ついに訪れた歓喜の瞬間最後に決めたのはやはり富澤太凱(経3・慶應)だった。ここまで7戦全敗と苦しんでいた慶大バレー部。この日も第1セットを奪われる苦しい立ち上がりだったが、徐々にサーブレシーブが安定するとクイックが効果的に決まるようになり、…


ついに訪れた歓喜の瞬間

最後に決めたのはやはり富澤太凱(経3・慶應)だった。ここまで7戦全敗と苦しんでいた慶大バレー部。この日も第1セットを奪われる苦しい立ち上がりだったが、徐々にサーブレシーブが安定するとクイックが効果的に決まるようになり、慶大のペースになった。第4セットは失い最終5セット目も先行されたが、ブロックで相手を止めて逆転勝利。8戦目にして勝利を掴んだ。

9月30日(日)

秋季関東男子1部バレーボールリーグ戦

第8戦 慶大×学芸大

@日本体育大学健志台キャンパス米本記念体育館

得点表
慶大セット学芸大
2025
2523
2519
2025
1511

ずっと “自分たちのバレー”を見失い、初勝利が遠かった。春季上位を相手にあと一歩が遠く、けが人もあり、なかなかリズムをつかめず敗戦を重ねる。春季11位の日大にもストレート負けを喫し、トンネルを抜けられずにいた。今日の相手は春季12位の東京学芸大。ここまで未勝利同士のマッチアップでセッター吉田祝太郎(政2・慶應)がついに復帰した。この勝負、絶対に負けられない。


安定感のある清水のクイック

第1セット開始直後、早くも吉田と富澤のホットラインがつながり、先制点を奪う。富澤は攻撃の軸としてフル回転したが、クイックやサイド陣がうまく機能できず、流れがつかめない。両チームブレイクを取り合う不安定な展開のなかで終盤にサーブレシーブが崩れてブレイクを許し、1セット目を取られた。


ピンチサーバーとして活躍した五味渕

勝利のために早くセットを取りたい第2セット。このセットも富澤にボールを集めて得点していくが、お互いサイドアウトを取りあう展開に。しかし、一挙に4連続失点を許して大きくリードされる。徐々に清水柊吾(総2・広島城北)、樫村大仁(環2・茨城高専)のセンター陣のクイックが決まるようになったが、点差がなかなか詰められない。2点差で迎えた終盤、ピンチサーバーで五味渕竜也(環3・習志野)がコートに入る。「少しでも貢献できていたら」と放ったサーブが見事に相手を崩すと、冷静にこれを相手コートに沈めた。五味渕のサーブで2度のブレイクに成功して追いついた。このプレーで流れを掴んだ慶大は小出捺暉(環1・駿台学園)のスパイクでブレイクを奪うと、最後は立て続けに富澤がスパイクを決めて1セットを取り返した。


リベロとしてチームを支える岩本副将

第3セット。樫村が2連続でブロックポイントをたたき出せば、クイックも難なく沈めてリズムを作っていく。一方課題だったサーブレシーブも岩本龍之介(商4・仙台第二)や小出を中心にしっかり返して攻撃につなげていく。加藤真(商2・慶應)のサービスエースも飛び出して、中盤以降は完全に慶大ペースとなった。樫村と小出による時間差攻撃も炸裂し、やりたいバレーを終始貫くことができた慶大が初勝利に王手をかけた。

だが第4セットは序盤から相手のサーブに崩されてブレイクを立て続けに奪われ、追う展開に。この試合効果的なクイックをうまく使い、小出が相手のオポジットを封じるブロックを決めて少しずつ差を詰めていったが、なかなか1点差から追いつくことができない。最後は相手のオポジットのサーブとバックアタックに翻弄され、試合は最終セットにもつれ込んだ。


司令塔・吉田が復帰した

相手サーブから始まった5セット目。2本富澤が厳しい体勢から打ち切ったがコートを捉えられず、先行を許してしまう。しかし、清水のサーブが相手を乱すと、返ったボールを樫村がクイックで沈めて1点、続く攻撃も吉田が気迫のブロックで止めて逆転に成功する。これで落ち着いた慶大はしっかりサイドアウトを取っていく。慶大の得点でコートチェンジした直後、相手のクイックを樫村がブロックしてついに2点のリードを奪った。そこからサイドアウトを粘って取りつづけると、清水のサーブがネットにかかってコートに落ちる幸運なサービスエースが14点目を生み出して試合の大勢を決めた。そして次の攻撃、相手のスパイクをしっかり拾い、セッターの吉田に返ったボールが最後に託されたのはやはり富澤だった。託されたボールをライトから強烈なバックアタックで叩きこんで勝負あり。8戦目にしてようやく初勝利を掴み取った。

長い道のりだった。上位校との対戦で勝ちきれない、セットを奪えない状況が続き、少しずつリズムが悪くなると、10点以上の差をつけられて取られるセットも増えていった。そんな中で主力選手のコンディション不良も重なり本来の自分たちの形を見失ってしまった。そして下位校との対戦の初戦となる土曜日の試合でストレートの敗北。選手たちは悔しさを人一倍味わってきた。そんな窮地でも自分たちのできることを貫くため、まだ見ぬ勝利のために練習を続けてきた。ついにそれが実を結んだのだ。

