WEEKLY TOUR REPORT米ツアー・トピックス 今季のPGAツアー最終戦となるツアー選手権(9月20日~23日/ジョージア州アトランタ、イーストレイクGC)では、賞金1000万ドル(約11億円)のボーナスが得られる年間総合優勝…

WEEKLY TOUR REPORT
米ツアー・トピックス

 今季のPGAツアー最終戦となるツアー選手権(9月20日~23日/ジョージア州アトランタ、イーストレイクGC)では、賞金1000万ドル(約11億円)のボーナスが得られる年間総合優勝へ向けて、熱戦が繰り広げられたが、来年からはこの戦いの方式が大きく変わることになる。そして、ボーナスが1500万ドルに増額されることも決まった。



PGAツアーの改革を進めるジェイ・モナハンコミッショナー

 厳密に言えば、今年まではツアー選手権の勝者と年間総合優勝と、2つのチャンピオンを争う戦いが行なわれていたことになる。ツアー選手権を制した瞬間に、必ず年間王者にもなれるのは、ツアー選手権前にリセットされたポイント上位5名の選手だけだからだ。ポイント6位以下の選手は、たとえツアー選手権で優勝を飾っても、上位選手の成績によっては年間王者にはなれないことがある。

 例えば昨年は、ポイント26位で最終戦を迎えたザンダー・シャウフェレ(アメリカ)がツアー選手権を制したが、総合優勝を飾ったのは、ジャスティン・トーマス(アメリカ)だった。ポイント2位のジャスティン・トーマスはツアー選手権を2位でフィニッシュ。7位に終わったポイント1位のジョーダン・スピース(アメリカ)を逆転して、年間王者の座に就いてボーナス1000万ドルを手にした。

 はたしてこれで、コースやテレビで観戦しているギャラリーやファンは、ツアー選手権における1打、1打の戦いをきちんとフォローし、エキサイトすることができているのか。そうした疑問や問題は常に囁かれていた。

 実際、戦っている選手たちも、自分が総合ポイントでどの位置にいるのか、詳細がわからない状態でプレーしているのが現状だった。

 そこで、来年からは総合優勝をかけたツアー選手権の戦い方が改善されることになった。それはどういうものなのか、というと、これまでリセットされたポイントがシンプルにツアー選手権に臨む選手のスコアに反映されることになったのだ。

 来季からはプレーオフが合計3大会となるが、最終戦に進める選手が30名であることは変わらない。そして、大会前にポイントがリセットされるのも同様だが、ポイント1位の選手が10アンダー、2位が8アンダー、3位が7アンダー、4位が6アンダー、5位が5アンダー……という形で、ポイントランキングをスコアに反映して大会をスタートする。なお、ポイント6位以下は、6位~10位が4アンダー、11位~15位が3アンダー、16位~20位が2アンダー、21位~25位が1アンダー、26位~30位がイーブンパーとなる。

 これなら、リーダーボードを見れば、総合優勝を争う順位も一目瞭然。大会の覇者がそのまま年間王者となり、大会後にツアー選手権と年間の勝者が2人並ぶようなこともなくなる。選手にとっても、ファンにとっても、非常にわかりやすい戦いになるだろう。

 この大きな変更について、選手たちの評判はすこぶるいい。変更が発表されると、世界ランキング1位の座に就いて、ツアー選手権にはポイント2位で臨んだジャスティン・ローズ(イングランド)は、こう言って賛同した。

「ひとつの試合では、トロフィーもひとつのほうがいい。ファンがエンジョイできることが一番いい」

 ゲーリー・ウッドランド(アメリカ)も、賛成の意を示してこう語った。

「ファンにとって、わかりやすいことがとても大切。実際、BMW選手権で僕の成績をフォローしていた友人たちは、『(ポイントの状況が)よくわからなかった』と嘆いていたからね。変更案には賛成だ。今年で言えば、(ポイント28位の)僕とトップとは10打差でスタート。その差は大きいけど、いいプレーをすれば逆転できると思うしね」

 2007年にフェデックスカップ・プレーオフが始まってから、今年で12年目。その間、最終戦を迎える前に年間チャンピオンが決まってしまったことから、ポイントリセット制を導入するなど、これまでも何度か方式が変更されてきた。そして、昨年の年間王者であるジャスティン・トーマスも、来季からの変更については賛成する。

「アンダーからスタートすることに慣れるのには、少し時間がかかると思う。でも、完璧なシステムなどないのだから、(新方式は)よりよい方法だと思う」

 新たなシステムの導入とともに、もうひとつ、大きなボーナスが支払われることも発表された。レギュラーシーズンの最終戦となるウィンダム選手権が終了した時点で、フェデックスカップ・ランキング1位となった選手には、200万ドル(約2億2000万円)のボーナスが支給されることになった。ランキング2位の選手にも150万ドルのボーナスが送られ、以下トップ10の選手までボーナスが与えられる。

 これもまた、グッドアイデアと言える。今までは、長いシーズンで戦って得たポイント上位選手が、4倍のポイントを得られるプレーオフの覇者にあっさり逆転を許すことがよく見られた。

 その”逆転劇”こそが、プレーオフの醍醐味なのだから仕方のないことだが、今後はシーズンを通していいプレーをした選手がそれを評価され、その対価を得られるのはいいこと。PGAツアーのシステムは、こうしてよりよい方向に変化をしていくからこそ、エキサイティングな戦いがずっと続いているのだろう。