オランダでの生活も3年目となる小林祐希(へーレンフェーン) photo by Kurihara Masao オランダ…



オランダでの生活も3年目となる小林祐希(へーレンフェーン) photo by Kurihara Masao

 オランダのヘーレンフェーンで3年目のシーズンを迎えた小林祐希。過去2シーズンはほぼ不動のレギュラーとして出場を重ね、今季も開幕からスタメンに定着。ここまでリーグ戦7戦すべてに先発出場している。オフにはオランダ移籍後、初めての指揮官交代も経験したが、26歳になったMFへの信頼が揺らぐことはない。

 日本代表としてロシアW杯出場は逃したものの、オランダで確かな歩みを続ける小林に、現在のチーム状況や代表への思いについて聞いた。

――今季は3年契約の最終年。オフには移籍の噂もありました。

「いくつか話はあり、自分としてもステップアップのために移籍は視野に入れていました。ただ、チャンスはありながらも、最終的に話はうまくまとまりませんでした。そのことでイライラした時期もありましたが、シーズンが始まったいまは、ここでプレーすることに集中しています」

 昨季リーグ8位で終えたヘーレンフェーンは、オフにユルゲン・ストレッペル監督が退任。今季は新たな指揮官としてガラタサライ(トルコ)などを率いた経験のあるヤン・オルデ・リーケリンク監督を迎えた。だが、開幕戦でズウォーレに3-2で勝利して以降は、4分け2敗と苦しい戦いが続いている。

――チームは7試合で15点を挙げる一方、18失点が気になります。ここまでの戦いをどう振り返りますか。

「得点はリーグで上から6番目ですが、失点は下から2番目。点は獲るけど、それ以上に獲られるという感じです。守備の改善は必要ですが、点が獲れないよりはいい。前節のADOデンハーグ戦(9月29日、1-1)も、攻撃の形はよかったですし、ひとつ勝てれば波に乗れると思います。リーグではここ6節勝ちはないですが、チームの雰囲気はそこまで悪くないですよ」

 小林はヘーレンフェーン移籍後、基本的に4-3-3のMFとしてプレーしてきた。だが、今季は少し状況が異なる。

 監督が交代し、ベテランのスタイン・スハールスが長期欠場していることもあって、攻撃色の強い21歳のミチェル・フラップ、得点力のあるノルウェー代表MFモーテン・トルスビー、昨季AZで10ゴールを挙げた新加入のベン・リエンストラら、攻撃的な選手と中盤に並ぶことで、これまで以上に小林の守備への負担が増しているように見える。

 そんななか、前節のADOデンハーグ戦では、今季初めて4-3-3の右の攻撃的な位置に入り、生き生きとしたプレーを見せた。

――デンハーグ戦は、右サイドで積極的に攻撃に絡むシーンが目につきました。

「監督からはオレの適性はボランチだと言われていたのですが、チームの結果が出ていないこともあって、前節は右サイドの前で出ました。昨季もケガ人がいたときに、5試合くらいやっていたポジションですが、やっぱり前の方が楽しいですね。より多く前でボールに絡めますし、右サイドバックの上がりもあるので、サイドに張っているだけでなく中に切り込んだり、攻撃面の自由度も高く、やりやすさもあります。正直、中盤に入ると(周りの選手の攻撃への意識が高いことで)、どうしても自重しなければいけなかったので。前で起用されたことで、前に行く気持ちを抑えなくていいのは楽ですよ。

――今後も前のポジションで起用されれば、さらに持ち味が発揮できると?

「だって、オレは(エンゴロ・)カンテ(チェルシー所属のフランス代表MF)じゃないですし、中盤でガツガツ相手を潰しに行くようなスタイルでもないですから。若い頃からトップ下をやりたいと言ってきましたけど、ヘーレンフェーンに来てからはずっとボランチをやってきました。3、4年前のオレだったら『トップ下じゃなきゃプレーしない』とか言っていたかもしれないし、それはこっちに来て成長した部分でもあります。

 だって、『後ろじゃプレーしない』と言ったらオレの価値はゼロですし、後ろでもプレーできれば価値は上がりますよね。ただ、オレのよさは前でこそ生きると思うし、そこでクオリティを発揮することがチームのためにもなると思うんです。正直、昨季までは、相手ペナルティエリアまで上がらなくていいとか、攻撃参加を控えるように言われるなど、相当我慢していました。それに、究極的にいえば守備のことだけを考えたら、オレじゃなくてもいいというか、オレじゃない方がいいじゃないですか。でも、オレは前で起用されても、そこでしっかり守備も頑張りますけどね」

――今季は過去2シーズンとは違った、本来の小林祐希が見られるかもしれない?

