今週開幕したばかりのUEFAチャンピオンズリーグ(CL)で、最も注目を集めた一戦と言ってもいいだろう。グループリー…
今週開幕したばかりのUEFAチャンピオンズリーグ(CL)で、最も注目を集めた一戦と言ってもいいだろう。グループリーグ第1節、昨季イタリア王者のユベントスは敵地に乗り込み、バレンシアと対戦した。
ユベントスの今季最大の話題と言えば、もちろん、クリスティアーノ・ロナウドの移籍加入。その話題の主が、CLでの移籍後初戦を、それも昨季までプレーしていたスペインで迎えるとなれば、注目を集めないはずがない。しかも、直前の週末に行われたセリエAの試合で、移籍後初ゴールも決めたとあって、その注目度は極めて高かった。

前半で退場となったユベントスのロナウド
実際、現地のテレビでは試合当日、ホテル入りしたロナウド、スタジアム入りしたロナウド、ピッチ状態を確認したロナウドといった具合に、主役の一挙手一投足を逐一追い、大一番をあおっていた。
そして試合が始まれば、ユベントスの背番号7がボールを持つたびに、スタンドからは大ブーイング。シュートを外したり、バレンシアの選手と小競り合いになったりと、ちょっとしたことで、スタジアムには耳をつんざくような指笛が鳴り響いた。
とはいえ、ロナウドだけが悪目立ちし、退屈な試合になることはなかった。
立ち上がりは、バレンシアがショートパスを主体にうまくボールをつないでチャンスを作れば、前半10分あたりからは、ユベントスがサイド攻撃を中心に、バレンシア陣内に攻め入る時間を増やしていった。
方法こそ異なるものの、互いが特長を発揮して攻め合う展開は、非常に見ごたえがあり、おもしろい試合だった。
しかし、突然起きたまさかの出来事が、試合への興味をたちまち激減させてしまう。よくも悪くも注目の的だったロナウドがレッドカードを受け、退場となったのである。
正直、スタンドの記者席から見ていても、何が起きたのか、わからなかった。
ユベントスの左サイドバック、アレックス・サンドロがゴール前へ送ったクロスが合わず、プレーが切れたその瞬間、バレンシアの選手たちがゴールライン上にいた追加副審のもとに駆け寄り、猛抗議。すると、主審が追加副審に何ごとか確認し、ロナウドにレッドカードを提示した。これまでCLで数々の得点記録を打ち立ててきたレジェンドが、154試合目にして初の退場処分という新たな記録を書き加えることになった。
信じられないといった様子で、その場に倒れ込むロナウド。確かに、映像を見直してみても、何が処分の対象となっているのか、よくわからない。
ロナウドは、座り込んでいたバレンシアのDFジェイソン・ムリージョの頭に手をやってはいるが、暴力行為というほどのことではない。あるいは、左サイドからのクロスに対してゴール前に入っていく際、もつれながらムリージョを倒したこと(映像では、ロナウドが蹴っているようにも見える)が、処分の対象となったのか。いずれにしても腑に落ちないジャッジで、主役は涙を浮かべながらピッチを去らなければならなくなった。
ロナウドのユベントスでの”CLデビュー戦”は、わずか30分足らずで、まさかの結末を迎えた。
これにより、今季補強の目玉を失い、ひとり少ない戦いをアウェーで強いられることになったユベントス。とはいえ、幸か不幸か、この緊急事態が、ユベントスの強さを際立たせる結果となるのだから、おもしろいものだ。
ひとり少なくなったユベントスは、大きくフォーメーションを変えることなく、左インサイドMFのブレイズ・マテュイディが、ロナウドの抜けた左サイドをカバーすることで対応。ただただ防戦に追われるだけでなく、相手ゴールへ向かう攻撃の推進力も失わなかった。
前線では24歳のレフティ、フェデリコ・ベルナルデスキが豊富な運動量と正確なキックを生かし、何度もチャンスメイク。また、今季ミランから復帰のレオナルド・ボヌッチを加えた最終ラインは、バレンシアにボールを持たせても、決定的なシュートはまったくと言っていいほど打たせなかった。
得点はいずれもPKによる、ミラレム・ピアニッチの2ゴールのみ。ロナウドの退場後は、それまでのように攻勢に試合を進めることができなかったが、試合の主導権を握っていたのは、明らかにユベントスだった。
ユベントスのマッシミリアーノ・アッレグリ監督は試合後の会見で、「ロナウドが退場になるまでは、いいプレーができていたのに」と、主役を失ったアクシデントを嘆きつつも、「痛手がありながら、我々は自分たちのサッカーを続けた。選手たちはやるべきことをやり、いいサッカーをしてくれた」と、満足げに試合を振り返った。
結果は2-0。盤石の勝利と言っていいだろう。
試合終了から1時間ほどして、ロナウドは、ボヌッチ、ジョルジオ・キエッリーニとともに、取材エリアに姿を現した。無言ではあったが、表情は笑みをたたえているように見えるほど穏やかで、退場のショックは癒えているように見えた。チームの勝利があればこそ、だったのかもしれない。
ピッチ上の各所にタレントを配し、ベンチを見ても、パウロ・ディバラやドウグラス・コスタが控えるなど、選手層は厚い。それでいて、腰高な戦いになることなく、粘り強く、ときに嫌らしく、確実に勝ち切る伝統の術も備えている。これから先、ロナウドが本領を発揮するようなら、今季のユベントスは相当に強い。
ミーハーな視点に立てば、スター選手を欠いたことですっかり興味が薄れてしまった試合も、ユベントスの強さを認識するには、またとない絶好の機会となった。