10月24日、25日に、両国国技館で日本初の卓球リーグ「Tリーグ」(Tプレミア)が開幕する。

 この歴史的な瞬間を前に、日本の卓球界はかつてない盛り上がりを見せている。福原愛、石川佳純、水谷隼らが世界と伍して戦えることを証明し、さらに平野美宇、伊藤美誠の「みうみま」コンビ、張本智和など若手の選手が台頭。2016年のリオデジャネイロ五輪や2017年の世界選手権での日本チームの躍進が、卓球人気をさらに加熱させた。

 絶対王者・中国に肉薄するまでに力をつけ、2020年の東京五輪でもメダル獲得が期待されている競技だが……。これまでは日本国内に世界レベルのリーグはなく、ドイツ、ロシアなどのプロリーグに参戦して腕に磨きをかける日本人選手が多かった。

 そこで、自国のリーグで育成を強化し、あらゆる面で卓球というスポーツの価値を上げる目的で設立されたのがTリーグだ。最上位リーグのTプレミアを頂点に、その下に全国リーグ、東西ブロック、地方エリア、都道府県、市町村地域リーグと、ピラミッド型のリーグ組織を作っていくのが全体の構想である。まずはTプレミアが日本最高のプロリーグとしてスタートし、2020年以降に下部リーグを順次広げていく。

 歴史的な一歩を踏み出すTプレミアの魅力を存分に堪能するためにも、参加チームと基本的なルールをチェックしていこう。

 リーグの船出となる2018-2019シーズンには、男女それぞれ4チームが参戦する。『直近2シーズンで世界ランキング10位以内の選手を入れる』などと厳しい参加条件をクリアしたチームである。

【男子】
木下マイスター東京(東京)
T.T彩たま(埼玉)
岡山リベッツ(岡山)
琉球アスティーダ(沖縄)

【女子】
木下アビエル神奈川(神奈川)
TOP名古屋(愛知)
日本生命レッドエルフ(大阪)
日本ペイントマレッツ(大阪)

 各チームは来年2月までに21試合のリーグ戦(ホーム&アウェー方式)を行ない、上位2チームが3月のファイナルで優勝を争う。試合はダブルス1マッチ、シングルス3マッチの「4マッチ制」で、ダブルスは2ゲーム先取、シングルスは3ゲーム先取でそのマッチを手にする。4マッチを終えた時点でマッチカウントが2-2になった場合は延長戦に突入し、シングルスで11ポイント先取の1ゲームを戦うことになる。

 ベンチ入りできる選手は4~6名で、各チームは1試合に4名以上を出場させなければならない。2マッチ連続で同じ選手が出ることは禁止されているため、「全試合、張本でいく!」といったオーダーを組むことはできないことになっている(延長戦は、直前のマッチに出場した選手でも可)。

 3マッチを終えた時点でマッチカウントが3-0になれば勝敗が決するが、その場合も4マッチまで行なう。これは、年間順位を決める「勝ち点」に関わってくるからだ。



 

 延長戦での勝利を含め、勝ったチームには勝ち点3が与えられるが、4-0のストレートで勝利した場合にはさらに1ポイントが追加される。リーグ終了時に他のチームを上回るためには、負けが決定しても最後まで粘ることが重要になってくるため、最後まで白熱した戦いが期待できるのだ。

 ここからは、各チームの注目選手を紹介していこう。男子4チームの中で優勝候補と目されているのは木下マイスター東京だ。水谷と張本という日本男子卓球界のトップ2に加え、昨年11月に世界ランキングを9位まで上げた松平健太(現在は17位)や、持ち前のパワーを武器に、昨年の世界選手権ダブルスで銀メダルを獲得した大島祐哉など、盤石な陣営で初代王者を奪いにいく。

