強豪の大勝にも、挑戦者の足踏みにも映った。日本のサンウルブズは、初参戦シーズンの2勝目を逃した。 一昨季王者のワラターズも、最高気温35度、湿度59パーセントというアジアの天候には苦しんだろう。 序盤からエリア不問で攻めるサンウルブズを前…

 強豪の大勝にも、挑戦者の足踏みにも映った。日本のサンウルブズは、初参戦シーズンの2勝目を逃した。

 一昨季王者のワラターズも、最高気温35度、湿度59パーセントというアジアの天候には苦しんだろう。

 序盤からエリア不問で攻めるサンウルブズを前に、守備列組成を遅らせた。好機を得てもミスを犯した。
 
 先制したのは、その、ワラターズだった。

 前半7分頃、サンウルブズが敵陣22メートルエリア右のラインアウトからボールキープする。

 ゴールポストからほぼ正面の位置で密集を作ると、SH茂野海人が目の前のスペースへ駆ける。

 隣に味方のLO小瀧尚弘がいるのを確認し、2人のタックラーを背負いつつ片手で楕円球を放る。

 つなげられず、ノックオンとなった。

 投げた側が「自分の軽いプレーが出た」と悔やんだのは後の祭りだった。以後はサンウルブズの反則と相まって陣地を挽回したワラターズが、自陣10メートル線付近左のラインアウトから展開する。

 WTBタンゲレ・ナイヤラボロ、CTBロブ・ホーンが短いパス交換ですぐに敵陣ゴールへ直進。SHマット・ルーカスのトライなどを促し、7-0とした。

 跳ねるホームチームと後手を踏むワラターズという構図なら、まだ続いた。24分にはWTBナイヤラボロの一時退場と勝ち越しペナルティゴールが重なり、サンウルブズが9-7とリードした。

 しかし、自陣22メートル線上中央でSOバーナード・フォーリーに2人がかりのタックルを仕掛けた27分、すぐ右の区画で、やられる。

 次の攻撃ラインに入ったCTBイズラエル・フォラウが出された球を掌で大外へ弾く。意表を突いた技にWTB笹倉康誉が「反応が遅れた」ところ、FLジャック・デンプシーのトライが決まった。14-9。

 ここからワラターズは彼我の特徴を鑑みてか、モール、FW同士での短いパス交換を多用。後半9分までに、40-12とほぼ勝負をつけた。

 今季8勝目を挙げたFLマイケル・フーパー主将は、こう語った。

「分析で知っていることを活かし、前半の終盤からすべきことをした」

 敗者は、戦前から抱える構造的な問題にも泣いた。「言い訳はしない」というマーク・ハメット ヘッドコーチも、「選手層は底を突いている」。

 2月からの連戦で大量の怪我人が出て、後半6分登場のPR稲垣啓太も、6月の代表戦での疲れから本来は「ほぼ出ない」はずだった。

 この日活躍も頭を強く打ったCTB立川理道ゲーム主将は、ボスいわく「将来のため」に前半で退いた。

 主力の外国人勢は6月の休息期間に実戦から離れており、田邉淳アシスタントコーチは「(戦法の)落とし込みの時間は足りなかった」という。

 逸機を重ねた前半は、相手のFLフーパー主将に「各々がキャラクターを取り戻す前」と看破された。

「スケジュールがタフ。そこで選手、協会の意見をすり合わせながら、よくできることはたくさんある」

 CTB立川ゲーム主将が脳を揺らしつつこう語るチームは、その日のうちに南アフリカ遠征に発つ。(文:向 風見也)