立ち上がりから猛攻を受けるなか、2ヵ月前の悪夢を思い出した人も多かったに違いない。7月18日にホームで行なわれたJ…

 立ち上がりから猛攻を受けるなか、2ヵ月前の悪夢を思い出した人も多かったに違いない。7月18日にホームで行なわれたJ1リーグ第16節――。ベガルタ仙台は2−8という、まるで野球のようなスコアで横浜F・マリノスに大敗を喫していた。



横浜FMのハイプレスに仙台は反撃の一手を打てなかった

 そのリベンジを期して臨んだ、敵地での一戦。しかし、序盤から相手にボールを握られると、次々に際どいシュートを放たれる。ウーゴ・ヴィエイラのボレーがポストを叩いたときにはまだ運が残っていたが、21分に山中亮輔に豪快なミドルを叩き込まれると、悪夢は現実のものになりかけた。

 それでもこの日の仙台は、ひと味違った。2分後に野津田岳人のシュートがオウンゴールを誘発し、すぐさま同点に追いつく。全体が押し上がり、高い位置でうまく連動したことによってもたらされた同点弾は、結果的にオウンゴールだったとはいえ、仙台の攻撃のクオリティを示すものだった。

 しかし、そんな姿を見せたのはこのときまで。以降はふたたび横浜FMの猛攻にさらされてしまう。37分には仲川輝人に独走を許して勝ち越しゴールを奪われると、後半立ち上がりにも左サイドを崩されて、またも仲川に決められる。その後にもウーゴ・ヴィエイラに2点を許し、終了間際にPKで1点を返したものの、2−5とふたたび大差で横浜FMの返り討ちにあった。

「前回はホームで8点を獲られて、今日もまた5点じゃないかと思う人もいるでしょうが、中身としては全然違ったものだったと思います。この間のゲームとは違ったものを見せることができた。選手たちも勇敢に戦ってくれたと思います」

 仙台の渡邉晋監督はあくまで前向きに試合を振り返ったが、スコアは両者の力関係を正当に物語っていた。

 この日の仙台は、自在なポジショニングで前線に枚数をかけてくる横浜FMに対し、後方でしのぐ戦い方を選択。ボールを奪ってすぐさま切り替え、バランスを崩して攻めてくる相手の裏のスペースを突く狙いがあったのだ。

 攻撃型のチームに対しては有効な戦略だったが、もっとも、ボールを奪ってもうまく攻撃に切り替えられなかった。それは、横浜FMのハイプレスに苦しんだから。プレスを剥がせず、奪った後の一手をなかなか打つことができなかったのだ。

 何とか後方でつなぎ、縦やサイドに入れようとするも、プレッシャーをかわせずに手詰まりとなってしまう。ボールは横や後ろに動くばかりで、結局、長いボールを蹴ってはふたたび相手にボールを握られてしまう。あるいは危険な位置で奪われて、ピンチを招いてしまう。GKのクリアミスから奪われた4失点目は、まさに横浜FMのプレスにハマった象徴的な例だろう。

「勇敢に戦ってくれた」という渡邉監督の言葉を肯定できるのは、失点直後に同点に追いついた時間帯と、なりふり構わず攻め入った終了間際に限られる。それ以外の時間帯はむしろ、仙台の消極的な姿勢が目についた。横浜FMのプレッシャーを受けると落ち着いてボールを保持できず、逃げるようなパスを回すだけ。味方をサポートし、ボールを受けるような動きも少なく、ゴールに向かう意識が感じられなかった。

 サッカーでは「勇気」という言葉が好まれる。いかに勇気を持って局面を進められるかで、戦況は大きく変わっていく。「勇気」は「リスク」という言葉に置き換えられるかもしれない。間を通す縦パスを入れるのは、当然相手に奪われるリスクが伴う。狭い局面でボールを受けることも、相手のプレスの餌食になりかねない。しかし、そのリスクを重ねることで、次第に優位な状況が生まれていき、ゴールという歓喜にたどり着く。

 ただ、本質的には「勇気」と「リスク」はイコールでは結ばれない。「勇気」を示すには、確かな技術に裏打ちされた「自信」が備わっていなければならないからだ。自信なき勇気――それは無謀と変わらない。

 仙台にも自信を持ってボールを運ぼうとする選手がいた。野津田と板倉滉のふたりである。

 シャドーとして出場した野津田は積極的にボールに絡み、パスを出した後に動き直して、また受ける。そんな動きを繰り返して戦況打開を試みた。後半途中から仙台の保持率が徐々に高まっていったのは、野津田がボランチの位置に下がってパスワークの起点となったことが大きかった。

 3バックの左に入った板倉も、守備ではやや後手を踏んだが、プレスを落ち着いていなしながらつなぎの意識を高め、時に自ら持ち上がり、ギャップを生み出そうと試みた。

 面白いのは、ふたりが試合後に同じような発言をしていたことだ。

「同点に追いついたときのような形を作るうえで、もっと全員で受ける意識を高められたらよかった」(野津田)

「もう少し全員が受ける準備をしていれば、プレスを剥がせたと思う。練習から意識的にボールを受けることをやらないといけない」(板倉)

 両者はともに、サンフレッチェ広島(野津田)と川崎フロンターレ(板倉)からのレンタル選手。ボールを大事にする哲学が備わるチームで自信が育まれたふたりは、ボールを受ける意識が足りない周囲に物足りなさを感じているのかもしれない。

 これで仙台は、2連敗で8位に転落(9月30日終了時点)。ぼんやりと見えていたACL出場が大きく遠のいた。

 2014年に渡邉監督が就任以降、仙台はボールを大事にするサッカーに取り組んできた。14位(2014年)→14位(2015年)→12位(2016年)→12位(2017年)と、なかなか結果には結びついていないが、着実にスタイルは根づき、今季はようやく上位争いを演じられるレベルにまで到達した。しかし、この日の戦いを見るかぎり、さらなる高みを目指すには物足りなさは否めない。

 自信と勇気――。仙台に求められるキーワードである。