勝ち星は挙げたが、まだ1勝に過ぎない。ここから3戦入れ替え戦という単語が頭をよぎることもあるだろう。それでも貫くべきは自分たちの形だ。ひたすらに真っ直ぐに進めば再び勝利を手にすることもできるだろう。そう、勝負はこれからだ。

(記事:尾崎崚登 写真:相川環・小嶋華・藤澤薫)

宗雲監督

――今日の試合を振り返って

2戦目で(吉田)祝太郎がけがした後からバタバタしていましたが、今日は学生がやっと邪念を持たないで一つになったという感じですね。単純に祝太郎が復帰したから、というわけではないと思います。色々なプロセスや練習の中で色々試しながらもやもやもあったと思います。そういう積み重ねの上で、今日一枚岩になったということじゃないですかね。

――レシーブもクイックも良く決まっていたが

ああいうバレーをしたかったという感じです。あのバレーを続けて勝てればいいですが、まだ難しいこともあると思います。継続していくことが大事ですね。

――選手に言葉をかけたか

私はベンチでは何もしていないです。学生が自分たちだけで勝利を引き寄せたと思います。「本当におめでとう、ありがとう」と素直に言いました。

伊藤祥樹主将(総4・清風)

――ついに勝利を収めて率直な感想は

良かったなと思います。ホッとしました。

――ここまでの苦しい場面を振り返って

けが人が出たり、勝てないことで落ち込んだりとかいろんなチームにとって良くないことが続いていました。

――昨日の試合後に何か取り組んだか

昨日帰って練習をして、祝太郎とコンビを合わせていました。あまり特別なことはしていないですが、うまくいかないことに対して変化しつつ前向きにいろいろやってきました。

――今日はやりたいバレーが出来ていたと思うが

選手たちがよく頑張ってくれたと思います。

――この1勝の意味は

これをきっかけにチームの状況も良くなるでしょうし、勝ちの感覚をもう一回身を持って体感することができました。次も良い試合をしていけば、勝ちにつながるんじゃないかなと思います。

――ここからの3戦に向けて

まず2週間あるので自分たちのことを振り返りながら、組織として個々の技量やコンビの精度も高めていきたいと思います。

岩本龍之介副将(商4・仙台第二)

――今の率直なお気持ちを

嬉しいです。

――ここまで7連敗と苦しんだが、今日の勝利の意義は

自分たちにはそんなに重たく考えないっていうのはやっていて、でも結局負けちゃってるからなかなかチームの士気が上がらないっていう中で、1勝できて7連敗を食い止められたというのは、残り3つに向かって前向きに練習できるっていう意味でも、意義があるのかなと思います。

――コート内は下級生ばかりだが、4年として意識していることは

自分が一番余裕をもった態度をとることかなっていうのがあって。もともとサイドをやっていたのもあるんですけど、リベロの方が体の負担とかも全然少ないので、そういう面でも下級生はすごく頑張ってくれているので、自分が笑顔で元気にっていうのは意識しています。

――好レシーブもたくさんあったが、今日のご自身のプレーは

相手のレフトの選手の攻撃が結構クロスがほとんどだったので、そこをなんとか拾おうといったんですけど、個人的にはそこを1本も拾えなかった、対応できなかったというのは悔しいです。

――今リーグはリベロでの出場だが

最初4戦は自分の中でもうまくいっていないという実感があって、なんとかして変えたいって思って色々工夫して練習して。基本的にサーブカットなんですけど、だんだん調子も上がってきて、プレーにも余裕が出てきたので、ちょっとずつ成長はしているんじゃないかなと思うんですけど、まだまだだと思います。

――次戦まで1週空くが、残り3戦に向けて

せっかくここで食い止められた連敗なので、残り3戦絶対全部勝ち切れるように。相手がどこであれ、自分たちが一番良い形で試合に臨めるように、もう一回チームで頑張っていきたいと思います。

五味渕竜也(環3・習志野)

――今日の試合を振り返って

ここまで全敗でスタメンのみんなも緊張している中で自分たちの力が終盤にかけて上がったのが良かったかなと思います。

――ベンチの中で意識したことは

プレーに対しても気持ちの面でも、1%プラスになればいいかなと思ってベンチに入っていました。

――第2セットの途中出場を振り返って

自分のサーブが良かったというよりは、みんながつないで決めてくれた感じです。2本サーブが打てただけですが、少しでも貢献できていたらいいなと思います。

――ベンチの雰囲気は

いつ出るかわからない状態でいつもみんながベンチにいます。少しでも出た時に自分の力が発揮できるように体を動かしたり、みんなで盛り上げたりしています。まずベンチから盛り上げて中に伝えようという気持ちでベンチはずっと盛り上げていました。

――今日の1勝の意味は

大きいですね。1週間空きますが、この1勝を足掛かりに次の試合もこの勢いを切らさず次の東海、国士舘と勝てたらいいなと思います。

富澤太凱(経3・慶應)

