男子ゴルフの松山英樹(LEXUS)が7月3日、リオデジャネイロ五輪に出場しないことを表明した。

虫アレルギーなどを懸念して苦渋の決断を下した。世界ランキング17位で日本勢1番手。有力なメダル候補でもあったため、決断に理解を示す一方で、「根性なし」といった揶揄も含め、辞退を残念と嘆く声も上がっている。

◆112年ぶりのオリンピック競技になったゴルフ

112年ぶりに五輪競技となったゴルフ。辞退者が続出している。ローリー・マキロイ(世界ランキング4位、英国/アイルランド出身)、アダム・スコット(世界ランキング8位、オーストラリア)に加えて、世界ランキング1位のジェイソン・デイ(オーストラリア)らも不参加を表明している。

ジカ熱を理由に挙げている選手がやはり多い。松山が虫アレルギーを懸念したことと根本的には同じ部分に起因する。ゴルフ競技は自然の中で開催されるため、虫対策を完璧に行うのは難しい。

駐日ブラジル大使館オリンピック担当外交官、アウグスト・ペスタナ参事官によると「ブラジルの8月は冬なので、夜はかなり気温が下がります。つまり、蚊がいなくなる時期なので病気の可能性は少なくなると考えられます」とし、ジカ熱の根本的な悪因自体が激減する可能性を示唆した。とはいえ、それはあくまで観光客に対してだ。

自然の中で常に虫の脅威にさらされるゴルフ選手たち。ジカ熱のみならず様々な懸念が生じるのもある種当然のことだろう。

◆オリンピックよりもツアー

また、世界的に見れば、「五輪よりもツアーの方が優先度が高い」という価値観を表明している選手もいる。

2013年にマスターズを制したアダム・スコットは、「オリンピックよりもメジャータイトルの獲得を優先したい」という理由で辞退した。

リオ五輪前のメジャー3試合と、五輪後のプレーオフシリーズを考慮。日程がタイトな時期にオリンピックが組み込まれるのは負担だと主張した。

ジカ熱への懸念、家族への影響が理由と説明したロリー・マキロイも、今シーズンのはじめには「オリンピックの金メダルより、メジャータイトルのほうが重要だ」と話していた。

また、スコットの発言にジェイソン・デイは、「僕らゴルファーにとって重要な試合はメジャー。僕らのキャリアは何度メジャーで優勝したか、ツアーで何勝したか。だからオリンピックに出ない選手を責められない」と理解を示した。なお、デイ自身も「妻が妊娠しており、ジカ熱は潜在的なリスクになる。難しい決断だが家族を優先した」と出場を辞退している。

オリンピック出場によるデメリットもあるのだ。リオオリンピックに出場する場合、欧米のツアー日程と重なり、メジャー日程が過密になって調整が難しくなる。

◆賞金の規模と権威に乖離

賞金についても見ておくべきだろう。長い歴史と伝統を誇るマスターズ、全米オープン、全英オープン、全米プロと言った男子のメジャーは、賞金も総額10億円規模。

オリンピックを見てみると、メダリストは、JOC(公益財団法人日本オリンピック委員会)から金500万円、銀200万円、銅100万円の報奨金、さらに各競技団体や所属会社、オフィシャルパートナー企業などから別に報奨金が与えられる(競技によって異なる)とはいえ、メジャーの賞金と比較すれば桁が違う。

賞金の問題はオリンピックに出場できるような選手にとって大きな問題ではないかもしれないが、オリンピックが持つ伝統、魅力に代わる価値を金額面で反映しきれていないのは数字に表れている。

今までプロゴルファーはオリンピックを目標として設定していなかった。メジャーに向けて例年調子を整えていた選手が、急にオリンピックに意識を向けろと言われても対応できないのは当然なのかもしれない。

また、様々な政治的な問題も懸念されているリオデジャネイロ。ペスタナ参事官は「政治は政治、オリンピックはオリンピックです」と話す。全ては始まってみないとわからない。