3−0の快勝劇だったにもかかわらず、試合後の青山敏弘は浮かない表情だった。好パフォーマンスを称えても、「どうですか…
3−0の快勝劇だったにもかかわらず、試合後の青山敏弘は浮かない表情だった。好パフォーマンスを称えても、「どうですかね……」と、苦笑いを浮かべるばかり。
もともと、天邪鬼(あまのじゃく)なタイプではある。いいプレーをした日にかぎって、「全然ダメだったでしょ」とか「たまたまですよ」とか、自嘲する。でも、その表情は晴れやかだから、それが嘘だというのはバレバレだ。

パナマ戦でキャプテンマークを巻いてプレーした青山敏弘
ところが、パナマ戦の後は明らかに納得のいかない様子だった。そのパフォーマンスは秀逸だったのに。
森保一監督の初陣となった先月のコスタリカ戦に続き、キャプテンマークを巻いてスタメン出場した青山は、立ち上がりからまさにピッチ上の司令官として、堂々とした振る舞いを見せていた。
やや低めの位置を取り、最終ラインからのボールを受けると、両サイドに力強いインサイドキックでパスを散らして、リズムを生み出していく。プレッシャーが強かったコスタリカとは異なり、パナマが前から取りに来なかったこともあったが、青山は自由自在にボールを引き出し、パスを出し続けた。
味方もここに預けておけば安心というばかりに、一旦はこの背番号17にボールを託す。攻撃のすべてが青山から始まっていたといっても、大げさではないほどだった。
「(ポジションが)落ちていたからね。自然とそうなっただけ」
たしかにこの日の青山は、いつもよりも位置取りが低かった。時には最終ラインまで下りてきて、ビルドアップの役割を担った。それゆえにボールに触る機会が多かったのだが、それは決して意図したものではなかったようだ。
「ディフェンスラインに入るんじゃなくて、もうひとつ高い位置でボールに触る必要があった。ボランチふたりで、もう少しうまく配球しなければいけなかった」
スタート位置が低ければ、当然攻撃は遅くなる。パナマが自陣を固めていたこともあるが、この日の日本はたしかに遅攻が多かった。本来は素早く縦につけ、コスタリカ戦で示したように2列目のスピードアップを促したい。そうした狙いがあったはずだ。それができなかったことに、青山は納得していなかったのだ。
それでも、青山のパスワークが日本の攻撃を導いていたのは間違いない。絶妙な浮き球パスをエリア内に走りこんだ室屋成に合わせたり、大迫勇也に得意のロングフィードを届けたりするなど、多くのチャンスを生み出した。そして42分、自らのパスカットから鋭い縦パスを打ち込み、南野拓実の先制ゴールを演出してみせた。
「(南野が)いいポジションを取ってくれたんで、出しただけです」
あいかわらずの謙遜ぶりだが、このアシストシーンにも青山の不満が見え隠れする。
「あれは奪ったボールからなんでね。マイボールのときに、相手がしっかり固めている状況でも(縦パスを)入れたい」
つまり、偶発的な形ではなく、しっかりとつないで、意図的に相手の守備陣形を崩したかったということだろう。そうした形をなかなか生み出せなかったことが、青山にとっては納得できなかったのだ。
森保監督になって、まだ2試合目。チーム作りは始まったばかりだ。サンフレッチェ広島時代にも指導を受けた青山は、「森保スタイルの伝道者」としての役割も担っているだろう。そのなかで、自身のパフォーマンスは二の次。あくまでチームの成長を最優先に考えている。
とりわけ、攻撃面の連係については「まだまだ時間がかかる」と危機感を示している。コスタリカ戦では中島翔哉と堂安律の両サイドが躍動したが、原口元気と伊東純也が入ったこの日は、両者ともに得点に絡んだものの、インパクトのある活躍は見せられなかった。
「もっとスペースを使いたかったですけど、スピードアップできなかった。前に収まったときに3人目が動くようなスピード感をチームとして作っていけると思うし、そういう練習もしているけど、まだまだ時間はかかるかなと思います。ふたりとも怖い選手なので、そこはもっともっと僕らが作ってあげないといけない」
彼らの能力を引き出せなかったことを、青山は反省材料として挙げていた。
「少しでもよくしていきたい。チームとして、グループとして」
青山は「チームとして」という言葉を頻繁に口にする。吉田麻也にキャプテンの座は譲ったものの、吉田が欠場したこの日はキャプテンマークを巻き、リーダーシップを示した。チーム最年長という立場もあるだろう。チームとして、いかに成長できるか。そこにエゴは存在しない。
「僕自身は、チームとしてどう戦えるかが自分自身の評価につながると思っている」
チームが機能するために、なにができるのか。32歳のベテランMFは、自己犠牲の精神をもって青いユニフォームを身にまとう。
反省ばかりのパナマ戦だったが、青山が唯一、納得している部分があった。
「よくない時間帯に、どういう対応ができるか。そこに関しては悪くなかったと思う」
90分のなかでは、いいときもあれば、悪いときもある。この日も悪い流れに傾きかけた時間帯があったが、決して相手にペースを譲らなかった。そこには、ピッチ上で声を張り上げ、走り続けた青山の献身があった。
若手との融合、システムの使い分け、戦術的な柔軟性など、森保ジャパンが身につけなければいけない課題は、当然ながらまだまだ山積みだ。その成長過程において、この天邪鬼な司令塔がしばらく重要な役割を担っていくだろう。