小島圭市が占うMLBポストシーズン~ア・リーグ編ナ・リーグ編はこちら>> 昨年ワールドシリーズを制したヒューストン・…
小島圭市が占うMLBポストシーズン~ア・リーグ編
ナ・リーグ編はこちら>>
昨年ワールドシリーズを制したヒューストン・アストロズ。今季108勝をマークしたボストン・レッドソックス。強力先発陣で中地区を制したクリーブランド・インディアンス。シーズン268本塁打のメジャー記録を更新したニューヨーク・ヤンキース。メジャー屈指の強力ブルペンを擁するオークランド・アスレチックス。
今年のア・リーグのポストシーズンはこれまでにないほど熾烈な戦いになりそうだ。果たして、ここを勝ち抜き、ワールドシリーズに進むのは? かつてロサンゼルス・ドジャースのスカウトとして活躍され、現在はアリゾナ・ダイヤモンドバックスの顧問である小島圭市氏に占ってもらった。

今シーズン、20勝をマークしたインディアンスのコリー・クルーバー
昨年のワールドチャンピオンのアストロズは、ここにきてチーム力が一気に上がってきた印象があります。9月中旬まではそれほど調子はよくなかったのですが、ケガをしていた主力が戻ってくると同時に歯車がかみ合い出し、昨年のような強さを感じます。
昨年のプレーオフでも活躍したジョージ・スプリンガー、ホセ・アルトゥーベ、カルロス・コレア、アレックス・ブレグマンなど、層の厚い打線は今年も健在です。ただ、今シーズンはケガで離脱した選手が多く、昨年ほどの破壊力は感じませんでした。とはいえ、実績も経験もある選手が多く、ポストシーズンになるとそれまでとは違うバッティングをしてくるのではないかと思っています。
そしてアストロズといえば、強力投手陣です。今シーズン16勝をマークしたジャスティン・バーランダー、15勝のゲリット・コールとチャーリー・モートン、12勝のダラス・カイケルと先発陣は磐石。リリーフ陣もシーズン途中にロベルト・オスーナを獲得し、厚みが増しました。
なかでもバーランダーの実力は突出しています。今シーズン、後半戦はやや打ち込まれるシーンがありましたが、ポストシーズンになると一気にギアを上げてくるのがバーランダーです。スピード、変化球のキレ、コントロールとどれも一級品ですが、なによりメンタルがすごい。チームに勢いを与えられるピッチングができる投手です。相手チームにしてみたら、バーランダーを打ち崩すのは至難の業だと思います。
そのアストロズとディビジョンシリーズで激突するのが、インディアンスです。このチームもアストロズ同様、投打のバランスの取れたすばらしいチームです。
フランシスコ・リンドーア、ホセ・ラミレス、エドウィン・エンカーナシオンと強打者が揃い、投手陣も20勝のコリー・クルーバー、17勝のカルロス・カラスコを筆頭に、2ケタ勝利を挙げた投手が5人もいるなど、充実しています。
その一方で、リリーフ陣に不安を残しています。クローザーのブラッド・ハンドまでどうつないでいくのかが最大の課題です。経験豊富なアンドリュー・ミラーが本来の力を発揮してくれれば計算が立つのですが、故障明けということもあって、まだ完調にはほど遠い内容のピッチングでした。この苦しい状況をテリー・フランコーナ監督がどうやり繰りするのかも見ものです。
また、シーズン108勝をマークしたレッドソックスも世界一になる力を秘めたチームです。JD・マルティネス、ムーキー・ベッツを筆頭に好打者が並び、チーム打率.268はリーグ1位。また打つだけでなく、足を絡めてくるなど多彩な攻撃を仕掛けてくるなど、得点能力の高いチームです。
投手陣もクリス・セール、リック・ポーセロ、デビッド・プライス、エデュアルド・ロドリゲスと先発陣は揃っており、クローザーも42セーブのクレイグ・キンブレルが健在。ただシーズン後半、キンブレルは四球から失点を許すなど不安定な投球が多く、彼につなぐまでのセットアッパーも不安を抱えています。
そしてワイルドカードですが、シーズン267本塁打を記録したヤンキース打線の破壊力は凄まじいですが、アスレチックスも48本塁打のクリス・デービスをはじめ、長打力のある打者が揃っており、攻撃力は互角だと思います。
投手力を比較すると、先発はヤンキースの方が駒は揃っていますが、ブルペンに関してはアスレチックスが圧倒的です。そしてそのアスレチックスですが、ワイルドカードの先発にリリーフのリアム・ヘンドリックスを抜擢するという発表がありました。おそらく細かい継投で逃げ切る作戦でしょうが、これがヤンキース相手に通用するのか注目ですね。
ア・リーグは地区優勝を果たしたレッドソックス、インディアンス、アストロズは戦力が充実していて、おそらくこの3チームのなかからワールドチャンピオンが出るのかなという気がしています。
ただ、近年の野球は7~9回の投手力で勝敗が決まると言っても過言ではありません。レッドソックス、インディアンス、アストロズの3チームはどこもブルペンに不安を抱えており、実力的には抜けているけど磐石ではありません。そういった意味で、もしワイルドカードを勝ち抜けば、強力ブルペン陣を擁するアスレチックスが台風の目になるかもしれません。