8月23日、北海道日本ハムファイターズの宮台康平(23歳)が1軍デビューを飾った。福岡ソフトバンクホークスの強力打…

 8月23日、北海道日本ハムファイターズの宮台康平(23歳)が1軍デビューを飾った。福岡ソフトバンクホークスの強力打線を相手に4回3分の2を投げて2失点。6四死球と制球に課題を残したが、今後の飛躍を期待させる投球を披露した。

 宮台といえば「東京大学野球部のエース」として記憶しているファンも多いだろう。4年時に出場した昨年の東京六大学野球秋季リーグでは、15年ぶりとなるチームの勝ち点獲得に貢献し、同年のドラフト7巡目でファイターズから指名を受けた。

 同期入団の清宮幸太郎とともにファンの注目を集めるルーキーは、ここまでどんな進化を遂げてきたのか。1軍に昇格する直前に行なったインタビューで、宮台がプロ1年目の戦いを語ってくれた。



1軍初先発で粘投した日本ハムの宮台

――プロ入りしてから半年が経ちましたが、ここまでの手応えは?

「いい状態で投げられれば、ある程度通用することがわかったので自信になっています。手応えはありますが、長いシーズンを通して投げるのが初めての経験なので、もうちょっと体力面でがんばらないといけないですね」

──ファームでは3勝を挙げましたが、初勝利を手にしたのは4月30日のイースタン・リーグでの試合でしたね。

「その試合の前から徐々にイニング数を増やしてもらって、少しずつ状態が上がっていました。自分でも納得できる投球ができたと思います」

──しかも、地元の平塚球場での勝利でした。

「うれしかったですね。思った以上に声援が聞こえたので力になりました。その試合だけじゃなく、(ファームの本拠地である)鎌ヶ谷スタジアムでもたくさんの声援をもらえますし、先日の北海道遠征では地元のファンの方々が温かく迎えてくれた。あらためて、ファイターズが多くの人に愛されている球団であることを実感しました」

――今年1月に鎌ヶ谷で行なわれた新人合同自主トレでも、エンゼルスの大谷翔平選手が自主トレを行なっていたこともあって、多くのファンが詰めかけましたね。

「清宮(幸太郎)もいましたし、ファンの多さに圧倒されましたね。それまで、練習をあんなに多くの人に見られることがなかったのでプレッシャーになりましたが、『プロは人に見られる仕事なんだ』という自覚を持つことができました」

──学生時代との違いを感じることは多いですか?

「たくさんあります。たとえば、学生時代は野球で結果が悪くても、勉強をすることで自分を肯定することができたんです。悪い言い方をすればそれが僕なりの”逃げ道”だったんですが、プロ野球ではチームの一員であることが唯一のアイデンティティ。この厳しい世界で結果を残してきた方たちを本当に尊敬します」

──ちなみに、もしファイターズに指名されていなかったらどんな道に進んでいたか、と考えたことはありますか?

「考えたことはなかったですけど、たぶん野球は辞めていたと思います。就活して、サラリーマンになっていたのかな。大学のひとつ上の先輩で、バッテリーを組んでいた喜入(友浩)さんがアナウンサーになる目標を実現させたように、大学生は自分の将来のビジョンを描く時期があると思うんです。でも僕は、野球でプロになること以外にやりたいことがなかった。『ドラフトで声がかからなかったら、そこであらためて考えよう』と思っていましたが、ファイターズに指名していただけたので『チャレンジしてみよう』となりました」

──実際にプロの世界に入ってみて、宮台選手が感じた”すごさ”は?

「やはり、甘く入ったボールを見逃さないことです。楽天の(ゼローズ)ウィーラー選手が2軍にいたときに対戦したんですが、スイングが強くてすごいバッターだなと思いました。そんな1軍で活躍する選手を抑えるため、より丁寧に投げることを心がけるようにしています。

 あとは、先ほども言ったようにシーズン途中で息切れしない”タフさ”が必要だと感じています。大学生のときは春と秋のリーグに合わせて調整を行なっていましたが、プロでは毎週登板があるので状態を落とせない。また、試合の結果に左右されないメンタル面の強化も欠かせません。僕はまだ気持ちにムラがあるので、試合ごとに一喜一憂しないように戦っていきたいです」

──練習や登板がないオフはどのように過ごしていますか?

「友達と会ったり買い物をしたり、温泉が好きなので近くのスーパー銭湯に行ったりしてリラックスしています。あとは、同期入団のピッチャーの鈴木(遼太郎)や田中(瑛斗)とよく食事に行きます。先輩だと、やはりピッチャーの吉田(侑樹)さんとご一緒することが多いですね。関西出身の方なので話がとても面白いんです(笑)」

──食事をしながらアドバイスをもらうことも?

「いえ、オフはあくまで”野球から離れて切り替える時間”として過ごすようにしています。練習ではたまに話を聞きにいくこともありますが、基本はグラウンドで先輩方の投球を見て、『こうやって投げているんだ』『どういう意識で投げているんだろう?』という発見を自分なりに解釈し、『自分だったらこうやる』といったように落とし込んでいます。

 自分なりに今の状況を整理しながら、そこからどうやっていい方向に持っていくかを考えているので、この”気づき”はとても大事にしています。それがなければ、毎日が単調になってしまう。練習が惰性にならないように、自分が成長するために、常にアンテナを張り続けていきたいです」

──宮台選手ともなると、科学的なトレーニングなどを独自に研究して取り入れているのでは、とも思ったのですが。

「今まではやってこなかったですね。これからはそういったことも考えていったほうがいいかもしれません。でも、今は”お手本”になる選手たちが周りにたくさんいるので、それを参考にしていきたいです。頭ではわかっても、イメージ通りに体が動くものではないですけどね。突っ込んじゃいけないとか、下半身始動で投げるとか、それを高いレベルで再現するのは本当に難しい。そこは反復練習というか、数をこなすことでしか身につかないのかなと思います」

──投球面でのこだわりはありますか?

「これは大学のころから意識していたことですが、どんな強打者相手にも立ち向かっていく気持ちです。球種としては、ピッチングの基本となる強いストレートを投げること。そのためのフォームと強い体を、登板までの時間をうまく使って作っていこうと思っています」

──直近の2、3試合はいい投球が続いていましたが、荒木大輔2軍監督をはじめ、首脳陣の方からアドバイスはありましたか?

「よかったところと悪かったところを登板ごとに指摘してもらっています。たとえば、『立ち上がりはテンポよくいけたけど、4回5回から荒れてきてフォアボールが増えたから早く立て直せるようにしよう』といったように。先発としては6回、7回くらいまでいってほしいとも言われていますし、そこが課題なのは自分自身でもよくわかっています。投げることで課題はたくさん見つかるので、それをひとつずつクリアしていきたいです」

──これからの夢はありますか?

「目標になりますが、今季中に1軍に上がることです。同期の清宮が先に1軍でプレーしたことは励みになっています。その先の夢は、実際に投げてから見つけていきたいと思います」

「今季中に」という目標はすでに達成された。これから、宮台の新たな挑戦が始まる。