レスター・シティの岡崎慎司が、8月25日に行なわれたプレミアリーグ第3節サウサンプトン戦で今シーズン初出場を果たした。 1-1の同点で迎えた88分、FWデマライ・グレイとの交代でピッチに入ると、岡崎は4-2-3-1のトップ下の位置につ…
レスター・シティの岡崎慎司が、8月25日に行なわれたプレミアリーグ第3節サウサンプトン戦で今シーズン初出場を果たした。
1-1の同点で迎えた88分、FWデマライ・グレイとの交代でピッチに入ると、岡崎は4-2-3-1のトップ下の位置についた。岡崎がボールになかなか触れない展開が続いたが、90+2分にDFハリー・マグワイアが決勝ゴール。レスターが2-1で逆転勝利を飾った。岡崎は4分のアディショナルタイムと合わせ、約6分間プレーした。
プレミアリーグ第3節でようやく今季初出場を果たした岡崎慎司
このサウサンプトン戦は、岡崎にとって久しぶりの公式戦出場だった。4月中旬の練習で右足首を痛めると、その後のリーグ戦5試合をすべて欠場。ロシアW杯出場も危ぶまれたが、西野朗監督が就任した日本代表の最終メンバーに選ばれ、代表合宿で別調整しながら本大会への準備を進めた。
しかしこの間、痛めた足とは逆の左足も負傷。満身創痍でW杯に臨んだが、先発出場したグループリーグ第3戦のポーランド戦でふたたび右足首を痛めた。レスター再合流時もケガは完治しておらず、黙々とリハビリに励んできた。
そして、サウサンプトン戦で、ついに実戦復帰。6月28日のポーランド戦以来、実に2ヵ月ぶりの公式戦出場となった。自身のコンディションについて、岡崎は次のように説明する。
「長い間、痛みながらやっていたんで、100%でなかなかできないところもあったんですけど、今はもう徐々によくなってきているし、そのストレスも徐々になくなってきている。まあ、これをやりながら、フィットさせていくというか」
その一方で、今オフを経てレスターでは、選手の顔ぶれが大きく様変わりした。リヤド・マフレズ(現マンチェスター・シティ)やレオナルド・ウジョア(現パチューカ)など古株が退団し、代わりにリカルド・ペレイラ(前ポルト)やジョニー・エバンス(前WBA)といった新戦力が加わった。そのなかでもとくに注目されているのが、イングランド2部リーグ(フットボールリーグ・チャンピオンシップ)のノリッジから加入したイングランドU-21代表MFのジェームズ・マディソンである。
足もとの技術に優れ、パスセンスと決定力も秀逸。昨シーズンはイングランド2部リーグでクラブ最多となる14ゴールを挙げた。クロード・ピュエル監督の評価も高く、プレミアリーグ第3節までの全試合でトップ下として先発出場している。クラブが期待を寄せているのは、21歳のマディソンに10番の背番号を与えていることでもうかがえる。
岡崎も「監督は昨シーズンからやっていることを継続している。誰が中心選手というより、まだ模索している段階」と前置きしながらも、「マディソンは王様的なスタイルなので、彼がチームの中心になる。マディソンのところにボールが全部集まるので、それを中心としたサッカーに変わる」と、マディソン加入後のチームの変化を肌で感じ取っている。
当然、これまで4-2-3-1のトップ下を主戦場にしてきた岡崎にとっては強力なライバルが現れたことになるが、日本代表FWは「今年1年は、ゆっくりやっていきたい」と打ち明ける。その言葉の真意を次のように説明した。
「焦りがないわけではないけど、去年とか一昨年みたいに『試合に出たい、試合に出たい』という気持ちよりは、自分の感覚を大事にしたい。自分が100%の状態でプレーできれば、必ず試合に出られるし、出たら結果を出せるという気持ちでいる。
そういう意味では、まずは身体を完全フィットさせて、ゆっくり、ゆっくりやっていきたい。そんなに時間があるわけではないですけど……必ずチャンスは来るので。その時のために今、身体を完全にいいコンディションにしたい」
こうした岡崎の考えの裏には、4年後のW杯がある。目指すは2022年のカタールW杯だ。
「4年後のW杯も見据えている?」
記者団からそう質問が飛ぶと、岡崎は「そうですね」と答えて言葉を続けた。
「今年は、そのための1年にしたい。試合に出たいからといって、焦って試合に出る、練習するではなくて、今後は自分の足と話し合っていかないといけない。だから、重要な1年。この1年でどう自分が変われるかで、次の3年がW杯にどのように向いていくか。そこまで考えての1年にしたい」
そう思うようになった転機は、6月に行なわれたロシアW杯だったという。
4年間の集大成になるはずのW杯で、ケガを抱えたままロシアの地を踏んだ岡崎は、100%の力を出し切れなかった。万全のコンディションで、W杯でプレーしたい──。そんな強い思いが、焦る気持ちを抑えて岡崎を突き動かしている。
「W杯に行って、こういうことを言うのは、もしかしたら行っていない人に申し訳ないかもしれないが、やっぱりW杯は苦しかった。自分自身が苦しかった。なぜかというと、4年間、W杯のためにやってきたのに、100%を出せないというのをわかったうえで行っていたので。
それでも、必要としてくれた西野さんのため、そして日本代表のために『やれることがある』と思ったから、自分も行きたかった。でも、こういう思いは、もうしたくない。一度だけ万全の状態でサッカーがしたい。それが一番ですね」
10番を背負うマディソンが躍動する姿に、岡崎は「焦りがないわけではない」と正直な心情を吐露する。それでも今は、4年後を見据えて「ゆっくりやる」と言い切る。
気がつけば、岡崎も32歳。「永遠のサッカー小僧」と呼ばれているが、20代のころに比べると身体の無理が効かなくなってきた。身体のケアはこれまで以上に必要になるし、食事の摂り方にも注意するようになったという。
しかし、年を重ねるごとに経験を積み重ね、心の充実度は増してきた。
「余裕があるように見えるけど?」
そう質問が飛ぶと、岡崎は「年齢ですね」と笑い、顔をしわくちゃにした。
焦らず、ゆっくりと──。岡崎にとって、プレミアリーグ挑戦の4季目はこうして幕を明けた。