昨季の学生駅伝は東海大学が出雲を10年ぶりに制し、神奈川大学が全日本で20年ぶりに優勝。そして、最後に笑ったのが青山学院大学だった。



今年1月の箱根駅伝で、大会4連覇を達成した青学大

 圧倒的な勝利で箱根駅伝4連覇を達成した青学大の強さは神がかっていた。今季も青学大は盤石なのか? 東海大の逆襲はあるのか? それとも他大学がサプライズを起こすのか? 日本インカレ(9月6~9日)の走りから、有力校の状態をチェック。今季の戦いを予想してみたい。

 まず理解していただきたいのが、8~9月は夏合宿(走り込みが中心)の真っ只中で、日本インカレは長距離ランナーにとって”微妙な大会”になることだ。有力選手の欠場も多く、本当の実力を推し量れる大会ではない。しかし、現時点の仕上がり具合は見ることができる。

 大会を通じて感じたのは、青学大の強さだった。

 初日の男子10000mはレダマ・キサイサ(桜美林大3年)とパトリック・ワンブィ(日大4年)のふたりが飛び出すも、青学大勢はまったく反応しない。原晋監督からは「3次合宿と駅伝につなげられるような走りをしてこい」という指示を受けており、無理にペースを上げることはしなかった。森田歩希(4年)、鈴木塁人(3年)、吉田祐也(3年)の3人は他の選手に惑わされることなく、1キロ3分切りのペースを刻んでいく。

 一時は日本人トップ集団から引き離されたが、5000m過ぎに集団に追いついた。そして、7000m付近からは1周差をつけられたキサイサの背後につく形で、森田と吉田がペースを上げた。残り6周で森田が転倒するも、吉田は快調に駆け抜けて日本人トップ(3位/29分47秒93)でフィニッシュ。鈴木が9位、森田も10位で走り終えた。

 存在感を示した青学大勢だが、レース後に聞いた吉田の言葉にもチームの強さがにじみ出ていた。

「自分はスピードがない分、スタミナで勝負していきたいと考えていて、夏合宿も順調にきています。今年の青学大は過去5年間に比べてチームの組織力やレベルが高いので、僕は出雲では走れないかもしれませんが、全日本と箱根は狙っていきたいです」

 10000mの吉田に続き、3日目の5000mでも青学大勢が快走。今度は吉田圭太(2年)が日本人トップ(3位/14分08秒75)を奪取し、充実の笑顔を見せた。

「10000mの祐也さんに続かなきゃという思いがありました。今回は想定以上に走れましたが、僕はまだまだ駅伝を安心して任される選手ではありません。まずはメンバーに選ばれて、自分の区間をしっかり走り、チームに貢献したい。駅伝3冠を狙えるチームだと思うので、先輩方の力を借りて、達成したいと思います」

 青学大は9月3日まで2次合宿をこなしており、日本インカレに向けてはほとんど調整していなかったという。スピード練習が不足していたが、「粘る」走りで結果を残した。ふたりの吉田は共に学生駅伝未経験者。日本インカレで日本人トップに輝いた実力がありながら、駅伝では”レギュラー”が確約されているわけではない。

 今年の青学大は、1区5位の鈴木、2区1位の森田、4区9位(学生ハーフ王者)の梶谷瑠哉(4年)、5区5位の竹石尚人(3年)、6区1位の小野田勇次(4年)、7区1位(区間新)の林奎介(4年)、10区2位の橋間貴弥(4年)と、強力な箱根Vメンバーが7人も残っている。

 他にも、昨年は1年生ながら出雲5区(区間3位)を務めた神林勇太(2年)、同駅伝でアンカー(6区6位)を担った橋詰大慧(4年)もいる。そこに吉田コンビを加えると11名。故障や体調不良がなければ、6人で戦う出雲、8人の全日本はもちろん、10人の選手が必要な箱根駅伝も十分に計算が立つ。目標に掲げる「駅伝3冠」に向けて、順調な雰囲気が漂っている。

 では、「打倒・青学大」に燃えているチームはどうなのか。その”急先鋒”といえる東海大は現時点で苦戦を強いられている。

 日本インカレは10000mに鬼塚翔太(3年)、小松陽平(3年)、塩澤稀夕(2年)がエントリーしていたが、故障の影響で3人ともDNS(棄権)。5000mの松尾淳之介(3年)、3000m障害の三上嵩斗(4年)も棄権した。また、エース格の關颯人(3年)と阪口竜平(3年)はエントリーを回避している。

