季節外れの強い日差しが照りつける中、靖国神社相撲場で東日本学生リーグ戦が行われた。1チーム9人の団体戦である今大会。早大はメンバーが1人足りないという厳しい状態で臨んだ。本戦では強豪校相手に苦戦し、勝ち点をもぎ取ることができずに最下位の8…

 季節外れの強い日差しが照りつける中、靖国神社相撲場で東日本学生リーグ戦が行われた。1チーム9人の団体戦である今大会。早大はメンバーが1人足りないという厳しい状態で臨んだ。本戦では強豪校相手に苦戦し、勝ち点をもぎ取ることができずに最下位の8位に沈む。しかし、その後に行われた1部2部入れ替え戦では意地の全員相撲で見事勝利し、1部残留を決めた。

 初戦の相手は優勝候補の日大。中堅戦で橋本(侑京、スポ3=東京・足立新田)、六陣戦で長谷川(聖記、スポ2=愛知・愛工大名電)が勝利。確かな手応えを手にした。しかしチームは2勝7敗。続く日体大戦は9戦全敗。東農大戦、東洋大戦でも大きく負け越してしまい、上位とのレベルの差を痛感した。なんとか勝ち点1を獲得したい。そんな強い気持ちで臨んだ明大戦。四陣の若林主将(魁、スポ4=岐阜農林)が立ち合いのもろ手突きで相手の上体を起こし、押し出して勝利。続く中堅の橋本、六陣の長谷川が気迫のこもった相撲で連勝。3連勝と良い流れの中、土俵に上がったのは新人の二見(颯騎、スポ1=東京・足立新田)だ。相手に攻められるも周りこんでしのぎ、寄り切りで勝利。団体戦での初白星を飾った。若林からの4連勝で勝ち越しに王手をかけた早大。しかし、勝負はそう簡単ではない。続く副将の浅田(大介、社2=石川・金沢学院)、大将の佐藤(太一、社3=大分・楊志館)が痛恨の連敗を喫してしまう。結果は4−5で勝ち点を逃し、非常に悔しいものとなった。中央大戦、拓殖大戦は2−7。個人としての活躍は見られたものの、チームとして勝ち点を挙げることはできず、勝数0、得点13、8位という結果に終わった。


8戦7勝とチームをけん引した橋本

 1部最下位の早大は、1部残留を懸けて2部優勝の専大との入れ替え戦が組まれた。2部とはいえ決して侮れる相手ではない。何が何でも勝たなければならない大事な試合で、まず土俵に上がったのは、小学生時代の相撲経験を買われ、今大会に助っ人として参加している松田(凌人、基理2=愛媛・宇和島東)だ。立ち合いから突き放して自分のペースをつくると、攻め手を休めず。左を差すと豪快に下手投げを決めた。この白星を機に早大のムードは大きく高まる。しかし、二陣・勝山(烈、文構1=兵庫・葺合)は惜しくも敗北。三陣は不戦敗のため1−2と黒星先行に。だが、このままでは終われない。この悪い流れを断ち切り、早大に再び勢いをもたらしたのは今大会好調の橋本だ。左四つの形になると、相手に圧力をかけながらがぶって前進し土俵外へ。2−2とタイに戻す。さらに中堅・長谷川、六陣・若林は攻めの相撲で連勝。1部残留までいよいよあと1勝とした。仲間から割れんばかりの声援が送られる中、土俵に上がったのは佐藤。今大会は2勝ながら内容の良い相撲が目立った選手だ。立ち合い、一度目は呼吸が合わず不成立。しかし、動じることなく集中力を保つ。二度目の立ち合い。一気の出足で相手を圧倒し、電車道の相撲で見事勝利。そしてこの瞬間、早大相撲部の1部残留が決まった。土俵下には歓喜の雄叫びがとどろき、チーム一丸となって手にした勝利を全員で分かちあった。


入れ替え戦で勝利し、喜ぶ選手たち

 試合後に橋本自身が「正直、2部落ちしてもおかしくないと思っていた」と述べたように厳しい試合展開が予想された今大会。実際に本戦では1勝も挙げることが出来なかった。しかし、数十人もの部員を抱える強豪校がひしめく1部をたった8人で戦い抜き、その座を死守した経験は必ず大きな糧になるだろう。次なる舞台は11月の全国学生選手権(インカレ)。今年度の集大成となる「ベスト4」という大きな目標を達成すべく、挑戦は続く。

