神宮球場で行なわれた高校日本代表と大学日本代表の壮行試合。スタンドはものすごい熱気だった。前売りチケットは完売し、…
神宮球場で行なわれた高校日本代表と大学日本代表の壮行試合。スタンドはものすごい熱気だった。前売りチケットは完売し、外野スタンドも隙間がないほど、観客で埋め尽くされていた。
試合は、4回まで大学生が6-0でリードと一方的な展開。しかし、そこから高校生が反撃を見せ、終わってみれば7-3。最後まで試合が壊れることはなかった。

第2打席でセンターオーバーの三塁打を放った根尾昂
ヒットの数は大学生の11本に対して、高校生は7本。数でこそ大学生に軍配が上がったが、内容的にはまったくの互角だった。140キロ後半は当たり前の右腕4人に、絶妙な緩急で攻める左腕2人の大学生投手を相手にしてこの結果なら、十分に称えられるべきだろう。
高校生の野手で光ったのは、5番に入った根尾昂(大阪桐蔭)だった。ドラフト1位候補の松本航(日体大)の147キロをライトポール際に放り込んだ小園海斗(報徳学園)のとっさのバットコントロールにも目を見張ったが、根尾の4打席にはそれぞれに魅力が詰まっていた。
試合開始から、高校生のメンバーたちが大学先発の左腕・田中誠也(立教大)のカーブ、スライダーにタイミングを崩されているのを見て、根尾はベンチで、ネクストバッターズサークルで学習していた。
1打席目、真ん中やや外寄りのストレートをレフト前に弾き返すと、2打席目はセンターの頭をライナーで超える三塁打。そのあとの2打席は三振に終わったが、決して当てにいかず、しっかりトップをつくってからのフルスイング。打者としても”真っ向勝負”の姿勢が、そのまま根尾の将来性に映って見えた。
そしてこの試合、豪快なフルスイングで根尾以上の迫力があったのが辰己涼介(立命館大)だ。本当にバットで背中を叩いてしまいそうなぐらいの強烈なスイング。全身が自在に回転できる柔軟性があり、しかもそういうタイプにありがちな線の細さがない。
さらに、プロに混じっても間違いなくトップクラスにランクインする快足と強肩が、辰己にはある。
以前、ある試合でセンターの定位置から辰己が地面に叩きつけるような角度で放たれたボールがそのまま真っすぐに伸び、ミットを差し出したキャッチャーの手首に当たったことがあった。低く長く伸びる軌道は、本物の強肩の証。
この試合でライトを守っていた根尾と、センターを守っていた辰己のふたりを見てふと思った。
このふたりを、スカウトたちはどっちを評価するのだろうと……。
ある球団のスカウト部長は「僕の立場からは、なかなかはっきりしたことは言いにくいけど……」と前置きし、こう語ってくれた。
「肩の強さはいい勝負。足の速さは辰己が2枚上。でも、野球センスはわずかに根尾が上回っている。とくに打ちにいくときのリズム、間の取り方……こういうのは教えてもできるものではないですから」
もうひとり、根尾を評価するセ・リーグ球団のスカウトはこう言い切る。
「根尾に決まっているじゃないですか! 野球の取り組み方が違います。今日の”お祭り”みたいな試合でも雰囲気に流されず、一生懸命野球ができる。2打席目のセンターオーバーなんて、金属バットと同じ打球だった。すごく野球が上手になっています」
このスカウトは、辰己に”緩み”を感じたと言う。
「高校生の攻撃のときに、センター前ヒットで一塁ランナーが三塁を狙い、辰己はファンブルしたでしょ。プロはああいう場面で確実に刺せないと、どんどん抜かれていくんです。それにファンブルしたあと、照れたような態度をしていたけど、あれもよくない。たしかに、並外れた身体能力の持ち主ですけど、プロは身体能力を競うスポーツじゃない。ここ一番での精度と技術の世界ですから」
一方で、辰己を推す声もある。
「足が違います。スピードも抜群だし、走っているフォームがいい。大阪桐蔭の藤原(恭大)も速いけど、足がうしろに流れる走り方で盗塁はどうなのかなって思うけど、辰己はバランスがいいし、膝が前に出る走り方だからスムーズにスライディングできる。盗塁王のタイトルも期待できますよ」
また、バッティングについても辰己の方が上だと言う。
「根尾は引っ張れないでしょ。ポイントが近いタイプ。あれだとプロのストレートに差し込まれる。かといって『ポイントを前に』と言うと泳いでしまう。そのあたりが心配ですね。辰己は、あのものすごいスイングスピードで多少詰まっても解決してしまう。オリックスの吉田正尚タイプ。間違いなくプロ向きですね」
そしてこう言い切った。
「プロは身体能力です!」
見る人、球団によって、これほど評価が分かれるのかと思ったが、これこそがドラフトの面白さであり、難しさでもある。はたして10月25日のドラフトでどんな評価が下されるのだろうか。