本連載のトリを飾るのはこの二人。打線の中軸として、はたまた主将、副将としてワセダをけん引してきた鳥岡健主将(スポ4=岡山・高梁)と前多悠登(人4=東京・小山台)だ。打線好調だった昨年の東京都大学連盟秋季リーグ戦(秋季リーグ戦)から一転。こと…

本連載のトリを飾るのはこの二人。打線の中軸として、はたまた主将、副将としてワセダをけん引してきた鳥岡健主将(スポ4=岡山・高梁)と前多悠登(人4=東京・小山台)だ。打線好調だった昨年の東京都大学連盟秋季リーグ戦(秋季リーグ戦)から一転。ことしは春季リーグ戦4位、東日本大学選手権(東日本)は準々決勝敗退と苦しみ続けた。しかしそんな中、得られたものもあった。一年間チームを先導してきた二人は、全日本大学選手権(インカレ)という最終章を目前にどのような思いでいるのか。赤裸々に語っていただいた。

※この取材は8月23日に行われたものです。

「打線のベースはできつつある」(鳥岡)


チームの状態は上向いてきていると語る鳥岡主将

――まずはどのような春季リーグ戦でしたか

鳥岡 秋(秋季リーグ戦)で出た課題を冬に取り組んで春(春季リーグ戦)に向けてというところだったんですけれども、いざ始まってみるとなかなか思うような結果が出せなくて。特にここ数年の中でも春リーグでは結果を残せていないので、いつも勝っている相手に勝てなかったりとか、スタートとしては悪かったのかなと思います。

前多 鳥岡とほとんど一緒なんですけれども、練習試合ではある程度思い描いていたようにプレーできていたんで、春リーグで全然結果を出せなかったっていうことは予想外で、苦しいことが多かったなと思います。

――ご自身の調子や状態はいかがでしたか

鳥岡 もう完全にふがいなくて、足を引っ張ってしまったなという思いです。特に僕は前の代やその前の代から(試合に)出させていただいていて、打線でも中心を任せてもらっている中で、僕が全然機能できていなくてチームが勝てていないというとこはかなり大きいのかなと思います。そこも負けが込んだ一因なんじゃないかなと。

――春季リーグ戦の途中、打線を組み替えられましたが

鳥岡 そうですね。川上(卓也、スポ3=岡山・新見)が途中、日本代表(全日本大学選抜インドネシア遠征)で抜けたりしちゃったんですけれども、そういうこともあってリーグ戦を通して試行錯誤というか。色々打線を組み替えてというところだったんですけれども、結局(僕が)どの打順にいてもあまり結果を残せていなかったので、そこは申し訳なかったというか、反省ですね。

――前多副将はいかがでしたか

前多 僕は秋がひどかったので、それに比べると春は自分の中では良かったんですけれども、あまり数字には表れなかったのでもどかしさが残ったというか。もう一本は打てるな、という場面も試合によってはあったので。そういう意味では悪くはなかったんですけれども、思うような成績は残せなかったかなと思います。

――春季リーグ戦4位という結果についてはいかがでしたか

鳥岡 そこもやっぱり全然頭になかったというか、しっかり結果を残すということしか考えていなかったので、ショックと言えばショックだったんですけれども、それが自分たちの実力なんだなっていうことは4位という結果に表れていると思ったので、めちゃくちゃ悔しいです。

前多 優勝目指してやっていたので、4位という結果はショックが大きかったですし、まだまだやっていることが足りなかったんだなと痛感しました。

――なかなかチームの調子が上向いてこない中、お二人で話していたことなどありましたか

鳥岡 ピッチャーの杖子(量哉、スポ4=岡山・新見)は踏ん張って投げてくれていたんですけれども、その中で打線がふるわなくて。「何で点が取れなんだ」とか、打順の組み方とか、結構話していましたね。ただ結局、打つべき人が打てていないってところが大きいね、と話していて、それが結局最後まで解消されずにいってしまったのかなと思います。

