9月2日に全日程を終了したアジア大会で、今大会もさまざまな競技で日本人選手が活躍した。全競技の総メダル数は、2014年の韓国・仁川大会を超える205個。そのうち18個は陸上競技で獲得したメダルだが、なかでも注目されたのは、東京五輪での活躍に期待がかかる男子短距離だった。



4×100mリレーで、圧倒的な強さで金メダルを獲得した

 20年ぶりの優勝を目指していた男子4×100mリレーでは、目標にしていた37秒台こそ出なかったものの、38秒16で圧勝と、持てる力をしっかり出した。

 前回大会を37秒99の大会記録で制していた中国は、蘇炳添が100mでアジア記録の9秒91を今年2度出し、200mが専門だった謝震業も6月に100mで9秒97と9秒98をマークするなど進化を見せていた。

 だが、10秒00の自己ベストを持っていた張培萌が昨シーズン限りで引退。3番手以下の力が落ちている状況で、加えて、競技開始直前に謝が足のくるぶしを痛めて欠場となり、主力不在だった。

 レースは、1走のスペシャリストである山縣亮太(セイコー)の走りでほぼ決まった。今大会の個人種目100mは3位で、自身2度目の10秒00を出していた山縣は中国を大きく引き離し、ひとつ外側のレーンのチャイニーズ・タイペイに追いつくほどのすばらしい走りだった。

 2走の多田修平(関学大)は、200m2位のヤン・チュンハン(チャイニーズ・タイペイ)と並走する形になったが、そのまま流れを維持。続く3走の桐生祥秀(日本生命)は「リレーだけのために来たので、絶対に金メダルを獲りたかった」と、2位以下を突き放す走りで4走のケンブリッジ飛鳥(ナイキ)にバトンを渡し、危なげなく勝利を収めた。

 20年ぶりの優勝を果たした日本にとって、この勝利は東京五輪へ向けての大きな収穫となった。このレースは現時点での最大限の力ではなく、余力を残しての勝利であり、1走の山縣はさらなる進化を見せ、桐生も3走のスペシャリストとしてその力を存分に発揮した。

 個人戦では、山縣がシーズン序盤のモヤモヤを吹き払う走りで銅メダルという結果を出したのに加え、今季急成長の小池が、200mで末續慎吾以来12年ぶりの金メダルを獲得したことも収穫だろう。

 日本選手権の200mでは飯塚に次ぐ2位だった小池だが、その後、ヨーロッパ遠征で100m自己タイ記録の10秒17を出すと、200mでは自己新の20秒29をマーク。その力が本物であることを示していた。

 そしてアジア大会本番、「外国の大会は気持ちが盛り上がってくるから好きだし、大きな大会にピークを合わせるのは自信がある」と話していた小池は、「予選はセーブしすぎたので、刺激を入れるために前半から行った」と、準決勝で積極的なレースを見せ、トップタイムで決勝進出を果たした。

 決勝は少し走りにくい3レーンながら、「カーブを走るのは得意」という持ち味を発揮した小池。前半から積極的に突っ込んで3位以下を大きく突き放し、隣のレーンのヤン・チュンハンと肩を並べるように直線に入ると、競り合いながら最後は互いに体を投げ出すようにゴール。20秒23の同記録ながら0秒002差で小池が先着した。

 小池は、同学年の桐生を追いかけながら苦戦を続けていたが、昨年夏から走り幅跳び元日本記録保持者である臼井淳一氏の指導を受けて急成長。今大会の結果は、東京五輪に向けて4×100mのメンバー入りへ絶好のアピール材料になったはずだ。この勝利は、今回の200mで6位にとどまった飯塚を刺激するだけではなく、多田やケンブリッジにも危機感を持たせるはずだ。

 また、アジア大会に出場しなかったサニブラウン・ハキーム(フロリダ大)や、藤光謙司(ゼンリン)も存在感を見せており、そこに小池が加わってきたことで、メンバー争いはさらに激しさを増し、それが個人のレベルアップにもつながる。

 100mを専門にする桐生や山縣は、これから9秒台を当たり前のものとして、さらなる記録更新を目指しているが、ケンブリッジや多田が黙ってそれを見ているはずはない。また、200mの第一人者を自負する飯塚が、以前から話していた100mへの挑戦を本格化させる可能性もある。そんな状況になれば、200mを専門にする小池や飯塚にも100m9秒台の可能性が広がってくる。

 リオ五輪銀メダルの力を見せつけた4×100mリレーの金メダルと、小池の200mでの金メダルという今回のアジア大会の結果によって、東京五輪へ向けて日本男子短距離はさらに活性化したといえる。