本人はそのようなことは絶対に口にしないが、筆者は個人的に、これでよかったのではないかと思っている。パナマ、ウルグア…
本人はそのようなことは絶対に口にしないが、筆者は個人的に、これでよかったのではないかと思っている。パナマ、ウルグアイと対戦する日本代表から、乾貴士(ベティス)が外れたことだ。
その報を聞いたとき、真っ先に頭に浮かんだのは、以前セビージャに在籍していた清武弘嗣(現セレッソ大阪)のことだった。同じ街のクラブであることや、クラブ1年目のシーズンであることなど、2人には共通点が多い。
2016年秋、日本代表に合流するまで、清武はセビージャの主力だった。開幕戦のエスパニョール戦では1得点1アシストの活躍を見せ、スペインのサッカーファンからも高い評価を得ていた。
だが、日本代表合流後に待っていたのは、主役の座を元フランス代表サミル・ナスリ(現在無所属)に奪われ、ベンチを温めてグラウンドで他の選手のプレーを見守る境遇だった。もしあのとき清武がセビージャに残り、当時のホルヘ・サンパオリ監督の戦術理解を深め、チームメイトのことをさらに知るようになっていたら、また違う道が開けたのではないかと、今でも思うことがある。

ヨーロッパリーグ、ドゥドランジュ戦に出場、勝利に貢献した乾貴士(ベティス)
現在、乾は選手層の厚いベティスで、厳しい定位置確保の戦いを続けている。エイバルにいた昨季まで以上に選手のイマジネーションやコンビネーションが重宝され、”サッカー頭”を働かせる必要があるキケ・セティエン監督のサッカーでは、得点に直接関わるプレーが要求されている。
オートマティックな戦術であれば、型にはまったようにその動きをすればいい。だが、セティエンのサッカーでは自分の動きを味方に知ってもらうこと、仲間の動きを知ることが重要であり、ともにボールを蹴って共通理解を深めていくことが大事になってくる。
もちろん、代表でも得られるものはあるし、時間が経てばベティスの戦術もチームメイトのことも理解することできるだろう。
だが、サッカー選手は試合で結果を残していかないと、自分の力を表現する場であるピッチに立つことすら許されない。しかもベティスは、高いレベルのプレーを要求してくるスペインのなかでも1、2を争う熱いサポーターがいるクラブである。彼らは、活躍をいつまでも待ち続けてくれるほど寛容ではない。
ヨーロッパリーグ第2週、ドゥドランジュ(ルクセンブルク)戦。乾は先発出場し、72分にホアキン・サンチェスと交代するまでプレーした。
この試合で乾は、オープニングシュートを放つなど、前半から積極的にゴールを目指したプレーを見せて、スタンドから驚嘆の声を引き出している。決して悪いパフォーマンスではなかった。ただ、やはり得点という結果を残すことはできなかった(結果は3-0でベティスが勝利)。
「よくはなかったですね。もうちょっと何かできると思っていたし、しないといけなかった。まあ、相手も守備を固めていて、中に人数もかけていたので、自分のところではなかなかチャンスを作れなかった。けど、サイドからいい攻撃ができていたと思うので、チームとしてはよかったと思う。ただ、自分としてはよくなかったかな、と」
今回は日本代表を外れた。だが、34歳となる2022年開催のカタールW杯を目指すのであれば、ベティスでの活躍が、招集されるためのベースとなることは間違いない。代表招集見送りは、乾が監督や仲間の信頼を勝ち得るための一助となり、ひいては今後の自身の血肉となっていくはずだ。