――そんな中、東日本にはどのような思いで臨まれましたか

鳥岡 もちろん優勝目指してやっていくっていうのと、やっぱりインカレを見据えたときに、国士舘と日体と東日本で戦って勝っておくというところはとても重要なことだと思っていたので、やっぱりインカレを見据えるという意味では東日本は大きな大会だったのかなと思います。

――東日本での個人的な目標などはありましたか

鳥岡 やっぱり春から東日本にかけて全然打てていなかったので、チャンスで一本出すとか、ランナーを返すというところは目標にしていたんですけれども、そこもなかなかできず、足を引っ張ってしまったなと思います。

――前多副将はいかがでしたか

前多 東日本は優勝したいと思っていて、(東日本前に)練習試合をした感じでは、結構いいところまで勝てるかもしれないと個人的に思っていて。ですけれども、やっぱりこの程度しか勝てないのかというところだったので、優勝したかった分、負けてしまったショックが大きかった大会でした。

――国際武道大に敗れ準々決勝敗退という結果についてはいかがでしょう

鳥岡 打線のかたちは見えてきたのかなと思います。この人はこの役割で、この人はこの役割ってのは見えてきて、チャンスもそれなりにつくることができるようになってきてということで。でも詰めのランナーをしっかり返すっていうことができていなかったり、守備だったら、杖子も大事なところでホームランを打たれてしまったので、あともうちょっとのチームでかみ合わなければいけないところがうまくいかなかったかなという感じです。

前多 春負けたときは、チャンスすらつくれぬまま負けてしまうことも多かったので、そういう意味ではチャンスはつくれるようになってきているので、あとはクリーンアップだったり、打つべき人間がしっかり打っていれば勝てたと思いますし、負けてしまいましたが、希望が見えてきた大会だったのかなと思います。

鳥岡 打線に関してはベースはできつつあるので、そこはぶれないようにやっていきたいと思います。

優し過ぎて・・・


プライベートではあまり遊ばないという二人

――ここからはプライベートな質問をいくつか。まずはお互いの印象を教えてください。

前多 悪口ばっかりになっちゃうよ(笑)。

一同 (笑)。

前多 (鳥岡は)かなり優しいやつだと思いますね。よくできた人間だなとすごく思いますね。でもこれいい印象である反面、悪いところでもあると思うんですけれども、すごい今までの代に比べて後輩へのフォローがすごくて。こんなにできるのはすごいと思うんですけれども、もっと突き放すところは突き放してもいいのかなと思いますね。優しいからこそ後輩に寄り添い過ぎてしまうのかなと思います。もっと後輩から
嫌われてもいいんじゃないかなと(笑)。あとは、ちょっと頭が悪いですね(笑)。

鳥岡 まあ、それはよく言われます(笑)。そんなことはないと思うんですけれどもね(笑)。

――鳥岡主将はやはり、後輩には積極的に話し掛けようというスタンスなのですか

鳥岡 そうですね。でもやっぱり、僕らがこうやってほしいという意図が伝わらなかったりとか、納得してもらえなかったりすると、見ていて分かるというか。雰囲気にも出ているし、そう思ったときは(後輩と)話をしてということはあるんですけれども、前多が言ったように寄り添い過ぎてしまった部分もあると思うので、僕が突き放して、周りの上級生がフォローに入ってもらうというやり方ももっとできれば良かったのかなと思います。まあでもやっぱり、頭はそんなに良くないかもしれないですね(笑)。

――鳥岡主将から見て、前多副将はどのような方ですか

前多 色々(主将の自分を)補ってくれるというか、僕もどちらかというと真っすぐ行き過ぎてしまうので、そこを客観的に見て意見するところはしてくれて。それがあったからこそ、変な方向に進んで行かずに済んだのかなと一年やってみて思いました。ありがたい存在ではあるんですけれども、普段は結構チャラチャラしているというか、お調子者なんで(笑)。

