メジャー通算3000安打の金字塔まで残り「11」本と迫ったマーリンズのイチロー外野手。長いメジャーの歴史を紐解いてみても、わずか29人しか達したことのない偉業に一歩一歩近づいている。■日米通算安打を認めぬ“安打王”が自己防衛する姿に「僕を認…

メジャー通算3000安打の金字塔まで残り「11」本と迫ったマーリンズのイチロー外野手。長いメジャーの歴史を紐解いてみても、わずか29人しか達したことのない偉業に一歩一歩近づいている。

■日米通算安打を認めぬ“安打王”が自己防衛する姿に「僕を認めてくれたと思った」

 メジャー通算3000安打の金字塔まで残り「11」本と迫ったマーリンズのイチロー外野手。長いメジャーの歴史を紐解いてみても、わずか29人しか達したことのない偉業に一歩一歩近づいている。6月15日パドレス戦で日米通算4257安打とし、ピート・ローズの持つメジャー歴代最多安打4256本を超えた時は、どちらが真の安打王かという議論が沸騰。ローズは一貫して日米通算安打を認めない姿勢を貫いたが、この反応を見たイチローは「正直ちょっとうれしかった」と明かしたと、米有力紙「ニューヨーク・タイムズ」電子版が伝えている。

 「日本での安打数も認めるべきだ」「メジャーの安打数だけ考えるべきだ」「いや、どちらも凄いんだから、双方称えるべきだ」など、先月15日にイチローが日米通算安打数で“ローズ超え”を果たして以来、あちらこちらで熱い議論が交わされた。そこに油を注いだのが、米全国紙「USAトゥデー」の単独取材に答えたローズの言葉だった。あくまで“安打王”は自分であると主張し、頑ななまでに日本での記録を認めることを固持。「日本は私を“ヒット・クイーン”にしようとしている」と話す姿に、米国内でも「過剰な自己防衛だ」という意見が上がっていた。

 記事を執筆したデービッド・ウォルドースタイン記者は、この時のローズの反応についてイチローに直接質問。すると、3000安打の金字塔が近づいているにもかかわらず、普段と変わらぬ穏やかな様子のイチローは、通訳を介して意外な答えを返したという。

 「正直ちょっとうれしかったんですよ。彼が僕を認めてくれたって感じがしたから」

■微妙な人間心理を分析「自分と同じレベル、格上と思った途端、攻撃するようになる」

 なぜ認めてくれたと感じたのか。その理由について、イチローは「自分にも経験がある。誰かを格下だと見ている時は、その人を褒めたり好意的なことを言う。だけど、自分と同じレベルだったり、越されたと思った途端、攻撃するようになるんです」と微妙な人間心理を分析した上で、人間が見せる防衛本能の存在を上げたという。つまり、ローズはイチローが自分と同格か格上だと認めたからこそ、あるいは少なくとも格下ではないと認めたからこそ、公の場で“口撃”を繰り返していると解釈としているのだという。

 今回の一件で、すっかり意固地なイメージがついてしまったローズだが、記事でも触れている通り「イチローがメジャーで殿堂入りにふさわしいキャリアを送っていることは認めている」。イチローが3000安打に達する“Xデー”が訪れた時、そこには何の議論も沸くことなく、その偉大なる功績を称える祝福ムード一色に染まることだろう。