WEEKLY TOUR REPORT米ツアー・トピックス 2018-2019シーズンの開幕戦、セーフウェイオープン(10月4日~7日/カリフォルニア州)は、ケビン・ツエー(アメリカ)が優勝。ライアン・ムーア(アメリカ)、ブラント・スネデ…

WEEKLY TOUR REPORT
米ツアー・トピックス

 2018-2019シーズンの開幕戦、セーフウェイオープン(10月4日~7日/カリフォルニア州)は、ケビン・ツエー(アメリカ)が優勝。ライアン・ムーア(アメリカ)、ブラント・スネデカー(アメリカ)とのプレーオフを制して、念願のツアー初勝利を飾った。

「ツエー」という名前には、聞き覚えのあるゴルフファンも多いのではないだろうか。そう、父は1986年の全米プロ選手権を制したメジャーチャンピオンで、ツアー通算8勝を上げているボブ・ツエーである。



プロに転向する前のケビン・ツエー。左は息子のショットを見守る父ボブ・ツエー

 PGAツアーにおいて、親子で勝利を挙げているのは、今回のツエーらで10組目となる。というわけで今回は、ツアーで活躍した、または活躍している”親子ゴルファー”にスポットライトを当ててみたい。

 古くは、トム・モリス親子(スコットランド)がいる。父であるトム・モリスは全英オープンで1961年、1962年と連覇を達成。さらに1964年に3度目の栄冠を獲得しているが、その4年後にはトム・モリス・ジュニアが全英オープンで優勝。以降、4大会連続で同大会を制している。

 近年では、PGAツアー通算9勝のジェイ・ハースを父に持つビル・ハース(アメリカ)や、1982年のマスターズ・チャンピオンでツアー通算13勝のクレイグ・スタドラーが父となるケビン・スタドラー(アメリカ)が、親と同様にツアー優勝を遂げている。

 親子によるツアー制覇が「10組」という数字が多いのか、少ないのかは別として、ゴルフ界では「偉大な父を持つ息子は、大成するのが難しい」と言われている。

 それは、有名なゴルファーの息子は子どもの頃から注目され、過度な期待を受けるからだ。とすれば、そんな状況にある息子がツアー優勝を挙げることができたなら、それだけでも大成功と言えるだろう。

 無論、親と同様に活躍できた者もいれば、大成できなかった”息子”も数多くいる。

 メジャー18勝を含め、ツアー通算73勝のジャック・ニクラウスを父に持つ、ゲーリー・ニクラウス(アメリカ)もそのひとりだ。

 ジュニア時代から頭角を現し、15歳で父を負かしたという伝説を持つゲーリーは、まさに将来を嘱望されていた。”帝王”の息子ゆえ当然のことかもしれないが、まだアマチュアだった16歳のときに、米人気スポーツ雑誌の表紙を飾ったほどだ。

 オハイオ州立大に在学していたときは、オールアメリカンで活躍したゲーリー。大学を卒業後、プロに転向したが、その後は苦難の道が待っていた。

 プロ転向以降、8年間もPGAツアーのシード権が取れず、下部ツアーなどでのプレーを余儀なくされた。その際、シード獲得を目指すゲーリーに付いて回って、両親が心配そうに見つめている姿を何度も目にしたことがある。

 予選会を通過して、ようやくツアーの出場権を手にしたのは2000年。それから3年間、PGAツアーでプレーしたが、ツアー勝利を果たすことはできなかった。

 ゲーリーは結局、ツアープロとしての道を断念。2004年からは、父ニクラウスとともにコース設計などのビジネスの道へと転じている。

 親子ではないものの、故アーノルド・パーマーを祖父に持つサム・サンダーズ(アメリカ)が現在、PGAツアーに参戦している。母がパーマーの娘で、サンダーズ家に嫁いだため、苗字が違う。おかげで、アマチュア時代は「パーマーの孫ということを知られずに済んだ」と、多くの”二世プレーヤー”が晒される、周囲の喧騒からは逃れることができたという。

 それでも、「ゴルフコースだと、どうしてもパーマーの孫だとわかられてしまった」とサンダーズ。今では自らの境遇を受け入れて、こう語る。

「祖父は偉大すぎる存在。ゴルファーとしては決して追いつくことはできないが、人として素晴らしいところは、少しでも追いつけるようにしたい」

 下部ツアーを経て挑んだ昨季は、フェデックスカップ・ポイント120位となり、新シーズンのシードを獲得。今季は、悲願のツアー初優勝を目指す。

 新シーズンの開幕戦で、ついに勝利をつかんだケビン・ツエーも、「”ツエー”という名前によって、どこに行っても、常にたくさんの人に見られてきた」と、これまでの苦労を改めて振り返った。

 とはいえ、ツエー親子はケビンがプロ転向を果たして以降、デビュー戦では父がキャディーを務めるなど、親子が一心同体となって息子のゴルフに力を注いできた。今回の勝利にももっとも喜びを露わにしたのは、他でもない父のボブだった。

 また、PGAツアーの勝者であるボブは、いつでもマスターズ観戦に訪れることができるが、自らがレギュラーツアーを離れてからは「今度オーガスタに行くのは、息子が出場するとき」と決めていたという。

 父ボブの願いを叶えて、マスターズの出場権を手にしたケビン。来年4月のオーガスタでは、ツエー親子の微笑ましい姿が見られるのではないだろうか。