千葉ジェッツは昨シーズン(第8期)の決算情報を発表した。売上高は前年比156%の14億2700万円、経常利益は236%増の8900万円と大きく伸び、天皇杯連覇にBリーグファイナル進出とオンコートで結果を出すとともに、オフコートの経営でも右肩…

千葉ジェッツは昨シーズン(第8期)の決算情報を発表した。売上高は前年比156%の14億2700万円、経常利益は236%増の8900万円と大きく伸び、天皇杯連覇にBリーグファイナル進出とオンコートで結果を出すとともに、オフコートの経営でも右肩上がりでの成長を続けている。そんな千葉の経営を司る代表取締役社長の島田慎二代表に、好調の背景にある取り組み、今後に向けた展望を聞いた。

「お客さんにお金を払ってでも会場に来たいと思ってもらう」

──今回は第8期の決算と、この夏のチーム編成について聞かせてください。まずは先日に発表された決算の数字からです。

どう見ますか。頑張りましたでしょう(笑)。

──昨シーズンの開幕前にも同じテーマで記事にしていますが、ポストシーズンの試合開催における収入や賞金を含めない前提での売上目標が10億3000万円でした。チーム成績が良ければチャンピオンシップの試合を開催することでの収入や賞金があるので13億円、との話でした。

それが14億ですから、やはり頑張りましたね(笑)。多分、リーグでもトップクラスだと思います。

──それぞれ個別に見ていきましょう。まずはチケット売上高。ホームゲームに来てくれるファンからの入場料収入です。平均観客数は4503名から5196名に伸び、チケット単価も上げて、売上は前年比122%と上向きました。

チケット売上を伸ばすには、お客さんにお金を払ってでも会場に来たいと思ってもらうこと。そのためには強くて勝つこと、魅力的なバスケットをすることもあるし、会場のエンタテインメント、演出も含めて「ジェッツの会場は面白いね」と思ってもらうことです。だからBリーグアワードで『ホスピタリティNO1クラブ』を受賞できたのはうれしかったですね。

お客さんがたくさん入っていても「混んでて嫌だな」とか「対応が悪いよね」と言われたのではダメです。そこを手を抜かずに高めようとしたのが昨シーズンです。それまでは売上至上主義みたいなところが少しあって、人が多すぎることでのクレームも実は多かったので、その改善です。

チームはアップテンポなバスケを継続します。プロジェクションマッピングなどの派手な演出は、1年目は開幕戦とかビッグマッチだけだったのをホームゲーム全試合に拡大しました。試合によってサービスが増えたり減ったりするのではなく、価格が一緒なんだから常に一定のサービスを提供することにチャレンジしました。そこはスタッフも選手もみんなで追求して、それがあった上でチケットの単価を上げたり、指定席を増やすことを行いました。

チケットの価格を上げたので、この1年で私はファンから嫌われたかもしれません。でも、それを追求したからこそ、入場者数は伸びたし売上も伸びた。なんとなく伸びたわけじゃなく、伸ばすための準備を会社としてしっかりやってきたつもりです。

第9期の挑戦「経常利益は1億円に乗せたい」

──批判を恐れてチケットの価格を安く据え置いたままでは『安かろう悪かろう』になる?

あなたはなぜジェッツが好きなんですか、ということを考えてもらいたいです。強いジェッツを応援したい、富樫(勇樹)がいるから応援したい、あの会場の雰囲気が好き、みたいなことですよね。でも強いジェッツをもっと強くするには、富樫をこのチームに残すには、あの興行を続けるには、お金が必要になります。

結局、天皇杯で優勝して歓喜の渦ができるのも、ファイナルで負けてみんなで泣いて「来年こそは」と思うのも、投資できる原資を得て、しっかり投資している結果です。地元のスポーツチームを魅力的にするのはお金がかかるということです。お金を使って結果が出せなければ私の責任ですが、いただいたお金を有効活用して結果を出す、そういうプロフェッショナルであるつもりで私は経営をしているし、スタッフにもチームにもそれは求めています。「ビジネスに徹していてつまらない」と受け止める人もいるかもしれませんが、そこから逃げては経営はできません。

──それでは、Bリーグ3年目の今期はどこに目標を置きますか?

売上で14億は超えたいです。これはチャンピオンシップには出ない、天皇杯に優勝しない、賞金ゼロでの数字です。だから昨シーズンと同じような成績を残せたとしたら、15億5000万円から16億円を狙おうと思います。ただ昨シーズンの成績はあまりにも良すぎたので、初めて前年比でマイナスになってしまうかもしれない。それでも14億には持っていきたいし、経常利益は1億円に乗せたいです。

「今のバスケ、Bリーグのままでは、もうすぐ打ち止め」

──昨年、島田代表はBリーグの副チェアマンとなりましたが、今はジェッツに戻っています。クラブとリーグ両方の目線を経験した今、3年目を迎えるBリーグの課題をどう見ていますか?

まだまだ各クラブが弱いですね。伸びしろはあるんだけど、伸びしろのままになっているところがすごく多い気がします。かつてのbjリーグは『小さな政府』じゃないですけど組織が小さく、各クラブが頑張ってね、という感じでした。Bリーグは『大きな政府』で各クラブを引っ張っていくんですが、やっぱり日本全国に点在するクラブがその場その場で盛り上がる、元気なチームがたくさんあることがリーグの価値になると思っています。それなくしてリーグの活力は生まれません。

今はまだスポンサーもメディアも期待値先行で勝負していくしかないわけですが、リーグとしては「この人たちは野球やサッカーに続いてすごいことをやってくれそうだ」と思わせないといけない。そのためにリーグの価値を上げていかなきゃいけない。そのための手立てをしっかり取っているか、という話はあると思います。

各クラブもまだ力を発揮できないまま、どう発揮すればいいかも分からない。マネジメントとか経営とか、組織を強くして世の中に訴えかけていくことを分からないままガチャガチャやっているところがある気がする。それでは大きく飛躍できません。裏を返せば「まだまだ力を発揮できる可能性を秘めている」ということです。

──その中で千葉が「やれている」理由はどんなところにありますか?

明確な方針があり、「絶対やるぞ」という迫力があって、それで実際にやっています。社員に対しても挨拶からすべて徹底してメリハリをつけて組織を作っているわけです。だから、実はジェッツは他のクラブより優秀な人材が多いわけでも、恵まれた環境にあるわけでもないと思っています。組織としての戦い方がはっきりしているんです。

その中でやっぱり、私はさっき言った「全国各地に元気なクラブがあること」がBリーグの力になると考えているし、ジェッツが一人勝ちしたいとも思っていません。むしろジェッツがこのまま発展するには、Bリーグ全体の発展が必要です。それがなくて、今のバスケ、Bリーグのままでは、もうすぐ打ち止めが来てしまいますよ。だからジェッツが飛び抜けることで「やればできる」を示し、島田塾で「どうやればできるか」を示していきたいんです。

まだまだBリーグが頭打ちになるには早いです。だからジェッツもこの2年ぐらいで売上20億円を狙おうと思っています。「すごい」と言われたいんじゃなく、「すごいけど、ジェッツにできるなら俺たちにもできるよな」って思ってほしい。そうやってもっともっと強くなって、Bリーグの盛り上げに貢献したいと思っています。

千葉ジェッツ、勝利のための戦略(後編)「ジェッツ史上最強のチームで挑みます」