やっぱり王者は強かった。全日本大学対抗王座決定試合(王座)はついに決勝戦。14連覇を狙う男子部の対戦相手は強豪・慶大だ。関東大学リーグ(リーグ)では、最後の一戦まで勝敗が分からないほどに苦戦を強いられた相手。宿敵との頂点を懸けた戦いは、予…

 やっぱり王者は強かった。全日本大学対抗王座決定試合(王座)はついに決勝戦。14連覇を狙う男子部の対戦相手は強豪・慶大だ。関東大学リーグ(リーグ)では、最後の一戦まで勝敗が分からないほどに苦戦を強いられた相手。宿敵との頂点を懸けた戦いは、予想通りの熱戦となった。ダブルスでは1-2とリードを許した早大。しかし焦ることなくシングルスで白星を重ね、6-3で勝利。「王座で優勝するためにみんなでやってきてよかった」(坂井勇仁主将、スポ4=大阪・清風)。庭球部の一年は最高の結末を迎えた。


勝利の瞬間、ハイタッチする坂井(左)と田中優

 「カギはダブルス」。今季、団体戦に向けてのカギを尋ねると、誰もが口にした言葉である。慶大は今季の団体戦をほぼ同じペアリングで戦っており、その安定感は抜群だ。盤石の布陣に対し、1勝でも多くもぎ取るべくダブルスの戦いが始まったが、やはり一筋縄ではいかない。最初に勝ち星を許したのは、島袋将(スポ3=三重・四日市工)・木元風哉(社2=埼玉・早大本庄)組。相手の好リターンに苦しめられ、あっさりと試合を落としてしまう。齋藤聖真(スポ4=神奈川・湘南工大付)・古賀大貴(スポ3=大分舞鶴)組も悪い流れを断ち切れない。早慶戦の度に圧巻のパフォーマンスを見せる福田真大(3年)・今村昌倫(2年)組に対し、なかなかキープすることができず、2勝目を与えてしまった。何としてでも全敗は避けたい早大。慶大を食い止めたのは、坂井・田中優之介(スポ2=埼玉・秀明英光)組だった。「学生大会最後のダブルスで、絶対勝とうって気合を入れて臨んだ」(坂井)。リーグでは惜敗したペアに対し、第1ゲームでのブレークを守り切りファーストセットを先取すると、タイブレークにもつれ込んだセカンドセットも何とか勝ち切り、貴重な一勝を手に入れた。


チームの応援を盛り上げる千頭(右)

 早大の勝利のためには6戦中4勝が必要なシングルス。厳しい状況かと思われたが、選手たちに焦りはなかった。まず試合に入ったのは、千頭昇平(スポ2=愛知・誉)、藤井颯大(スポ2=京都・同志社国際)の二人。「重要なシングルス下位が2年生。僕らならいけるんじゃないかという自信を持って入れた」(千頭)、「慶大はダブルスが強いので、1-2は想定内だった」(藤井颯)。今大会、大活躍の2年生が、この日も早大へと流れを呼び込んだ。先に白星を持ち帰ったのは藤井颯。ロングラリーでも冷静にボールをつないでいく。中盤は相手のペースに持ち込まれた場面もあったが、自分のテニスを取り戻しストレート勝ちを収めた。一方の千頭も盤石の戦いぶりを見せる。1試合を通して一度もブレークを許さずに完勝。立て続けに勝利を挙げ、総合スコアで逆転した。しかし、さすがは慶大。簡単には進まなかった。シングルス3の小林雅哉(スポ3=千葉・東京学館浦安)は、今村の力強いストロークに応戦し切れず敗北。シングルス5の田中優も、ファーストセットを奪われてしまい、流れは再び慶大に傾くかと思われた。


古田は4年生対決を制し、大きな1本を持ち帰った

 しかし、ここを食い止めたのが、シングルス2の古田伊蕗副将(スポ4=静岡・浜松市立)だった。逸崎凱人との4年生対決は、手に汗握る接戦に。6-5で迎えたファーストセットの第12ゲームでは、持ち味のしぶとさで相手を上回りキープ。これで完全に波に乗った古田は、セカンドセットでもゲームを連取し、4勝目を挙げた。程なくして勝利を収めたのは、不動のエース島袋だ。今季二度の早慶戦ではいずれも敗れていた羽澤慎治(1年)との対戦。セットを取り合い迎えたファイナルセットは、序盤から相手を突き放す。マッチポイントをしのがれる場面もあったが、エースの意地を見せ勝利。見事、早大の14連覇が決定した。最後はセカンドセットから巻き返した田中優も逆転勝ちを収め、総合スコア6-3で宿敵を下した。


ポイントを取りガッツポーズを見せる島袋

 前人未到の大偉業を成し遂げた選手たち。思えばこの一年は順風満帆とはいかなかった。個人戦では他大の選手にタイトルを奪われる機会が多く、団体戦でも敗北寸前まで追い込まれる試合を何度も経験した。タイトル獲得や団体戦での勝利は当然のこと。そんな常勝軍団ゆえの重圧に押しつぶされそうになりながらも、チーム全員が自分を、そして仲間を信じ、乗り越えた。「言葉では言えないうれしさがあります」という坂井の言葉には、そんな一年間が集約されているに違いない。同時に、来年もまた王座連覇への挑戦権を得ることとなった。よりよいチームを作り上げ、王者の系譜をつなぐために――。早大庭球部の戦いは、これからも続く。

(記事 吉田優、写真 松澤勇人)


王座14連覇を果たした男子部

結果

○早大6-3慶大

ダブルス1
〇坂井勇仁主将・田中優之介6-4、7-6(6)逸﨑凱人・羽澤慎治
ダブルス2
●齋藤聖真・古賀大貴4-6、4-6福田真大・今村昌倫
ダブルス3
●島袋将・木元風哉3-6、2-6畠山成冴・山﨑瑛二


シングルス1
〇島袋将6-2、5-7、6-3羽澤慎治
シングルス2
〇古田伊蕗副将7-5、6-2逸﨑凱人
シングルス3
●小林雅哉3-6、2-6今村昌倫
シングルス4
〇千頭昇平6-4、6-2畠山成冴
シングルス5
○田中優之介5-7、6-1、6-3甲斐直登
シングルス6
○藤井颯大6-2、6-4中村進之介


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チャンピオンスピーチ


坂井主将

坂井 まずはじめに、今大会を主催していただいた全日本学生テニス連盟の皆さま、スポンサー各社の皆さま、愛媛県テニス協会の皆さま、そして審判をしてくださった皆さま、本当にありがとうございました。また、早稲田大学の部員のみんな、応援してくださった保護者の皆さま、ありがとうございました。また、弥起さん(石井ヘッドコーチ)をはじめとするコーチ陣の方々も約1週間、本当にありがとうございました。今年の決勝戦は本当に最後の1ポイントまでどちらが勝つか分からないような戦いでしたが、なんとか男子部14連覇達成することができました。また、4年間慶應大学、関西大学、近畿大学をはじめとする素晴らしいライバルに囲まれて高め合えたことを誇りに思います。また来年からは後輩たちが王座優勝を目標に新しいチームで頑張ってくれると思うので、これからも早稲田大学庭球部の応援をよろしくお願いします。


大会MVPの古田

※監督と出場選手、4年生のコメントは近日中にアップ予定