羽生結弦にとって、9月20日~22日に開催されたオータムクラシックは平昌五輪以来7カ月ぶりとなる試合だった。そのショートプログラム(SP)、羽生は丁寧な滑り出しで、最初の4回転サルコウを3.49点の加点をもらうきれいなジャンプで決めた。



初戦優勝で今季をスタートさせた羽生結弦

 本人が、「今日の試合のコンセプトは、一つひとつをすごく丁寧に感じながら滑ろうと考えていた」と言う演技。静かな曲調の中、ジャンプからのつなぎも丁寧さを心掛けているのがわかる滑りで、続くトリプルアクセルも不安なく着氷した。

 だが、続く4回転トーループ+3回転トーループは、朝の公式練習と6分間練習で余裕を持って決めていたにもかかわらず、重心が下がって耐える着氷になってしまった。

「トーループのコンビネーションのところで一発目のジャンプが詰まってしまったので、力を使ってしまったのもありました。そこで若干集中が切れてしまったかなと思います。やっぱり、試合ということで緊張感もすごくありましたし。何か、久しぶりに試合でジャンプを跳ぶ集中の仕方とか、怖さとか……、そういったものを味わいながら滑っていたと思います」

 その後、フライングキャメルスピンを終えてシットスピンに入る直前につまずいたような形になると、ジャンプをしてスピンに入ってしまい、得点を認められず、まさかの0点に。

「スピンがあんなになってしまったので、仕方ないかなと思います」と本人が言うように、続くステップシークエンスでレベル4を取ったものの、少し流れが途切れる滑りになってしまった

 結局、得点はシットスピンの0点が響き97.74点。100点の大台に乗せられず、思わず苦笑いを浮かべるスタートになってしまった。

 翌日のフリーは、吹き荒れる風の音とともに滑り出し、”生命の目覚め”を思わせる演技で始まった。朝の公式練習や直前の6分間練習でやや不安定さを見せていた最初の4回転ループは何とか決め、次の4回転トーループも加点3.99点の出来。

 そこから丁寧な滑りでスピンとステップシークエンス、3回転ループを決めたが、後半に入ると4回転サルコウで転倒して連続ジャンプにできず、その後に予定していた4回転トーループ+トリプルアクセルは、トーループがパンクして連続ジャンプにできなかった。

 次のトリプルアクセル+2回転トーループを決めてコリオシークエンスで盛り返したものの、2本目のトリプルアクセルは尻が落ちる着氷になってしまい、連続ジャンプは1回だけに終わった。

 後半は、昨シーズンまでの構成と同じように、連続ジャンプを3回入れて得点アップを狙う構成になっており、要素が詰まったプログラムになっている。シットスピンとコンビネーションスピンはともにレベル4にして見せ場を作ったものの、ジャンプの失敗で得点を伸ばせず165.91点。この結果、フリーはチャ・ジュンファ(韓国)に次ぐ2位で、合計はチャに3.87点差まで追い込まれたが、今季初戦での優勝を決めた。

「4回転トーループ+トリプルアクセルは点数的にどうこうではなく、今の自分ができる最高のコンビネーションジャンプになるので、練習の段階から入れようと考えていました。それが入れば次のジャンプは3回転フリップ+3回転トーループにする予定でした。ただ、今回はサルコウをミスしてしまったので、その時に4回転+3回転をどこかで入れたいなというか、コンビネーションのセカンドの3回転トーループをどこかで入れたいなと一瞬考えていました。最終的にはコンビネーションを全部使えない状態でこういう結果になってしまったので、反省点はすごく多いです」

 SPの『秋によせて』とフリーの『Origin』は、幼い頃に憧れて、敬意の念を持って観ていたジョニー・ウィアとエフゲニー・プルシェンコ(『ニジンスキーに捧ぐ』)の代表的なプログラムだ。それを今、自分がやることで、再び原点に戻る決意を込めている。だが、シーズン初戦のこの大会では、きっちり滑り切ることができなかった。



SPではミスもあり、悔しさが残ったという羽生結弦

 演技が終了した瞬間、悔しさを顕わにした羽生はこう話す。

「4分間になったからきついというのではなくて、ただ単に自分の実力不足という感触がありました。体がこのプログラム自体についていってない感じがしています。これから練習をして、しっかりとこのプログラム構成に耐えうる体を作らなければいけない。これが今の時点の実力だと思うし、やっぱり実力以上のものは演技で出せないので。この悔しさをしっかりと感じながら、次戦に向けて頑張っていきたいと思います」

 この試合に出て一番よかったと思うのは、「やっぱり試合で勝ちたい」という気持ちが強くなったことだと羽生は言う。今回で4回目になるオータムクラシックは、4年連続の悔しい結果に終わった。だが、そんな悔しさからシーズンをスタートさせるのも羽生結弦らしさなのかもしれない。グランプリシリーズ初戦が楽しみになってきた。