――お二人は仲が良いのですか

前多 二人でプライベートで遊びに行ったりとかはしないですね。

鳥岡 でも練習後にご飯行ったりとかはしますね。あとは二人での部活に関する会話は多いのかなと思います。それこそ去年新チームがスタートした秋とかは特に。練習終わった後とか、二人でずっと話しているということは多かったですね。

――趣味はありますか

鳥岡 僕は一人でやる趣味はあまりないですね。基本的に家にいたらずっと寝てるか、外に行くなら友達とどっか行ったりという感じなので。それもご飯とかが多いですね。あっ!でもこの前、パンパシ水泳(パンパシフィック選手権)があって、渡辺一平(スポ4=大分・佐伯鶴城)を見に、友達と辰巳(東京辰巳国際水泳場)に行きましたね。最近ご飯以外で出掛けたのはそれぐらいですね。

――前多副将は趣味などありますか

前多 就活の時も趣味を聞かれる欄がありまして、無理やりカラオケって書いていたんですけれども、自分もあまりこれといった趣味はないですね。就活の時は合間を見つけて一人でカラオケとか行っていたんですけれども(笑)。意外と一人で歌う方が面白いので(笑)。

――もしこの夏、長期のお休みができたとしたらやりたいことなどありますか

鳥岡 具体的にどこに行きたいとかはまいんですけれども、まず1日目は絶対家にこもってゴロゴロする日にあてたいですね。次の日に友達とどっかに出掛けるっていうのはやりたいなと。僕は友達が行きたい所に合わせる感じなので、友達と1日はどっかで過ごしたいです。

前多 僕は卒業研究をまとめて一気に終わらせたいなと(笑)。

鳥岡 そういう卒論とかはなしで考えてよ(笑)。

前多 そしたら、原付に乗ってどこかふらふらと旅に出たいですね。東北一周してみたいですね。色々面白そうなので、原付で。ふらふらしながら温泉とかに入って、体を休めたいなと思います。

鳥岡 俺ら無趣味だな(笑)。でも僕的には友達といる時が一番楽しいかなと思います。

前多 あと会いたい人に一気に会いたいですね。僕浪人していて、もう仕事している友達もいるので、そういう人に仕事の話とか聞いてみたいですね。

「鳥岡をオトコに」(前多)


後輩にインカレ優勝を経験させてあげたいと語る前多副将

――今のチームの状態はいかがですか

鳥岡 結構東日本終わってから、個々人で調子が上がってきているのかなとは思っています。実際、実重(僚右、人4=高卒認定)とか。あとは今2年生の小技に専念してもらっている子たちは日々うまくなってきているし、調子が上がってきている人は増えているのかなと思います。

――鳥岡主将自身はいかがでしょう

鳥岡 僕も一気にガンと上がっている感じではないんですけれども、感覚としては徐々に上がってきていて、一時期のどん底からは脱してきているのかなと。

――前多副将はいかがですか

前多 (調子が)上がりきってはいないのかなと思いますけど、インカレに向けてはいい調整ができていると思います。インカレにピークを合わせるには今はこれくらいの調子がいいのかなと思います。

――チーム全体で取り組んでいることなどはありますか

鳥岡 守備で言うと、守備位置を杖子のピッチングに合わせて変えるっていうところをやっています。あとは打線がずっと課題なので、そこで点を取るということは全体で意識があるのかなと思います。打線のつながりが少しずつ出てきているからこそ、もう一段階、もう二段階上げられるということはチームでも話しているので、練習だったり練習試合で上げていければなと思います。

――前多副将は個人で取り組まれていることはありますか

前多 僕は基本的に打つだけなので、誰よりも(バットを)振る量は確保しないとなと思ってやっています。あとは最近やっぱりダッシュをしなきゃなと思っていて、練習後はちゃんと走らないとなと思っています暑いのですぐ体のキレがなくなってしまうので。

