10月6日にジャパンオープン2018がさいたまスーパーアリーナで開催され、チームジャパンがチームヨーロッパ、チームノースアメリカを上回り優勝した。

 日本が優勝を決めた直後の場内インタビューで、宇野昌磨はこう話して苦笑していた。

「織田くんが、僕がロンバルディア杯のフリーで出した以上の点数だったので、それより低い点数を出してしまったら、違う意味で立場がなくなってしまうなと思って滑っていました」



ジャパンオープンで男子1位の得点を記録した宇野昌磨

 昨年は日本が2位だったこの大会で、今年もっとも会場をわかせたのは、プロスケーターの織田信成だった。

 織田は昨年、「この大会に出るのは最後」と話していたが、「ルールが大幅に変わったのでもう一回やってみたいと思った。すごくいい点数を出した2016年は4回転を2本やるのが目標でしたが、今年はお客さんと盛り上がりたいというのがテーマ」と出場を決めた。

 演技終盤には『ヤングマン』の曲に乗って観客をさらに盛り上げ、4回転トーループ+3回転トーループ、3連続ジャンプを含む2本のトリプルアクセルもきっちり決め、ノーミスの演技で現役時代の自己ベストにあと少しまで迫る176.95点を獲得したのだ。

 この点は、宇野のロンバルディア杯のフリーを4.90点上回る。宇野はもちろん、現役復帰を発表した髙橋大輔にも、強烈な刺激になる演技だったと言えるだろう。

 織田の演技の勢いに飲み込まれたのか、次のハビエル・フェルナンデス(スペイン)はジャンプでミスを繰り返して157.86点。続く世界王者のネイサン・チェン(アメリカ)も「大学に入って環境が大きく変わったなかで、スケートと学業を両立させるためにはどういうアプローチを取ればいいのか模索中」という影響もあってか、4回転ジャンプで3回転倒し、144.96点にとどまった。

 そんな状況で迎えた宇野の滑走順。宇野は、最初の4回転サルコウが回転不足でステップアウトになり、次の4回転フリップも回転不足で転倒。出だしで「織田が巻き起こした嵐に飲み込まれるか?」とやや不安を感じさせたが、次の4回転トーループをきれいに降りて耐えると、『月光』のゆっくりした曲調で冷静な滑りをして気持ちを立て直した。

 ちなみに宇野は、今シーズン、4回転はサルコウとフリップ、トーループ2本の構成にしているが、それについてはこう語っている。

「4回転ループは踏み切りで抜けることが多いのでやらない選手もいると思うし、実際に僕も抜けたことがあって、それが精神的なストレスにもなっていた。でも、今年は4回転サルコウが跳べるようになって成功回数も多くなり、体力がない状態でもけっこう跳べるようになった。ループではなくサルコウにした方が体力や気持ちを削がれないかなと思ってサルコウにしました」

 そして演技後半は、4回転トーループ+2回転トーループ、トリプルアクセルを2.99点と3.54点の加点をもらう出来にすると、曲調が変わってきた終盤は力強さと勢いのある滑りでトリプルアクセルからの3連続ジャンプや3回転サルコウ+3回転トーループも決める。さらに、メリハリのあるステップとチェンジフットコンビネーションスピンで共にレベル4を獲得した。

 結果はトップの186.69点。冒頭のふたつのジャンプの失敗がなければ200点超えも見えてくる演技だった。

 好調の要因は、「今年はオフもケガがなく、例年よりもシーズンへ向けていい調整ができているから」と宇野は言う。また、この大会へ向けては「去年は僕のせいで負けてしまったので、今年は優勝したいと思ってけっこう真剣に調整してきた」という意地もあった。

「今年はシーズン初戦から自分の演技ができていると思います。目標は、ひとつでも多く、自分が『よかった』と思える試合をしたいということですが、今回もコンディションどおりの演技ができただけで、『よかったか?』と言われるとそうですとは答えづらいですね。本当によかったと言える演技をしていけるように頑張りたい」(宇野)

 昨シーズンは初戦のロンバルディア杯で自己ベストの319.84点を出す滑り出しだったが、「練習ができていなかったなかでたまたま出た得点。自分ではあまりいいとは思っていない」と話していた。そんな練習内容と試合結果のズレが、昨季は301.10点を出したスケートカナダ以降、300点台に乗せられないモヤモヤする状態につながった。だが今年は、納得できる滑り出し。GPシリーズ初戦のスケートカナダへ向けて、宇野は明るい表情を見せた。