気温35度というニューヨークでは異例な残暑の中、錦織圭が、「久しぶりにきついな」と感じながらもUSオープンのベスト8をつかみ取った。 グランドスラム今季最終戦・USオープン4回戦で、第21シードの錦織(ATPランキング19位、8月27…

 気温35度というニューヨークでは異例な残暑の中、錦織圭が、「久しぶりにきついな」と感じながらもUSオープンのベスト8をつかみ取った。

 グランドスラム今季最終戦・USオープン4回戦で、第21シードの錦織(ATPランキング19位、8月27日づけ/以下同)は、フィリップ・コールシュライバー(34位、ドイツ)を、6-3、6-2、7-5で破り、2年ぶり3度目の準々決勝進出を決めた。



気温35度のなかで最高のプレーで勝った錦織圭

 試合前に、元プロテニスプレーヤーの松岡修造氏は、「今日は絶対勝たないといけない。うまい下手というよりも勝たないといけない相手だと思う」と話していたが、錦織はトップスピンのよくかかったグランドストロークを深く入れたり、コースを変えて打ち分けたり、コールシュライバーを走らせて多くのミスを誘った。

「今日の相手(コールシュライバー)に対して、バックのダウンザラインは使わないといけないと意識していた。使えるところでは、なるべく打っていこうと思ってプレーしていました」

 こう語った錦織が、第1セットも第2セットも、そして第3セット5-4の第9ゲームまで試合を完全に支配していた。

 だが、うだるような暑さの影響で、もうろうとした錦織がサービングフォアザマッチの第10ゲームを、自らのミスでコールシュライバーに献上してしまう。5-5になった場面からは、「がむしゃらに次のポイントだけを考えてプレーした」と、気力を振り絞り、第11ゲームで勝負を決めるブレークに成功して勝利に結びつけた。

「圭は、僕のセカンドサーブに対して、とてもアグレッシブにリターンしてきた。すべてにおいて、僕のプレーより安定していたし、より攻撃的だった」と振り返ったコールシュライバーは、39本のミスを犯してほとんどお手上げ状態だった。

 一方、錦織はミスを18本に抑え、フォアハンドの12本のウィナーを含む29本のウィナーを決め、試合終盤も暑さに少し邪魔されたものの、勝つべき試合でしっかり勝利をつかみ取った。

「たくさん(コートの中へ)ステップインして、アグレッシブにプレーしようとしました。それが自分の求めたプレーでした。3セットで終えることができてよかったです」

 こう振り返った錦織は、準々決勝で、第7シードのマリン・チリッチ(7位、クロアチア)と対戦する。対戦成績は、錦織の8勝6敗だが、USオープンに限ると3度の対戦で、錦織の1勝2敗。特に2014年大会の決勝で、チリッチに敗れたことは記憶に新しい。

「(圭は)バックコートでとても安定したプレーをする。信じられないようなバックハンドがあるし、素晴らしい動きをするし、信じられないくらい速い。また彼と対戦するのは素晴らしいことだし、コートで彼とのプレーを楽しみたい」

 こう話すチリッチは、錦織との再戦を心待ちにしている。そして錦織もまた、ジュニア時代からの盟友であるチリッチを最大限にリスペクトしている。

「マリンとプレーするのは、自分にとって大きなチャレンジです。素晴らしいサーブを打ちますし、ここ数年はアグレッシブにプレーしていて、ネットにも出てくる」

 男子ベスト8の顔ぶれが揃うなか、第21シードの錦織は2番目にランキングが低い選手となり、今回は下剋上を起していく立場となっている。

 松岡氏は、「(錦織の)テニスはすごくよくなっていますし、メンタルの強さも戻って来ている」と前置きしたうえで、錦織の悲願であるグランドスラム初制覇に向けて、強い覚悟で準々決勝以降の戦いに臨むことを願っている。

「周りが強くなってきている中、ラストチャンスとは言わないですけど、今後圭が、本当の意味で、世界のトップを狙うのを考える時、(今回のUSオープンを)ラストチャンスのつもりで戦ってほしい」

 今年の12月に29歳になる錦織の年齢も踏まえて、松岡氏は激を飛ばしているのだが、それでも錦織は、期待し過ぎずにあくまで自分のスタンスを貫く姿勢だ。

「あんまり変わらないです。本当に1試合ずつなので。今、自信もついてきて、どの試合も内容がよくなってきている。もちろん期待は増えますけど、今みたいにしっかり1試合、1ポイントずつ戦えば、上に行くチャンスも出てくると思うので、できればこの調子でいきたいですね」

 おそらくチリッチとの準々決勝は、錦織が今回のUSオープンで優勝戦線に残るための大きなヤマになるだろう。そして、錦織自身にグランドスラム優勝を狙える力があるのかどうか見極める材料となり得るような極めて重要な戦いになる。