小島圭市が占うMLBポストシーズン~ナ・リーグ編 いよいよメジャーリーグもワールドチャンピオンを賭けたポストシーズン…

小島圭市が占うMLBポストシーズン~ナ・リーグ編

 いよいよメジャーリーグもワールドチャンピオンを賭けたポストシーズンが始まる。今シーズン、とくにナ・リーグは西地区と中地区で優勝をかけたワンデープレーオフが開催され、勝ったチームが地区優勝、敗れたチームがワイルドカードに進むという史上まれに見る大激戦となった。

 その結果、ナ・リーグのディビジョンシリーズは、西地区優勝のロサンゼルス・ドジャースと東地区優勝のアトランタ・ブレーブスが対戦し、中地区優勝のミルウォーキー・ブルワーズとワイルドカード(コロラド・ロッキーズ対シカゴ・カブス)の勝者が激突する。

 果たして、ナ・リーグを勝ち上がり、ワールドシリーズに進むチームはどこなのか。かつてドジャースのスカウトとして活躍し、現在はアリゾナ・ダイヤモンドバックスで顧問を務める小島圭市氏に、まずはナ・リーグのポストシーズンを占ってもらった。



移籍1年目の今シーズン、首位打者を獲得するなど大ブレイクを果たしたイエリッチ

 ナ・リーグは、昨年ワールドシリーズに出場し、世界一まであと一歩のところに迫ったドジャースが戦力的には頭ひとつ抜けていると思います。

 今シーズンはチームの大黒柱だったコリー・シーガーをはじめ、主力選手が相次いで離脱するなど苦しいシーズンを強いられました。そんななか、シーズン途中にマニー・マチャド、ブライアン・ドージャーを獲得。また、マット・ケンプやマックス・マンシーといった選手もブレイクを果たすなど、打線に関しては心配ないと思います。

 問題は投手陣。とくに終盤を任せられるリリーフ陣に不安があります。8月に守護神のケンリー・ジャンセンが不整脈により離脱。その後、復帰を果たしましたが、不安定なピッチングが続いています。前田健太やスコット・アレクサンダーといった投手が頑張っていますが、ポストシーズンはプレッシャーも大きいですし、打者の集中力もシーズン中とは比べものになりません。そうした状況でどれだけのピッチングができるのか注目ですね。

 個人的には、マチャドやドージャーを獲得するよりも、実績のあるリリーフ投手を獲得すべきだったと思います。いくら打線がよくても、終盤を任せられる投手が不安だと、勝ちパターンに持ち込めない。とくに短期決戦は終盤に試合が動くことが多々あります。ほかのチームと比べて選手層が厚いのは間違いありませんが、決して磐石ではないというのが、私の印象です。

 そのドジャースとワンデープレーオフで地区優勝を逃したロッキーズですが、シーズン序盤は負けが続き、勝率5割を切る時期もありましたが、徐々に地力を発揮。とくに9月終盤に8連勝するなど、完全に勢いに乗りました。

 このチームは伝統的に打線がよく、かつてはラリー・ウォーカー、ダンテ・ビシェット、トッド・ヘルトン、トロイ・トロウィツキーなど、次々と好打者を輩出。今もメジャーを代表する好打者、ノーラン・アレナードがいますし、トレバー・ストーリー、チャーリー・ブラックモンも打撃センスのよさが光ります。

 本拠地であるクアーズ・フィールドは標高1マイル(1600m)の地点にあり、空気も乾燥しているため「打者有利」と言われてきましたが、それは大きな理由ではないと思います。おそらく打撃に関しては、マイナーからしっかりとした育成のプログラムがあると思います。

 その一方で、これまでは投手陣が不安定でなかなか勝ち切ることができませんでしたが、今年はチーム防御率4.34(リーグ12位)ながら、17勝を挙げたカイル・フリーランド、14勝のエルメン・マルケス、12勝のジョナサン・グレイと、3人の2ケタ勝利投手を出すなど、駒は揃っています。

 ただ、ロッキーズも不安があるとするとブルペン陣。守護神のウェイド・デービスは43セーブでセーブ王のタイトルを獲得しましたが、防御率4.13と絶対的な信頼を置けません。ドジャース同様、ブルペン勝負の試合展開になると厳しいかもしれません。

 そして私が個人的に注目しているのがブルワーズです。ロレンゾ・ケイン、クリスチャン・イエリッチ、ライアン・ブラウン、ヘスス・アギラと好打者が続き、そこにマイク・ムスタカス、ジョナサン・スコープが加わった打線は脅威です。

 ムスタカスはワールドチャンピオンの経験もあり、本当にいい補強をしたと思います。また、8月末にはカーティス・グランダーソンも獲得。全盛期のパワーはありませんが、「ここぞ」という場面で彼の経験が生きてくるかもしれません。

 それにブルワーズも9月終盤の連勝でカブスに追いつき、最後のワンデープレーオフで勝利して西地区の優勝を勝ち取りました。こうした勢いはポストシーズンでは必要です。まだまだ伸びる要素があると思いますし、ワールドシリーズ進出の可能性は大いにあると思います。

 ブルワーズにワンデープレーオフで敗れ、ワイルドカードに進んだカブスはハビア・バイエズ、アンソニー・リゾ、ベン・ゾブリストなど、2年前にワールドシリーズを制したメンバーも多く、力のあるチームです。

 ただ、ブルワーズとは対照的に9月に入ってからややチームの勢いが落ちてきた印象があり、2年前のチームほどの強さを感じません。そこを名将、ジョー・マドン監督がどんな采配でチームを導くのか見ものです。

 最後に、中地区を制したブレーブスは、ロナルド・アクーニャJr.に代表されるように、若手の成長が著しいチームです。勢いに乗れば一気にいく可能性を秘めたチームであることは間違いありませんが、本当に円熟期になるのは、2、3年後のような気がします。

 シーズンは投打がうまくかみ合い、5年ぶりの地区優勝を果たしましたが、ディビジョンシリーズでドジャースに勝てるかどうか。何度も言いますが、このチームがワールドシリーズを本気で狙うのは、2、3年後だと思います。

 ポストシーズンはワンプレーで大きく戦況が変わってきます。実力通りの結果にならないことも多く、それが魅力でもあります。ただ夏場以降、とくに9月中盤から終盤にかけていい戦いをしたチームは勢いがあり、ポストシーズンでも注目に値します。そういった意味で、本命はドジャースですが、ブルワーズ、ロッキーズの戦いには注目したいですね。

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