(記事 望月清香、写真 山口日奈子 白石智奈美 安岡菜月)

結果

1部リーグ本戦

1回戦 対日大 2勝7敗

先鋒 ●松田(寄り切り)石田参段

二陣 ●勝山(寄り切り)川副参段

三陣 ●―――(不戦敗)秋元参段

四陣 ●若林参段(押し出し)沢田参段

中堅 ○橋本参段(寄り切り)榎波参段

六陣 ○長谷川参段(押し出し)竹内参段

七陣 ●二見弐段(寄り切り)廣尾参段

副将 ●浅田参段(押し出し)木崎参段

大将 ●佐藤初段(押し出し)加藤参段


2回戦 対日体大 9敗

先鋒 ●松田(突き落とし)宮城弐段

二陣 ●勝山(押し出し)深野弐段

三陣 ●―――(不戦敗)衣笠参段

四陣 ●若林参段(押し出し)西参段

中堅 ●橋本参段(上手投げ)デルゲルバヤル参段

六陣 ●長谷川参段(押し出し)松園弐段

七陣 ●二見弐段(寄り切り)石崎弐段

副将 ●浅田参段(押し出し)高橋弐段

大将 ●佐藤初段(寄り切り)津田参段


3回戦 対東農大 1勝8敗

先鋒 ●松田(押し出し)志賀参段

二陣 ●勝山(吊り出し)加藤弐段

三陣 ●―――(不戦敗)石川弐段

四陣 ●若林参段(寄り切り)山内参段

中堅 ○橋本参段(押し出し)佐藤参段

六陣 ●長谷川参段(寄り倒し)丸山弐段

七陣 ●二見弐段(上手投げ)松原参段

副将 ●浅田参段(押し出し)日下参段

大将 ●佐藤初段(寄り切り)富栄参段


4回戦 対東洋大 2勝7敗

先鋒 ●松田(押し出し)重松弐段

二陣 ●勝山(押し出し)小野弐段

三陣 ●―――(不戦敗)川井弐段

四陣 ●若林参段(押し出し)干場参段

中堅 ○橋本参段(押し出し)浅野参段

六陣 ○長谷川参段(押し出し)羽出山弐段

七陣 ●二見弐段(寄り切り)大塔弐段

副将 ●浅田参段(押し出し)矢野参段

大将 ●佐藤初段(寄り切り)森田参段


5回戦 対明大 4勝5敗

先鋒 ●松田(押し出し)大治初段

二陣 ●勝山(寄り切り)福井弐段

三陣 ●―――(不戦敗)藤原参段

四陣 ○若林参段(押し出し)宇都宮参段

中堅 ○橋本参段(下手投げ)東参段

六陣 ○長谷川参段(肩透かし)北川参段

七陣 ○二見弐段(寄り切り)篠田参段

副将 ●浅田参段(寄り倒し)前田参段

大将 ●佐藤初段(上手投げ)川村弐段


6回戦 対中大 2勝7敗

先鋒 ●松田(寄り切り)工藤参段

二陣 ●勝山(押し出し)齋藤参段

三陣 ●―――(不戦敗)佐藤参段

四陣 ●若林参段(押し出し)西川弐段

中堅 ○橋本参段(押し出し)住木参段

六陣 ●長谷川参段(はたき込み)菅野参段

七陣 ●二見弐段(寄り切り)田中参段

副将 ●浅田参段(押し出し)中村参段

大将 ○佐藤初段(押し出し)納谷参段


7回戦 対拓大 2勝7敗

先鋒 ●松田(押し倒し)六井弐段

二陣 ●勝山(突き落とし)松浦参段

三陣 ●―――(不戦敗)山市弐段

四陣 ●若林参段(押し出し)勝呂歩参段

中堅 ○橋本参段(押し出し)勝呂隆弐段

六陣 ●長谷川参段(はたき込み)志村参段

七陣 ●二見弐段(寄り切り)井田弐段

副将 ●浅田参段(寄り切り)寺沢参段

大将 ○佐藤初段(寄り切り)松田弐段

※早大は1部8位で、2部1位の専大との入れ替え戦へ


1部2部入れ替え戦 対専大 5勝2敗

先鋒 ○松田(下手投げ)阿部

二陣 ●勝山(寄り倒し)宇佐美弐段

三陣 ●―――(不戦敗)石岡初段

四陣 ○橋本参段(寄り切り)牧園参段

中堅 ○長谷川参段(寄り倒し)岩間初段

六陣 ○若林参段(押し倒し)森田参段

七陣 ○佐藤初段(押し出し)村山弐段

