国際リーグのスーパーラグビーが、1か月間の休息期間を経て再開される。 日本から初参戦しているサンウルブズは7月2日、東京・秩父宮ラグビー場で国内最終戦をおこなう。現在オーストラリア・カンファレンス2位でプレーオフ出場を目指す一昨季王者のワ…

 国際リーグのスーパーラグビーが、1か月間の休息期間を経て再開される。

 日本から初参戦しているサンウルブズは7月2日、東京・秩父宮ラグビー場で国内最終戦をおこなう。現在オーストラリア・カンファレンス2位でプレーオフ出場を目指す一昨季王者のワラターズから、通算2勝目を目指す。

 相手チームの主将はマイケル・フーパー。身長182センチ、体重101キロとトップレベルのFLにあっては小柄だが、オーストラリア代表の主軸を張る。密集戦で相手の球へ絡むジャッカルを長所とする。攻防の起点となる肉弾戦にあって、厄介な存在だろう。「攻守ともフィジカル(の強さ)を出す」と腕をぶす。

 一方、サンウルブズのこのポジションで主戦を張って来たアンドリュー・ドゥルタロは、すでに離脱。アメリカ7人制代表の活動に専念するためだ。

 今度の地上戦に名乗りを上げるのは、フーパーと似た体形の日本人バックロー2人である。安藤泰洋と金正奎だ。

 背番号7をつけるのは安藤。身長181センチ、体重96キロの28歳である。キックオフの瞬間から対峙するフーパーを「自分と同じくらいのサイズであれだけやれると証明した選手。ジャッカルだけじゃなく、ランニングスキルも凄い。そこへ自分がどれだけ張り合えるか…」と見据えつつ、真に考えるのは別なことだと言った。

「サンウルブズでの先発は初めて。いつも出ている後半は、相手が疲れているのもあって(自身のプレーは)通用している感じがする。ただ、ゼロゼロ(お互いに疲れていない)状態から臨む今回は、ビッグチャレンジだと思います」

 サンウルブズへは2月中旬に追加招集されながら、序盤は出場のチャンスをなかなかつかめなかった。ようやくデビューを果たしたのは、36-28でジャガーズから初勝利を挙げた4月23日の第9節だった。以後、ずっと出番はリザーブからだった。やっとつかんだスターターの座について、本人は武者ぶるいする。

 6月のウインドウマンス(国代表のインターナショナルマッチがおこなわれる期間)では日本代表に帯同も、不完全燃焼に終わった。

 現地時間11日にはバンクーバーでのカナダ代表戦にゲーム副将として先発したが、ハーフタイムに退いた。腰痛のため、26-22という接戦をベンチで見届けた。

 18、25日に愛知・豊田スタジアムと東京・味の素スタジアムでおこなわれたスコットランド代表戦は、出場を断念した。欧州6強の一角との注目のカードに後ろ髪をひかれつつ、気持ちを切り替えたのだ。

 万全を期して、ワラターズ戦に臨む。

「あの状態でスコットランド代表戦に出ても、いいパフォーマンスはできなかったと思う。この決断がいい決断だったと言えるような試合にしたいです。相手の7番は、きっと勉強になる」

 リザーブに入った金は、安藤が欠場したスコットランド代表戦で活躍。欧州6強の一角に対し、手応えをつかんだ。接点に首を突っ込むか否かの判断、低い姿勢でのコンタクトで魅せた。

 身長177センチ、体重93キロの24歳。ずっと熱望していたサンウルブズへの追加招集が決まったのは、25日の対スコットランド代表第2戦目を直前に控えた時だった。

「選ばれて嬉しいです。ただ、選ばれたからには自分のパフォーマンスを出さなきゃいけないという責任も感じます」

 チーム合流から4日目の6月30日。都内の練習場では、接点に関する練習で周りへアドバイスを送っていた。かねて「どんなチームでもリーダーシップを」と語って来た通りだった。

 以前から「憧れ」と公言している同い年のフーパーとの、直接対決。「プレースタイルすべてが好き。憧れの選手とマッチアップできるのは楽しみですけど…」としながら、こうも意気込んでいた。

「憧れのまま終わらせるのは嫌。勝ちたい。それを体現できるいいチャンス。結果を残したいです」

 本番は、最高気温が30度とも予想される蒸し暑いグラウンドで開戦するだろう。ホームの利を活かしたいサンウルブズは、空いたスペースへどんどんボールを散らしたい。自軍ボール保持を主眼に置くBK陣は、「相手を疲れさせたい」と口を揃えた。

 思い描くプランを実現するには、1つひとつの接点からのスムーズな球出しも不可欠となる。ここで球出しが遅れたら、相手が落ち着いて次の守備列を整えられるからだ。そうなれば、キックやパスを繰り出すスペースは消されてしまう。

 SO田村優、CTB立川理道ゲーム主将らの攻撃を滑らかにするには、「我々のホーム(オーストラリアのシドニー)よりも暑い気候のなか、サンウルブズは速いラグビーを展開する。ファンには見応えがあるのでは」と語るフーパーらのジャッカルを、引きはがすほかない。安藤や金ら、FW陣の踏ん張りに注目が集まる。
(文:向 風見也)