9月8日~9日、スーパーフォーミュラ第6戦が岡山国際サーキットで開催された。この週末は秋雨前線の影響で強い雨に見舞われ、公式予選もウェットコンディションでスタート。中嶋一貴(VANTELIN TEAM TOM’S)がQ1で…

 9月8日~9日、スーパーフォーミュラ第6戦が岡山国際サーキットで開催された。この週末は秋雨前線の影響で強い雨に見舞われ、公式予選もウェットコンディションでスタート。中嶋一貴(VANTELIN TEAM TOM’S)がQ1で脱落したほか、チャンピオン争いをする石浦宏明(JMS P.MU/CERUMO・INGING)や山本尚貴(TEAM MUGEN)も相次いでQ2で姿を消すなど、大波乱の展開となった。



フロントノーズを破損しても果敢に攻める小林可夢偉

 そんな荒れ模様の一戦で、ひと際目を引く走りを見せたのが、小林可夢偉(carrozzeria Team KCMG)だった。

 Q1を4番手で通過すると、続くQ2では2番手以下に0.6秒近い差をつけてトップタイムを記録。さらに最終のQ3でも、驚異的な速さを見せて1分24秒466をマーク。この時点で2番手以下とは0.5秒の差があり、可夢偉の初ポールポジションは決まったかに思われた。

 しかし、土壇場でひっくり返される。岡山で優勝経験のある関口雄飛(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)が最終ラップで0.02秒上回り、逆転でトップに浮上。可夢偉は惜しくもポールポジションを逃した。

 予選後の記者会見に登場した可夢偉は、悔しさを隠し切れないのか、いつもより言葉少なめで、その表情に笑顔はなかった。

 それもそのはず、「あと一歩」というところで予選2番手に終わったのは、参戦4シーズン目を迎えたスーパーフォーミュラで4回もあるからだ。

「Q3のアタックは悪くはなかったですけど、(関口)雄飛のほうがちょっとだけ速くて……得意の2番手で終わりました。最後に”スーパーアタック”を決めないと、ポールポジションは獲れないと思う。だから、僕は今まで獲ったことがないんだと。まぁ、しょうがないです」

 9日はさらに悪天候となり、決勝レースは予定より1時間遅れで進行した。ドライバーの安全を考慮し、セーフティカー先導でスタートが切られるも、7周目に赤旗が提示。天候回復を待ち、約55分にわたってレースは中断された。

 一時は中止となる可能性もあったが、雨脚が落ち着いたこともあって16時10分にレースは再開。12周目にセーフティカーが解除されて本格的にスタートすると、可夢偉はトップの関口を猛追した。雨の影響で視界が悪いにもかかわらず、各コーナーで隙を見つけては並びかけようとする。

 そして13周目、マイクナイトコーナーでイン側に飛び込み逆転に成功。可夢偉はついにトップへと浮上した。ただ、その際のバトルで可夢偉はフロントノーズの一部を破損する。それでも必死にペースを上げていき、あっという間に2番手以下に7秒の差を築いた。

 それはまるで、予選での悔しさをぶつけるかのような、気迫のこもった走りだった。

 このレース展開を見てサーキットに詰めかけたファンや関係者の多くは、可夢偉がついにスーパーフォーミュラ初優勝を成し遂げると確信した。しかし、またしても予想外の事態が可夢偉を襲う。

 可夢偉の後方で、アクシデントが発生。コース上に飛散したパーツや車両回収のため、セーフティカーが導入された。結果、5.8秒あった可夢偉と関口の差はゼロとなる。

 27周目に入るところで再スタートが切られたが、可夢偉は関口の反撃を気にしてか、一気にペースをあげて引き離そうと攻め込んでいった。しかし、それが仇(あだ)となってしまった。

 可夢偉はコース後半のダブルヘアピンひとつ目で止まり切れず、コースオフ。このミスにより、トップの座をあっさりと関口に奪われてしまう。

 幸いにも2番手でコースに復帰できた可夢偉は、あきらめずに追い上げをスタート。関口がミスを犯してタイムロスした隙に背後につくと、32周目のアトウッドカーブで関口のインに飛び込む。しかし、そのカーブの先ではマシン1台がスピンし、コース上に停車していた。周辺はイエローフラッグ(追い越し禁止)区間となったため、可夢偉は引かざるを得なかった。

 そしてその直後、ふたたびセーフティカーが導入されることになった段階で、レースの最大延長時間として決められた70分を迎え、レースは34周で終了。トップの座を守った関口が待望の今季初優勝を飾った。

 雨で難しいコンディションで白熱のバトルを展開した両者は、パルクフェルメで握手を交わす。そのとき、可夢偉はようやく笑顔を見せた。

 ただ、やり切れない気持ちは、心のなかに少なからずあったようだ。

「(再スタート後の)最初は踏ん張らないと、後がつらくなるだろうなと思ったので、ちょっと攻めたのですが……。その結果、失敗してしまいました。その後もチャンスがあるかなと思って(関口の隙を)うかがったんですけど、残念ながらセーフティカーが導入されて……。

 チームにとっても、僕自身にとっても、初優勝のチャンスでした。それをこんな形で落としたのは、非常に残念です。ただ、こういうレースを続けていけば、いつか勝てるんじゃないかなと思うので、引き続きがんばります」

 レース後の彼のコメントを聞いて、ふと予選後の可夢偉の言葉を思い出した。Q3で関口に僅差で逆転されたとき、可夢偉はこのように語っていた。

「(関口に逆転されたと知ったとき)……今年の僕は、2位に尽きるなと思いました」

 可夢偉が2位でフィニッシュしたのは、これで3回目。過去の2回とも、あと一歩という惜しい内容だった。

 スーパーフォーミュラ参戦4年目で、いまだ勝利なし。トップの座を手にするために何が足りないのか、小林可夢偉の模索の日々は続く……。