※規定により、全取組行わずに1部残留決定


コメント

室伏渉監督(平7人卒=東京・明大中野)

――まず、きょうの結果を振り返っていかがですか

本当に1部残留したのが大きな収穫で、9人制なのに部員が7人、助っ人が1人の合計8人しかいない状況で残れたというのは、本当に褒めてあげたいなと思います。

――本戦は勝ち点を一つも取れない苦しい戦いでしたね

なかなかまだ力を発揮できなかったところもあるし、ただ、「この選手はここまでいけて良かったな」とかそういう収穫もあったので、全体的に見てはもちろんもの足りない部分はあったんですけど、ある程度のところでは勝てるんだなということが分かった点で、インカレに向けて良かったなとは思いますね。

――本戦の13勝中、実に6勝を一人で挙げた橋本選手(侑京、スポ3=東京・足立新田)についてはいかがでしたか

やっぱり橋本は自分でも自覚があるんで、「絶対に自分が取るんだ」というポイントゲッターですね。それから長谷川(聖記、スポ2=愛知・愛工大名電)も同じで、最初は良かったんですけど、やっぱりけがの部分もあって、まだまだ本調子じゃなかったですね。ただ、やっていけば良くなると、それは感じたので、二人を中心にどうやって(5人制の団体戦で)3点目を取るかについて考えていきたいですね。

――重要な入れ替え戦では、助っ人の松田選手(凌人、基理2=愛媛・宇和島東)が見事な勝利を収めて流れをつかみましたね

そこが本当に大きいですよね。うちのチームは前半(で出てくる選手)で勝負しないと後半になるにつれて気持ちがネガティブになってしまうので、そこをどうやってポジティブにもっていくかというのを考えました。そこであえて強い選手を体重別以降(三陣までは体重別)は並べたので、その意味ではあの1勝は本当に大きい。松田くんの1勝がみんなに元気を与えてくれたと思います。

――最後に、インカレに向けての意気込みをお願いします

インカレはAクラススタートで、どこと当たっても強いので、いかにして勝ち点を挙げてベスト8入りできるチームにするか。そこをよく考えて、あと1ヶ月ないので頑張っていこうと思います。

若林魁主将(スポ4=岐阜農林)

――主将として、きょうの団体戦にどのような気持ちで臨まれましたか

本当は、入れ替え戦に出ずに1部残留というのが目標だったんですけど、入れ替え戦になってしまっても、最低限の目標は達成出来たのでよかったかなと思います。

――団体戦全体を振り返っていかがですか

侑京(橋本、スポ3=東京・足立新田)は本当に安定感があって、しっかり勝ち星を積んでくれて、聖記(長谷川、スポ2=愛知・愛工大名電)も、本来の調子ではなかったですけど、ある程度の勝ち星を取ってくれたので、その2人は頼もしい後輩かなと思います。逆にそれ以外の人達が取れなかったという面は、当初からの課題でもあるんですけど、これからあとインカレまで1ヶ月あるのでもっと底上げできるように頑張っていきたいなと思います。

――チームとして、今日良かった点はどこですか

最終の入れ替え戦の試合で、ひとりひとりが何をやるべきかを考えて、勝ちにこだわって相撲を取れたということがこういう結果につながったのかなと思って、そういう面がすごく良かったかなと思います。

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――チームとしての悪かった点や反省点はなんですか

僕個人の反省点になってしまうかもしれないんですが…。僕は体重別の取り組みが終わった後の先攻なんですが、そこで僕が流れを作れなかったというのが、チームの勢いを殺してしまったという感じがして、そこが反省点かなと思います。

