スポーツブルのスチール写真には、時々、“スタジオ・アウパ”のクレジットが表記されているものがある。スポブルで無料閲覧可能な写真の中には、スポーツカメラマンたちの懇親の1枚が存在している。スマートフォンで手軽に写真が閲覧できる、そんな時代だか…
スポーツブルのスチール写真には、時々、“スタジオ・アウパ”のクレジットが表記されているものがある。スポブルで無料閲覧可能な写真の中には、スポーツカメラマンたちの懇親の1枚が存在している。
スマートフォンで手軽に写真が閲覧できる、そんな時代だからこそカメラマンたちの奮闘は続いている。新しいWebメディアであるスポブルは、アスリートが輝きを放つワンプレー、その瞬間を切り取り、スポーツとアスリートが持つ魅力を最大限に引き出し、喜怒哀楽を表現する。
ひいてはスポーツとの接点や体験の場をより多く作ることを根幹とし「スポブルだからこそ」の強いこだわりをもっているメディアなのだ。
また、スポブルはWebメディア媒体だが、紙媒体としての顔も持っている。新聞や雑誌が苦戦し、ペーパーレス化が囁かれている時代に、あえて無料冊子『CRAZY ATHLETES magazine』を全国のららぽーと(他三井不動産関連施設)で配布を続けている。
この取り組みは、スポブルのWeb上で展開されている動画「CRAZY ATHLETES」番組視聴に繋げるためのツールなのだが、大型商業施設など設置し、スポーツを応援する情報だけでなく、アスリートの息づかいを多くの人の目に見てもらうことを目的にしている。
この「CRAZY ATHLETES」全般を制作・発信しているのは、異色のベンチャー企業(株)運動通信社。
「スポーツブル、という名前を覚えて欲しい。スポブルアプリを一人でも多くの人にダウンロードしてもらいたい。スポブル、という言葉を一人でも多くの人に知って欲しい」
このようなメッセージを代表取締役黒飛氏もインタビューなどでたびたび発信しているようだ。
“無料冊子を手に取った人を魅了する”
そのためには、スチール写真1枚1枚のクオリティーの高さを求められるが、『CRAZY ATHLETES magazine』の撮影に一肌脱いでいるのは、日本サッカー殿堂入りした今井恭司さんだ。自身が代表を務めるスポーツカメラマン集団“スタジオ・アウパ”のメンバーもスポーツブルの撮影を手がけている。
今井さんは、サッカーカメラマンの草分けとして、半世紀に渡り日本サッカーの歴史と発展を記録に収め、多くのファンにサッカーの魅力を届けた功績が認められて、2017年の殿堂入りを果たした。
「権威あることなので僕でいいのかなという思いもありましたが、後の人につながれば嬉しいですし、(殿堂入り)したからといっても何かを変える訳でもなく、変えられる訳でもありません。これからも今までのようにやり続けるだけです」(今井さん)
大学で撮影を学び、広告カメラマンとして写真家としての一歩をスタートさせた今井氏。当時は、プロ化や日本のワールドカップ出場など考えられない不遇の時代だったが、サッカー専門誌の依頼を受け1972年、ペレ在籍時のサントスFC対全日本の試合から本格的なカメラマン人生をスタートさせた。
「当時はサッカー氷河期というか、難しい時代で、食べて行けるか、という不安もありました(笑)でも写真を撮ることが好きだったから、こうして続けられています」
その後はサッカー日本代表だけではなく、ジェフユナイテッド市原・千葉のオフィシャルカメラマンを務めるほか、各種スポーツの記録も撮り続けている今井さんは、人との繋がりを大切にしているという。
選手のことを呼び捨てにせず、同じ目線に立ち、どんな相手にでも敬意をもって接している。そんな今井さんの周りには必然的に多くの人が集まってくる。カメラを向けた瞬間に被写体を笑顔に変える術は“今井”魔法の一つだ。
優しい語り口と柔和な姿勢は周りを惹きつけるからこそ、殿堂入りが決まると多くの後輩記者、同僚や仕事関係者、そしてサポーターからも祝福されていたことも愛されている証拠だろう。
『CRAZY ATHLETES magazine』やスポーツブルのWeb上には、同業者も唸るような今井さんらの渾身のショットが掲載されている。今井さんのモットーは、撮影の準備を怠らないこと、アスリートの気持ちが出ている写真を切り取ることの2点。この2点に気を払い撮影していることで、紙面からは躍動感や情感が伝わってくる。
70歳を超えても精力的に現場を飛び回り、サッカーをはじめとするスポーツを撮り続けている今井さんに、これまでのベストショットを訊いてみた。
「皆さんに訊かれるんですけど、沢山あると同時にまったく無いんですよ。それはね、写真を見た人が判断して喜んでくれるのがベストであって、プロのカメラマンとしてその都度その都度が常にベストでなければいけないと思っています。目標値は高く持つこと、一番の敵は自分です(笑)」
常に努力を重ね、歩み続けることのへの信念を語ってくれた。
そんなカメラマンを生業とする今井さんでさえ、意外な撮影をすることもある。
可愛いお孫さんの写真は、スマートフォンを使って撮影するらしい。そこでは、愛らしい被写体に「嫌だ、嫌だ」と断られることもあるのだとか。なんとも微笑ましい光景だ。
今井さんの写真には信念と情熱が投影されている。ファインダー越しに写る今井さんだけの豊饒な世界。今日も「最高の一瞬」を追及するためにシャッターを切る。
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取材・文/石田達也(スポーツライター)
写真協力/スタジオ・アウパ