2020年東京パラリンピックから採用されるパラバドミントン。一般のバドミントンと同じで、パラバドミントンも特にアジア勢が強く、現在、インドネシアのジャカルタで開かれているアジアパラ競技大会では、まさに世界レベルの戦いが繰り広げられている。



今大会SS6クラス(低身長)で、唯一出場した畠山洋平選手

 今回のジャカルタ大会は、世界の強豪である地元インドネシアをはじめ、同じくバドミントンが国技と言われるマレーシア、また普段の大会エントリー数が少ないものの強敵ひしめく中国も参加している。日本人選手にとっては、そのなかでどこまで実力を示せるか、自身の現在の立ち位置を確認するうえでも大事な位置づけとなっている。

 パラバドミントンは、大きく分けて車いす(WH1、WH2)と立位のカテゴリー(SL3、SL4、SU5、SS6)があり、障がいの程度にあわせて全部で6つのクラスに分かれている。基本ルールは一般と同じだが、車いすや下肢障がいSL3のシングルスは半面で行うなど独自の決まりがあり、それぞれのクラスで見どころがあるのもパラバドミントンの魅力だ。

 今回はそのなかで、東京パラでも実施される立位の男女混合ミックスダブルス(SL3、SL4、SU5)と低身長クラス(SS6)を紹介する。立位のミックスダブルスは、下肢障がいの「SL3」「SL4」、上肢障がいの「SU5」のなかで、クラスの数字を足した合計「8」以内の組み合わせとなる。

 今大会の日本のメンバーで、たとえば伊藤則子(SL3/中日新聞社)と浦哲雄(SU5/グリーンスタンプ)組や、杉野明子(SU5/ヤフー)・末永敏明(SL3/昭和電工)組らが、合計「8」となる。下肢障がい同士の「SL3+SL4」で合計「7」、「SL4+SL4」で合計「8」のペアもいる。合計「10」となるSU5同士、合計「9」となる「SL4+SU5」は組むことができない。

 一般のミックスダブルスのように男子選手の運動量が多くなるが、女子選手が上肢障がいクラスの杉野・末永組のようにローテーションで戦術を立てることも可能だ。

 2020年東京パラリンピックで、パラバドミントンは14種目が実施される。初採用ながら手厚い配分になったと言えるだろう。その一方で、SU5の男子ダブルス、SL3の女子シングルスなどは実施が見送られた。単複での東京パラ出場を目標にしていた女子SL3の伊藤は当初、「シングルスがないのは本当に残念」と語っていたが、気持ちを切り替え、現在はこのミックスダブルスと女子ダブルスで東京を目指している。

 東京パラでこのクラスのシングルスが採用されなかったのは、全体的に競技人口が少ないためとも言われている。国内の女子SL3の強化指定選手は伊藤を含めて2人しかおらず、今大会は伊藤が唯一の出場者だ。右脚義足の伊藤はクラスのなかでも障がいが重いほうだが、今季、競技専用の義足を新調するなどして、東京を見据えている。その強い眼差しからは、自身が活躍することで、SL3の競技人口増加につなげたいという強い思いを感じることができる。

 今大会は苦戦が続くが、伊藤は「これからも前衛の自分が狙われると思うけれど、きっちり止められるようにがんばりたい」と話してくれた。

 次に、遺伝または非遺伝性原因による低身長症の選手によるSS6クラス。SS6の選手は身体が小さく、パワーも少ない。遠心力を使ったショットが打ちにくいため、ラケットのヘッドスピードも出にくい。だがその分、俊敏さを活かしたフットワークでカバー。全面コートの広さを感じさせない動きで、観ている人を魅了する。ラインぎりぎりのショットを飛び込んで拾うといったダイナミックなプレーも、このクラスならではの魅力のひとつだ。

 日本からは唯一、畠山洋平(Tポイント・ジャパン)が出場している。畠山は高校時代の3年間、部活動でバドミントンに取り組んでいた。パラバドミントンの存在を知ったのは2016年のことで、約10年ぶりに練習を再開したものの、「最初は全然動けなくて……」と苦笑いを浮かべる。それから東京パラを狙うため本格的に競技に打ち込む覚悟を決めると、練習に集中できる環境を求めて、アスリート雇用で企業に就職した。

 2017年のペルー国際では、日本人で初めて低身長クラスでメダルを獲得。先月日本で行なわれた国際大会でも、ダブルスで銀メダルを獲得するなど、活躍の幅を広げている。

 畠山によると、低身長のクラスといっても、「子どものまま成長が止まったようなスタイルの選手もいるし、自分みたいに手足が短くてO脚が強い選手もいる」とのことで、障がいの内容や程度、筋力はさまざまだ。

「パラバドミントンのなかでも、低身長クラスは認知度が低い。自分がもっと活躍して、このクラスの魅力や、いろんな選手がいることを知ってもらいたいですね」と言葉に力を込める。

 畠山は今大会のシングルス初戦で、タイの選手と対戦。16-21、17-21で敗れたものの、体力的にきつくなる中盤以降も強化してきたフットワークでシャトルを拾いまくり、相手にプレッシャーをかけた。

 大会前、「僕はこれといった決め球がない。だからこそ、相手を動かしてしっかり決める」と話していたように、大舞台でも自身のプレースタイルを貫いた。

 選手にとって、パラバドミントンがパラリンピック種目になることは悲願だった。その大舞台まで、あと2年を切った今、選手たちはそれぞれの思いを胸に、コートに立っている。パラバドミントンをこれから初めて観戦する人も、各クラスの選手の工夫や戦術を知れば、さらに何倍も楽しめるはず。ぜひ、奥の深いパラバドミントンに注目してほしい。