――来月のインカレに向けての意気込みをお願いします

1年前からの目標である「インカレベスト4」という目標に向けて、チームを底上げして、侑京(橋本、スポ3=東京・足立新田)とか、聖記(長谷川、スポ2=愛知・愛工大名電)とか僕で、確実な1点が取れるように、みんなで成長していきたいなと思います。

橋本侑京(スポ3=東京・足立新田)

――今回の大会にどのような気持ちで挑みましたか。

リーグ戦はインカレ前の練習だと思って、自分の相撲がどこまで通用するのかを試す気持ちでやりました。

――個人としては8戦中7勝という素晴らしい成績でしたが、振り返っていかがですか。

オーダーを見て、もしかしたら全勝狙えるかもしれない、敢闘賞取れるかもしれないと思いながら(挑みました)。初戦の日大戦がすごく大事だなと思っていたんですけど、個人で準優勝している(日大選手)相手に、良い相撲で勝つことができたので勢いがつきました。日体大戦では選手交代があって、(対戦相手となった)デルゲルバヤル選手は今一番強いクラスのトップ3には入る選手だと思うので、本当はそこで勝ちたかったんですけど、自分の相撲もある程度通じたなと感じたので自信にはなりました。

――チームとしては8位という順位になりましたが、振り返っていかがですか。

リーグ戦は9人制で僕らは人数が7人で、今回助っ人に来てもらって8人という状況下だったので、正直2部落ちしてもおかしくないかなと自分の中では思っていたんですけど、この人数で1部に残れたことは部としても大事だし、良かったと思います。

――来月のインカレに向けて意気込みをお願いします。

インカレで4年生の若林先輩は最後なので、自分の相撲を取るというかはとにかく勝ちにこだわって、去年すごく悔しい思いをしたので、自分の1勝がチームの勝ちに繋がると思って、意地でも1点取りに行きたいと思います。

長谷川聖記(スポ2=愛知・愛工大名電)

――きょうの試合は、人数の面で不利な部分もあったと思うのですが、どのような意気込みで臨まれましたか

とりあえず、自分は勝たないといけないっていう立場なので、しっかり勝てるように、意識して相撲を取りました。

―けがの状態を含めて、体の調子はいかがでしたか

けがの状態もだいぶ良くなってはきているんですけど、やっぱり練習していない分、まだ力は劣っているので、まだ練習が足りないなっていう感じです。

――今期はけがのために満足のいく試合ができなかったことも多かったと思うのですが

今までそんな、けがをして練習から離れるっていうことがなかったので、ある意味その、自分を見つめ直すっていうか、自分に何が足りないのかっていうのを、考えることができたので、プラスには自分で考えているつもりです。

――入れ替え戦の前に、何か行ったことはありますか

特にはないんですけど、まあいつも通りに相撲を取れば、勝てると思っていたので、いつも通りの相撲が取れたので良かったかなと思っています。

――1か月後にはインカレ(全国学生選手権)を迎えますが、意気込みをお願いします。

みんなで高め合いながらやってかないと、やっぱり上位には入っていけないと思うので、しっかりみんなで高め合って、上位に入賞できるように頑張っていきたいなと思います。

松田凌人(基理2=愛媛・宇和島東)

――きょうはどのような気持ちで臨まれましたか

去年このリーグ戦に出て1回も勝てなかったので、とりあえず1勝というのを目標にして挑みました。

―助っ人として参戦して初の勝利が重要な入れ替え戦でしたが、どのような気持ちですか

立ち合いだけは集中して、あとは自分のかたちを作るっていう気持ちでした。

――また試合に呼ばれる可能性があるかと思いますが、そこに向けての気持ちはいかがですか

まあ呼ばれる限りは出たいという気持ちはありますし、頑張りたいですね。

――今は野球サークルに入っているとお聞きしましたが、普段からトレーニングなどはされているんですか

ことしの前期に週2でジムには行っていたんですけど、夏休みは1回も行かずに、それでこのリーグ戦があるので稽古1回、ジム2回は直前に行きました。

――今後に向けて、相撲部の皆さんにどう頑張ってもらいたいですかa

9人制で1人足りないっていう状況で、自分みたいな助っ人もいて、今日は勝てなかったんですけど、稽古を日々積んで、次は1部の日体大とか強い大学に勝ってほしいですね。そう思います。