2018年のスーパーフォーミュラも、いよいよ後半戦に突入した。シリーズ第5戦は栃木県の「ツインリンクもてぎ」で行なわれ、頂点に立ったのは石浦宏明(JMS P.MU/CERUMO・INGING)。昨年のチャンピオンがようやく今季初優勝を…

 2018年のスーパーフォーミュラも、いよいよ後半戦に突入した。シリーズ第5戦は栃木県の「ツインリンクもてぎ」で行なわれ、頂点に立ったのは石浦宏明(JMS P.MU/CERUMO・INGING)。昨年のチャンピオンがようやく今季初優勝を遂げた。



安定したドライビングで今季初優勝を遂げた石浦宏明

 石浦がドライバーズチャンピオンを獲得したのは2015年と2017年。いずれの2シーズンも序盤からランキングをリードする展開で、シリーズ終盤で追い上げる戦い方ではなかった。だが今年は、状況がまったく違っている。

 第2戦・オートポリスは悪天候で中止となり、第3戦・SUGOはレース展開に恵まれずノーポイントに終わった。前回の第4戦・富士では2位表彰台を獲得したものの、この時点でトップから8ポイント差のランキング3位。これまでとは違い、「追いかける立場」としてシーズン後半を迎えた。

「普段、ランキングのことはあまり気にしないんですが、今回は(サーキットに)来る前からポイントのことを気にしていました。今年は(第2戦が中止となったために)1レース少ないので、1戦1戦の重みが違う。チャンピオン獲得のことを考えて逆算すると、ここが正念場となる」

 レース前にそう語った石浦は、予選から気迫を見せる。Q1、Q2ともに野尻智紀と松下信治のDOCOMO TEAM DANDELION RACING勢に先行を許すが、最終のQ3で逆転に成功。今季初のポールポジションを勝ち取った。

 これでまず石浦は、ポールポジションボーナスの1ポイントを獲得。ランキングトップの山本尚貴(TEAM MUGEN/予選7位)に一歩近づいた。しかし予選後の石浦は、「重要なのは明日の決勝で勝つこと」と、ほとんど笑顔を見せることはなかった。

 そして8月19日の決勝レース。朝のフリー走行で石浦は、入念にスタート練習を行なっていた。ツインリンクもてぎは追い抜きが難しいコースとして知られており、予選のポジションに加え、スタート直後の順位でレースの行方がほぼ決まってしまう。決勝でのレースペースに自信のあった石浦は、スタートでトップを死守できれば勝てるチャンスが大きくなると考え、準備を整えていた。

 その準備は功を奏し、石浦は好ダッシュを決めてトップで1コーナーを通過。だが、直後に予期せぬ展開が発生する。3番手スタートの松下信治(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)が5コーナーでいきなり勝負に出て、石浦は2番手となってしまったのだ。

「スタートはうまく決まりましたが、オーバーテイクボタンを押していたので、それが切れるタイミングで松下選手にボタンを使われてしまった。5コーナーでイン側を少し開けてしまった自分の判断ミス」

 レース早々にトップを奪われた石浦は、松下を追う展開となる。石浦にとってこの状況は、前回の富士ラウンドと同じだ。そのときの経験から、今回はタイヤを労わりながらチャンスをうかがった。

「何度か仕掛けようと近づいてみましたが、タイヤの温度が一気に上がる(性能が落ちそうになる)のを感じたので、タイヤを守って後半で勝負する作戦に切り替えました」

 27周目に松下がピットインするが、石浦はコース上にとどまって終盤にピットストップを行なう戦略をとる。前回の富士ではニック・キャシディ(KONDO RACING)相手に同じ作戦をとったが、逆転は叶わなかった。しかし今回は、石浦自身のペースが安定していたのに対し、ピットアウトした松下は遅いマシンに引っかかってしまいタイムロス。石浦は逆転できるだけのタイム差を築いて41周目にピットインし、トップでコース復帰を果たした。

 レース終盤、シフトダウンがうまくできないトラブルに見舞われ、不安を抱えながらの走行となった。だが、石浦は冷静にトップの座を守り切り、今季初優勝となるチェッカーフラッグを受けた。

「サーキットによって各チームの得意・不得意がありますが、チャンピオン争いを考えると、僕たちはもてぎで優勝しなければならなかったし、(次戦の)岡山でもリードしないといけません。なので、絶対にここで流れを作らなければいけないと思っていました」

 この優勝によって石浦は合計24ポイントとしてランキング3位となり、トップ(キャシディ/27ポイント)から3ポイント差に迫った(前回まで1位の山本尚貴は石浦と同じ24ポイントで2位)。

 次戦の岡山国際サーキットは、石浦が得意としているコースのひとつだけに、ここでも好成績を収めることができれば、自身3度目のチャンピオン獲得に大きく近づくことになる。

 正念場となった第5戦は、王者・石浦が逆転チャンピオンに向けて狼煙を上げた1戦となった。