 その木下と開幕戦でぶつかるT.T彩たまも、強力なメンバーを揃えている。リオ五輪でも団体銀メダルに貢献した”ビッグサーバー”吉村真晴はもちろんだが、韓国のチョン・ヨンシクにも注目したい。同選手は今年5月の世界選手権団体で水谷、張本を連破覇しており、開幕戦でもその再現を狙っている。

 その2チームに遅れて(10月26日)開幕を迎える岡山リベッツと琉球アスティーダも、虎視眈々と頂点を狙っている。

 岡山は10シーズンにわたってドイツでプレーし、大島とダブルスを組んで世界選手権銀メダルを獲得した森薗政崇がチームをけん引する。さらに、昨年の世界選手権で3位に入った韓国のイ・サンスは、世界ランキング日本人トップの張本(8位)より上の7位。強烈なドライブが武器の彼が”絶対エース”として活躍すれば、リーグを優位に進められるだろう。

 琉球は、他のチームとは一線を画したチーム編成になっている。リオ五輪メンバーで国際大会での実績も豊富な丹羽孝希がエース格だが、台湾の選手が3人も名を連ねている。中でも、元世界ランキング3位のチュアン・チーユアンは、37歳になった今も世界のトップで活躍する”鉄人”。また、福原愛の夫であるジアン・ホンジエが、Tリーグ理事を務める妻の前でどんなプレーを見せるのかにも注目したい。



Tリーグに参戦する男女8チーム

 一方の女子で強力なメンバーを揃えているのが、木下アビエル神奈川と日本生命レッドエルフだ。

 木下は、10月上旬に参戦を表明した石川佳純が加入したことで戦力に厚みが出た。その石川から刺激を受け、2016年の世界選手権で銀メダルを獲得した20歳の”卓球美少女”浜本由惟、今年の世界選手権に選出された15歳の長崎美柚、さらに張本の妹で現在小学4年生の美和とも契約して話題を集めている。

 日本生命の主力は、2017年に中国のトップ3を倒してアジア女王に輝いた平野と、長身を生かしたパワーが魅力の早田ひなの”日本代表コンビ”になる。チームを率いるのは、2016年リオ五輪まで8年にわたり女子代表の監督を務めた村上恭和氏。五輪で2大会連続のメダルを獲得した手腕を、Tリーグでも存分に発揮してくれるだろう。

 木下と両国での開幕戦を戦うTOP名古屋は、ルーマニアの実力者であるエリザベタ・サマラや、フォアドライブが強烈な世界ランキング8位のチェン・イーチン(台湾)など海外勢がチームを引っ張る。日本ペイントマレッツも、「みうみま」コンビと共に”黄金世代”のひとりに数えられる19歳の加藤美優、2人の兄とともにTリーガーになった松平志穂、日本生命から移籍した田代早紀ら実力者に加え、開幕直前になって2012年ロンドン五輪女子シングルス銅メダリストで世界ランク最高2位のフォェン・ティエンウエイ(シンガポール)の参戦が伝えられている。

 今回、伊藤美誠は悩んだ末にTリーグ参戦を見送った。日本代表に選ばれるためには、ワールドツアーでポイントを獲得し、世界ランキングを上げる必要がある。Tリーグも、もっとも成績のよかった選手は世界選手権の代表候補になる規定は組み込んであるものの、五輪の選考に関わるポイントなどは得られない。東京五輪でのメダル獲得に重点を置く伊藤は、苦渋の選択をしたことになる。

 代表選考基準との関わりだけでなく、木下アビエル神奈川に加入した袁雪嬌(えん・せつきょう)以外の中国人選手の参戦が見送られるなど、Tリーグの松下浩二チェアマンが目指す「世界一のプロリーグ」になるための課題は残されている。それでも、リーグが始まってから露見するであろう改善点を生かしてブラッシュアップし、何より、選手がレベルの高いプレーを見せてくれることでリーグの価値は高まっていくはずだ。

 日本卓球界の未来を担うTリーグは、選手たちが織り成す熱戦だけでなく、リーグの成長にも注目して楽しんでほしい。