――最後のインカレですが、どのような思いで臨みたいですか

鳥岡 もう4年生ということで、このインカレが一番最後の大会で、一番目標としていた大会なので、日に日に気持ちは高まってきています。ことしは負け込んでいるんですけれども、インカレで優勝すれば全て報われると思うので、苦しんできた分最後にいい思いをしたいです。あとは4年生は四年間の集大成なので、悔いのないように力を出し切りたいなと思います。

前多 新チーム始まったときに冗談半分ですけれども、「全部負けても、インカレで5回勝って優勝できたら最高じゃね」みたいな話をしているぐらい、インカレが全てだと思っているので、ここで勝てば一年間やってきたことが正しかったということになるのかなと思うので、この大会に懸ける思いは大きいです。個人的にも、入部してからの最高成績がベスト8で、大会最終日にすら残ったことがないので、何とか結果を出したいという思いは強いですね。勝ちを知らないまま引退はしたくないです。

――主将、副将として後輩たちに残したいことはありますか

鳥岡 やっぱり一番は勝って優勝して、そのいい結果を経験させてあげて、新チームを迎えさせてあげたいなという思いです。僕らが入学する前の年までワセダは(インカレ)三連覇していて、僕らの代からは勝ちを知らないのでやっぱり一つここで結果を残しておくということは後輩たちにとっても意味は違うと思うし、後輩たちも一生懸命付いてきてくれていたので、後輩たちの努力も報われるような大会にしたいなと思います。

前多 かわいい後輩が多いので、一緒にやってきてくれた後輩たちに一つ結果として恩返しをしたいなと思います。あとはやっぱり勝った経験がないと来年以降の軸みたいなものがなくなってしまうのかなと。日体や国士舘を見ていると、やっぱり勝った経験や決勝で負けた経験があったりするから、またそこに向けて頑張れるのかなと思うので、それを後輩に伝えなければいけない義務があるのかなと思います。

――前多副将は打撃面などで後輩に残したいことはありますか

前多 あんまり俺を参考にしろみたいなずうずうしいことは言えないんですけれども、10年間くらい語り継がれるような『伝説の一打』を打ちたいなと思います(笑)。

――最後にインカレに向けての意気込みをお願いします

鳥岡 本当に苦労して、なかなか結果が出ず、悔しい思いをたくさんしてきた一年間ですし、最後の最後はみんなで笑って終われるように。あとは勝ちを目指すことは当然なんですけれども、今までやってきたことを出し切るということに集中して、最後に日本一を勝ち取りたいなと思います。

前多 日本一になりたいと思ってこの部活に入部したので、これが夢を叶えられる最後のチャンスなので、自分のためにも一緒にやってきたみんなのためにも日本一になりたいなと思います。あとは一年間チームを引っ張り続けてくれた鳥岡をオトコにしたいなと思います。鳥岡をオトコにします!

――ありがとうございました!

(取材・編集 石﨑開、写真 守屋郁宏)


一年間チームを引っ張ってきた二人に期待です!

◆鳥岡健(とりおか・けん)(※写真左)
1997(平9)年1月12日生まれのAB型。172センチ70キロ。岡山・高梁高出身。スポーツ科学部4年。内野手。左投左打。友達とご飯を食べに行ったり、出掛けたりすることが一つの楽しみであるという鳥岡主将。自分で予定を立てるタイプではなく、友達がやりたいことに合わせるのが常だそうです。しかし、そんな鳥岡主将はこの一年間、苦しいときも常に先頭に立ってチームを導いてきました。現役生活の集大成、チーム一の功労者は4年ぶりのインカレ制覇へ気合十分です!

◆前多悠登(まえだ・ゆうと)
1995(平7)年4月26日生まれのA型。175センチ75キロ。東京・小山台高出身。人間科学部4年。内野手。右投右打。就職活動の合間によく一人でカラオケに行っていたという前多副将。十八番(おはこ)は、UVERworldの『SHAMROCK』だそうです。その打棒でチームを引っ張ってきた前多副将は、最後のインカレで十年間語り継がれる『伝説の一打』を放ちます!