「強い共栄を取り戻そう」を合言葉に波乱の大会でBシードから埼玉制覇 秋季埼玉県高校野球大会は8日、県営大宮球場で決勝が行…

「強い共栄を取り戻そう」を合言葉に波乱の大会でBシードから埼玉制覇

 秋季埼玉県高校野球大会は8日、県営大宮球場で決勝が行われ、春日部共栄が東農大三を4-1で下し、15年ぶり6度目の優勝を果たした。初優勝した30年前の決勝も東農大三との顔合わせだった。

 花咲徳栄が3回戦で、浦和学院が初戦の3回戦で敗退。ともに今夏の甲子園に出場した2強が早々に姿を消したことで、今秋の埼玉大会はさらなる波乱も予想されたが、Bシード春日部共栄だけは、実力通りに結果を出した。

 就任39年目の本多利治監督(62)は「シードの意地を絶対に見せてやろうと、自分に誓っていた」と何十年経過しても変わらぬ鋭い眼光で言い放ち、「前回の優勝から15年もかかったんだなあ」と今度は真っ黒な顔をほころばせた。

 初戦の2回戦から準決勝までの4試合を1度の救援もなく投げ抜いた2年生のエース右腕村田賢一が、予想に反して先発。準々決勝と準決勝が公式戦初の連投となり、この2試合で計296球も放っていたが、「準決勝の前より体が楽で、投げさせてほしいと志願してきた」と指揮官は最終決戦もエースに託した。

 初回に1死二塁から右前打と右翼手の失策でいきなり先行されたが、2回以降は4安打無失点に封じて成長ぶりを誇示。打線もこの粘投に応え、4回無死満塁から併殺崩れの間に追い付くと、6番・平岡大典(2年)がしぶとく一、二塁間を抜いて逆転。本多監督は「準決勝と決勝はバットが振れていなかった」とチームに苦言を呈したが、7回には2安打と暴投で、8回にも1死二、三塁から平岡の左犠飛で1点ずつ奪う手堅い攻めも演じた。

2打点の平岡「監督は選手思いの素晴らしい人であり、一番の親友です」

 『強い共栄を取り戻そう――』

 これが新チーム結成時に指揮官が掲げたスローガン。酸いも甘いもかみ分けたベテラン監督が、どうしたら常勝チームに回帰できるか悩み、指導法を変化させる結論に達した。

 今夏の北埼玉大会は初戦の2回戦で伏兵の昌平に負け、春も1回戦で春日部東に足をすくわれた。特に夏の初戦敗退が決断させた一番の要因となったそうだ。

「最近は選手の気質がどんどん変わってきた。自分の指導は現代っ子に合ったものなのかを考え、選手との会話を多くすることを心掛け、個性をつぶさないことにも気を配りました」

 本多監督の教え子は1350人を数えるが、こんな接し方をしたのは初めてだ。エピソードの一つ。「平岡ね、あいつは面白い子ですよ。実に馴れ馴れしい。話し掛けてくる時に私の体を触る。きょうも(決勝打を放った)4回の打席でアドバイスを求めてくる。昔では考えられない。この野郎って思うけど、これでいいと思えるようになりました」と笑う。かつての鬼軍曹の顔はない。英断が15年ぶりの栄冠を呼び込んだ。

 2打点の平岡は確かに特異なパーソナリティーの持ち主だ。「監督さんですか? 選手思いの素晴らしい人であり、一番の親友です」と言い、「自分は沈む暇もないほど常に明るく、打席では絶対打ってやる、ピンチも必ず抑えられる、っていつも前向きです」と真顔で言う。

 こういう選手にチームメートも乗せられ、春日部共栄は見事に春と夏の屈辱を晴らし、復活を遂げた。

 ただのお調子者ではない。「関東大会は悔しい思いをした先輩の分まで勝たないといけない。優勝して明治神宮大会にも出場したい」と最後まで強気で快活な二塁手だった。(河野正 / Tadashi Kawano)