――勝利した今の率直な気持ちは

勝てない時期が続いて、主力も欠けた中で、本当に苦しかったんですけど今日部員全員が一丸となって勝てたので嬉しい気持ちでいっぱいです。

――昨日の試合から修正したことは

昨日の敗戦で最下位に落ちてしまって、ここからは上がるしかないということで、アップから目の色を変えてやっていました。

――今日はスパイクも決めたが

みんなの気持ちが入ったボールだったので、絶対に決め切ってやるという気持ちで打ちました。

――吉田選手も帰ってきた

彼の強気の姿勢はチームにもいろんなプラスの効果をもたらしますし、個人としても彼とお互い信頼しあっていて試合中は負ける気がしませんでした。

――今日は自分たちの形に持ち込むことはできたか

まだまだ自分たちの形に持ち込むことは夏の段階と比べて出来ていないんですけど、足りないところを絶対に勝ちたいという気持ちで補って勝つことができました。

――残り3戦に向けて意気込み

チーム全員で勝ち取った勝利なのでこの1勝を無駄にせず、残り3戦全力で戦っていきたいと思います。

清水柊吾(総2・広島城北)

――今の気持ちは

なかなか勝てなかったので、結構メンタルもやられていましたが、今日勝てたのでよかったです。

――昨日の敗戦からどう修正したか

昨日は自分もミスが多かったので、小さなミスや即失点というプレー、サーブミスなどをなくそうという意識で臨みました。今日はセッターが変わったので、しっかり合わせていこうと思いました。

――サーブが好調だったが

悪くはなかったのですが、それでも2セット目の序盤などで2本ミスしてしまったので、そのサーブを入れて入ればもう少し楽になったのではないかと思います。それでも、調子はまあまあ良かったと思います。

――サーブとレシーブを全体的に振り返って

今日は終盤になるにつれてディグなども上がっていって、ブロックは少し反応が遅れて後ろがレシーブしにくいだろうなと思う部分があったので、もう少しブロックの練習が必要だと思います。

――ブロックについて途中で話し合いはしたか

僕は一本もブロック止められなかったのですが、ベンチやコート内でも様々な指示やアドバイスがあったので、それを信じてやったら良い形にはまったと思います。

――次の試合に向けて一言

今日勝ったということに満足せずに、まだ1勝しかしていないので、疲れをとって、残り3戦全部勝てるように頑張ります。

吉田祝太郎(政2・慶應)

――今の率直なお気持ちを

月並みの表現ですけど、嬉しいですね。7連敗していえチームがすごく落ち込んでいました。自分もけがしちゃってチームに迷惑をかけているっていうのでは責任感というか申し訳なさがずっとあって、チームもどんどん落ち込んでいたのが見えていたから、今日はたくさん出て盛り上げようと思っていました。

――久しぶりの出場でしたが、ご自身のプレーは

久々だったから緊張しちゃって全然いいプレーできないかなって思ってたんですけど、コートに入っている周りの6人もすごくしっかりしてくれていたので、僕も安心してトスを上げれたなっていう印象ですね。

――コートでたくさん声を掛けていたが

みんな負け癖みたいなのがついちゃって。中盤あたりで競っているときにどうしても向こうに先に行かれちゃうことが多かったので、「ここで絶対に俺らが先に行くよ!」っていう、勝ちにいくマインドセットっていうか。負け続けると、コートの中の選手はそういうのを忘れちゃう。だから、外から見てて「あーここでいけたらいいな」って思っていたのを声掛けてました。「ここ絶対に俺らならいけるよ!」って中盤リードできてっていう展開がよかったですね。

――今日特に意識したことは

やっぱりみんな落ち込んでた。精神面ではみんな落ち込んでいたから、それを盛り上げて、勝つぞっていう気持ちを前面に出していこうっていうのは、今日から入るにあたって絶対にやらなきゃだめだなって思っていたので。プレー面はあんまりないですね。いつも通りやろうと思っていました。

――1週間空きますが、残り3戦に向けて

夏からずっとチームを作ってきてもらってて、この6戦くらいはセッターの人が代わることによって、また一から作り直しになっちゃってて、そこは迷惑を掛けちゃったので、夏しっかり作ってきたものを、少なくなっちゃったんですけど最後の3戦でそれを表現できたらいいなと思っています。

出場選手
サイド小出捺暉(環1・駿台学園)
センター樫村大仁(環2・茨城高専)
オポジット富澤太凱(経3・慶應)
サイド加藤真(商2・慶應)
センター清水柊吾(総2・広島城北)
セッター吉田祝太郎(政2・慶應)
リベロ岩本龍之介(商4・仙台第二)
途中出場宮川郁真(総1・松本県ヶ丘)
 五味渕竜也(環3・習志野)
 谷舜介(環1・徳島城東)
順位表(9月30日終了時点)
 大学勝利数セット率
1位日体大2.4444
2位早大2.2000
3位筑波大2.1000
4位順大2.0000
5位明大2.0000
6位中大1.8182
7位東海大1.0000
8位駒大0.5500
9位日大0.4000
10位国士館大0.3636
11位慶大0.3478
12位学芸大0.2917