 その中で気を吐いたのが、5000mに出場した西川雄一朗(3年)だ。学生駅伝未経験の選手だが、キサイサとワンブィに最後まで食らいつく。終盤、吉田圭太に逆転を許したものの、アグレッシブな走りで4位(14分12秒90)に入った。

 西川はレース後、「前で攻めたんですけど、力が足りなかったですね。現時点では青学大さんのほうが強いと思うので、自分たちはこれからの試合で結果を残して自信をつけていき、青学大さんに負けないように頑張りたい。出雲と全日本も区間賞をとるつもりでやっていますが、箱根では絶対に区間賞をとって、チームに貢献するのが目標です」と話していた。

 東海大は1500mで日本選手権を連覇している館澤亨次(3年)も同種目で本領を発揮した。ジャカルタ・アジア大会の疲労で足が動かなかったというが、ラスト10mで才記壮人(筑波大学2年)をかわして、3分46秒28で優勝している。しかし、チーム全体で見ると、5月の関東インカレ、6月の日本選手権と比べてトーンダウンした印象だ。

 昨年の出雲駅伝は3年生以下のメンバーで臨み、1区阪口、2区館澤、3区松尾、4区鬼塚、5区三上、6区關というオーダーで青学大に完勝している。だが、6月上旬に左くるぶし付近を疲労骨折した關は練習に復帰しているものの、今年の出雲は大幅なメンバー変更がありそうだ。

 東海大は今夏から大きく舵を切っている。昨季まではスピードにこだわってきたが、チームは「箱根駅伝」を最大の目標に掲げるようになったのだ。1次合宿(8月2~12日)と2次合宿(8月17~9月4日)で30km走を10本近くこなすなど、走行距離が大幅アップ。両角速駅伝監督は、「とにかく箱根だぞ!」と選手たちに声をかけている。

 昨季は出雲1位、全日本2位、箱根5位と走行距離が延びるにつれて順位を落とした。しかし今季は箱根に照準を定め、正月の晴れ舞台で王者・青学大に真っ向勝負を挑む構えだ。

 そうなると、出雲は前回2位の青学大が優勝候補になる。東海大はメンバー次第。青学大を揺さぶるとしたら、前回5位の東洋大学になるだろう。

 東洋大は日本選手権1万mで学生トップの4位に食い込んだ西山和弥(2年)、同8位の相澤晃(3年)、右中足骨の疲労骨折などから復帰した山本修二(4年)。この3人が強力で、酒井俊幸監督は「勝つ」ためのオーダーを組んでくるはずだ。1区から仕掛けてくるに違いない。

 なお、前回3位の日本体育大学は、パワハラ問題で渡辺正昭駅伝監督が解任されており、チームは揺れている。そして、前回4位の順天堂大学は出場権(箱根10位以内)を持っていない。

 11月4日の全日本大学駅伝も現時点では青学大が優勢だ。戦力を考えると、対抗馬はやはり東海大と東洋大になる。東海大も出雲よりチームの足並みが揃っているはずで、おもしろい戦いになるだろう。

 全日本は今年から各区間の距離がリニューアルされたため、新たな戦略が必要になってくる。以下が各区間の距離(前回までの距離)だ。なお、シード権も6位以内から8位以内に変更された。

1区9.5km(14.6km)、2区11.1km(13.2km)、3区11.9km(9.5km)、4区11.8km(14.0km)、5区12.4km(11.6km)、6区12.8km(12.3km)、7区17.6km(11.9km)、8区19.7km(19.7km)

 前半はショート区間が並ぶため、スピードランナーが揃うチームが戦いを優位に進めることができる。東海大が万全の状態ならば先手を取りやすいはずだ。一方で、終盤2区間はロング区間になる。青学大は終盤にも強力カードを配置して、バランスのいいオーダーを組むことができる。前回5区の途中までトップを走った東洋大は、区間配置が悩ましいところだが、おそらく序盤から強力なカードを切ってくるだろう。

 前回覇者の神奈川大は、全日本の3週間前に箱根駅伝予選会がある。今回の目標はシード権の獲得。両レースで結果を残すために、全日本は箱根予選会にも出場する主力を3分の2、残りの3分の1は全日本に照準を合わせたスピードランナーを起用する方針だ。前回4位の駒澤大学も箱根予選会を経ての出場になる。

 今季の学生駅伝は青学大が出雲から旋風を巻き起こすのか。それともライバル校が意地を見せるのか。10月8日の出雲駅伝から”激闘”が始まる。