WEEKLY TOUR REPORT米ツアー・トピックス 2018-2019シーズンが開幕したPGAツアー。現在はアジアシリーズが開催されており、マレーシアを皮切りに、韓国、中国でトーナメントが行なわれる。 そんななか、ジョーダン・スピ…

WEEKLY TOUR REPORT
米ツアー・トピックス

 2018-2019シーズンが開幕したPGAツアー。現在はアジアシリーズが開催されており、マレーシアを皮切りに、韓国、中国でトーナメントが行なわれる。

 そんななか、ジョーダン・スピース(アメリカ)がアメリカ・ネバダ州ラスベガスで行なわれるシュライナーズ・ホスピタル・フォー・チルドレンオープン(11月1日~4日/TPCサマリン)への初参戦を発表。スター選手の大会出場を受けて、開催地ラスベガスは大いに沸いている。



人気選手のジョーダン・スピースが秋開催の試合出場を発表

 スピースが秋に開催されるPGAツアーに参戦したのは、過去3回。2013-2014、2014-2015、2015-2016シーズンと、世界選手権シリーズ(WGC)HSBCチャンピオンズに3年連続で出場しただけだ。特に近年は、シーズン終了後の10月~12月にかけての時間はほとんどオフに充て、契約スポンサーのイベントに参加するなど、試合以外のところで忙しく過ごしているのが恒例である。

 それが今季、3シーズンぶりに秋開催のツアー参戦を表明。それも、WGCのような特別な大会ではなく、通常のトーナメントに出場することになった。

 実は、それには理由がある。PGAツアーとの話し合いによって、前シーズンのペナルティーの代わりとして、今回の出場が決まったのだ。

 PGAツアーには、2016-2017シーズンから施行されている、シード選手の『年間出場義務25試合』というルールがある。

 このルールは、タイガー・ウッズ(アメリカ)やフィル・ミケルソン(アメリカ)らライフタイムメンバー(※永久シード選手。ツアー通算20勝以上を挙げ、ツアーメンバーとして15年以上プレーしている者)や、45歳以上のベテラン選手には適用されないが、それ以外のシード選手は皆、1シーズンにおいて最低25試合は出場しなければいけないというもの。

 違反したら罰金、もしくは出場停止などの厳しい処分を受けることになるが、それには免除ルールもあって、『過去4年間に出場していない試合に出場する』ことで、厳罰を免れることができる。

 昨季(2017-2018シーズン)、左手のケガもあって出場試合が25試合に満たなかった松山英樹も、5月に過去に出場したことがなかったAT&Tバイロン・ネルソンに出場。同ペナルティーを免除されている。

 今回の、スピースのシュライナーズ・ホスピタル・フォー・チルドレンオープンへの出場も、同ペナルティー免除のためである。

 ただ、そもそもスピースの場合、本人の目算ではフェデックスカップ・プレーオフ最終戦のツアー選手権に出場すれば、ライダーカップを加えて、ギリギリで25試合という出場義務を果たせるはずだった。

 ところが、プレーオフ3戦目のBMW選手権で振るわず、同トーナメン終了時点のフェデックスカップ・ポイントが31位。30位までの選手に出場権が与えられる最終戦へ駒を進めることができなかった。

 その結果、出場義務25試合を満たせず、また同シーズン内に『過去4年間に出場していない試合に出場する』こともしていなかったため、スピースはルールに抵触。罰金、もしくは出場停止の処分に直面する状況に陥ってしまったわけだ。

「出場試合数を満たせず、ペナルティーを受ける状況になってしまったのは、僕の責任。これからPGAツアーと話し合って、(PGAツアーから指示された)処分にきちんと対処したい」

 シーズン後にそう語ったスピース。自らのルール違反については真摯に受け止めていた。

 公表はされていないが、おそらく罰金となると、その額は2万ドル(約220万円)と推定されている。昨季はやや不振で未勝利に終わったとはいえ、スピースの同シーズンの獲得賞金はおよそ279万3536ドル(約3億円)。2万ドルの罰金など、金銭的にはさしたるペナルティー効果はないかもしれない。

 結局、シーズン終了後にジェイ・モナハンコミッショナーとの話し合いを持ったスピース。罰金や出場停止のペナルティーを受ける代わりに、新シーズンにこれまで出場することのなかった試合に参戦する、という処分で話はまとまったようで、冒頭のとおり、シュライナーズ・ホスピタル・フォー・チルドレンオープンへの参戦を発表した。

 スピースが語る。

「もともと、この大会にはずっと出場したいと思っていた。でも、なかなかそのチャンスがなかった。コースも素晴らしいと聞いているので、参戦するのがとても楽しみだ」

 顧みれば、『年間出場義務25試合』ルールが設けられたのも、人気のない大会を保護するため。PGAツアーの大会であれば、どの試合も大盛況かと言えば、決してそんなことはなく、スケジュールや会場(場所)によっては、なかなかトップ選手が集まらない試合も存在する。そこで、同ルールを設定し、人気選手がより多くの試合に出場する、あるいは、これまで参戦していなかった試合に人気選手が出場することで、トーナメントの活性化を図り、新たなファンの獲得も見込んでいる。

 ちなみに、スピースの他にも、イアン・ポールター(イングランド)が出場25試合を満たせずにルール違反となったが、彼もまた、新シーズンに出場経験のない試合に参戦することで、ペナルティーは免除されるようだ。

 何はともあれ、スピースのルール違反は残念なことではあるが、コミッショナーの粋な計らいにより、今回のことはラスベガスのファンにとって、結果的にうれしいニュースとなった。

 同大会には他にも、リッキー・ファウラー(アメリカ)、ブライソン・デシャンボー(アメリカ)、トニー・フィナウ(アメリカ)らトッププレーヤーが出場予定。例年になく、ハイレベルな戦いが繰り広げられそうで、楽しみな大会のひとつになった。