「今後も前で起用してもらえれば、もっと存在感を出せると思うし、チームも変わると思うんです。ここでは1年目が1ゴール0アシスト、2年目が1ゴール1アシストと、数字は出ていませんが、それでもずっと起用されてきたのは、オレのクオリティが評価されていたからじゃないですか。もちろん、前で起用されれば数字も必要になりますが、普通にやれれば結果はついてくると思います」

 話題を日本代表に変えると、小林は2016年5月、ボスニア・ヘルツェゴビナ戦で代表デビュー。ヴァイッド・ハリルホジッチ監督時代にはたびたび代表に招集されていたものの、西野朗監督のもとで臨んだロシアW杯では、予備登録メンバーにも入らない悔しさを味わった。

――ロシアW杯は見ました?

「もうオランダに戻っていた時期だったので、コロンビア戦もセネガル戦もベルギー戦も、時差なく見られました。めっちゃ興奮しましたよ。もう、普通のサポーターと同じです。日本代表が頑張ってくれれば、それだけ日本人選手の価値も上がるし、知っている仲間が戦うわけですから完全に応援モード。ただ、グループリーグを突破したあとのベルギー戦の内容がよかったことで、すべてOKみたいな感じになっていましたが、4試合を戦って1勝しかできなかった事実はしっかり見る必要があるとは思いますけどね」

――ロシアW杯を見て、湧いてきた感情などはないですか?

「オレは現場の空気感や緊張感も味わえていないし、わからない部分もあります。ただ、ベルギー戦は2点リードしたところから逆転されたので、もしオレがピッチにいたら逃げ切れたのかなとか、相手を削ってでも何でも時間を潰せたんじゃないかとか、そういうことは考えましたよね。イエローカードは11枚もらっても大丈夫なわけだし、最悪1人退場になっても勝てればいいじゃないですか。ぶっちゃけ、オレならもっとズル賢いプレーができたかもしれないとは思います。

 日本人がアンフェアなプレーを嫌いなのはわかっていますが、実際にポーランド戦の最後はしたたかな戦い方もしていたじゃないですか。だからベルギー戦でも、何かあがき方があったんじゃないかと思うんです。オレがいたら勝てたとか、そういう話ではまったくないですよ。そもそも2-0まではパーフェクトな戦い方だったわけで、オレがいたら、そんな展開になっていたかどうかもわからないし(笑)」

――以前、カタールW杯でキャプテンを目指したいとの発言もありました。これまでのところ森保ジャパンでの招集はないですが、現在の代表への思いはどうですか。

「カタールでキャプテンを目指したいと取材で言いましたし、そうなれば一番ですが、呼ばれたらどんな立場だって行きますよ。代表に呼ばれたらそんなにうれしいことはないですから。そのためにも、まずはチームでしっかり結果を出したいと思います。

 ただ、何度も言っているとおり、別にオレは代表に入るためやW杯に行くためだけにサッカーをやっているわけではないです。サッカーはオレにとって仕事で、あくまで自分のため。それに4年後と考えると、いま14歳の中学生だってW杯に行くチャンスがあるかもしれないし、どうなっているかは誰にもわからない。そんなことばかり考えていてもしょうがないじゃないですか」

 ストレートな物言いは相変わらず。ただ、小林は時にビッグマウスなどと言われ、いかにもエゴイスティックな選手に思われがちだが、元来プレーは気が利くタイプで、オランダにわたってピッチ内外で我慢することも覚えた。貴重な左利きのプレーメーカーは、中盤ならどこでもこなす器用さを持ち合わせ、物おじしない性格も大舞台でこそ力を発揮しそうな雰囲気を漂わせる。

 森保ジャパンは、まだ船出したばかり。今後もオランダでコンスタントに出場を続ければ、代表に復帰する日もそう遠くはないかもしれない。