/チーム監督)がやってきて、『普通でいいんだからな、普通で。気にするな』と慌てて言いに来たよ。

 もちろん、今回はホンダにとって重要なレースだとわかっていたし、そもそも僕はプレッシャーがあったほうがうまくやれるんだ。プレッシャーは好きだね。だから、プレッシャーがないときでも作ろうとするんだ。そのほうが集中できるから」

 強烈なプレッシャーにも押しつぶされることなく、むしろそれをさらなる集中力へと高めてゆく精神の強さ。そこにマルケスの強さの秘訣があるのだろう。勝利を続ければ続けるほど、連覇へのプレッシャーはどんどん大きくなってゆく。さらに2019年には、ホルヘ・ロレンソ(ドゥカティ・チーム)がチームメイトとしてやってくる。

「毎シーズン、プレッシャーはある。だから、タイトル争いをするモチベーションもある。レース人生の最後までそんなふうに戦っていきたいね。

 今日は祝勝会をして、オーストラリアでも祝勝会をして、マレーシアでも祝勝会をして、(日本GPからの3連戦が終わると地元に戻って実家のある)セルベラで祝勝会をして、(最終戦の)バレンシアでまた祝勝会をする(笑)。そして1月1日から、2019年シーズンに向けて集中して全力で戦っていく」

 だが、マルケスにはその前にまだやるべきことがある。チームタイトルとコンストラクターズタイトルを制し、ホンダ3冠を達成するという重要な仕事が、2018年の残り3戦で待っている。