全長2.5マイルの高速トライアングル・オーバル、アメリカ東部ペンシルベニア州のポコノ・レースウェイで行なわれたインディカー・シリーズ第14戦は、アレクサンダー・ロッシ(アンドレッティ・オートスポート)が予選3位からシーズン3勝目を飾っ…

 全長2.5マイルの高速トライアングル・オーバル、アメリカ東部ペンシルベニア州のポコノ・レースウェイで行なわれたインディカー・シリーズ第14戦は、アレクサンダー・ロッシ(アンドレッティ・オートスポート)が予選3位からシーズン3勝目を飾った。

 第13戦ミッドオハイオに続く2連勝。シーズン終盤にきて、26歳のアメリカ人ドライバーが一気に実力を伸ばしている。これでロッシは、過去4回のタイトル獲得経験を誇る現ポイントリーダーのスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)、昨年のチャンピオン、ジョセフ・ニューガーデン(チーム・ペンスキー)と、勝ち星数で並んだ。ポイントは2位で、ディクソンとの差を46点から29点に縮めた。残るは3レースだ。



ポコノでクラッシュに巻き込まれる不運に見舞われた佐藤琢磨

 予選最速はウィル・パワー(チーム・ペンスキー)だった。2年連続でポコノを制しているパワーは、インディとポコノというふたつの500マイルレースを制する可能性大と見られていた。しかし、レースではロッシの速さが一段上だった。

 パワーは、レースが進むに連れて変化するコンディションに合わせてマシンを調整し、最後に笑う展開を目指していた。しかし、周回を重ねてもロッシの勢いは衰えず、逆にパワーは狙ったスピードアップを実現できなかった。

 ロッシがバックマーカーに引っかかってペースを落とし、差が縮まるシーンは何度もあった。だがそれをパスするか、前の車がピットへと消えると、その差はまた広がった。パワーはロッシ以上にバックマーカーのパスに時間を取られていた。トラフィック内でのマシンのハンドリングでも、先頭を走っていても、ロッシのほうが明らかに速かった。

 パワー陣営は勝負をあきらめず、ピットタイミングをずらしてフルコースコーションが味方してくれることを狙う作戦に切り替えた。しかし、奇跡がそんなに都合よく起こることはなく、ロッシ&アンドレッティが圧勝。パワー&ペンスキーは完敗を喫した。

 今シーズンに入って急成長を遂げているロッシ。今や彼は、どのレースでも優勝候補に挙げられている。スーパースピードウェイ、ショートオーバル、ロードコースと、コースの種類を選ばない。経験豊富で今もトップレベルの速さを持つチームメイト、ライアン・ハンター-レイを、予選では14戦中9戦で上回っている。レースでもしぶとい。

 この勢いで、ロッシは初タイトルまで突っ走る可能性もある。ただし、ライバルは極めて強力だ。

 もっとも手ごわいのはディクソンだ。ダブルポイントとなる最終戦ソノマでは過去3勝を挙げている。レースを取りこぼさないところがその最大の特長だ。ポコノでも予選は失敗して13位だったが、レースは3位で表彰台に上がってみせた。

 また、現在ポイント3位のニューガーデンは、次戦ゲートウェイの昨年のウィナー。パワーともども、ポートランド、ソノマのラスト2レースでも速さを見せる可能性が高い。

 ロッシは「今日の僕らはレースを通して最速だった。アンドレッティ・オートスポートというチームがすばらしいマシンに仕上げてくれた。残る3戦で2回優勝してチャンピオンになれたらうれしい」と話した。

 これに対してポイントリーダーのディクソンは、「ここへきてロッシが2連勝し、ポイント差を縮めてきた。彼は実力を伸ばし、アンドレッティ・オートスポート最速となってもいる。残り3レースは、最初のプラクティスからハイレベルのマシンを用意し、より強いマシンを作り上げてレースを戦い、タイトルを獲得するべく全力を尽くす」と語っている。

 佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)は、ポコノでまたしてもリタイアを喫した。

 事前テストがなく、最初のプラクティスの走り出しはマシンのハンドリングが非常に悪く、それを修正する必要があった。そんな不利な状況をはねのけての予選10位は悪くない結果だった。

 今季から移籍したチームだが、エンジニアたちの信頼を勝ちとり、今や完全に溶け込んでいる。チームメイトのグレアム・レイホールとの関係も上々で、シーズンの後半戦に入ってからは、レースに持ち込んだセッティングが悪いときでも、レースまでに何とか競争力のあるレベルまで巻き返すことができるようになってきた。琢磨陣営は今回も、予選からさらにセッティングに変更を施し、優勝、あるいはそれに近い成績を目指していた。

 琢磨はスタート直後にセバスチャン・ブルデー(デイル・コイン・レーシング・ウィズ・ヴァッサー・サリヴァン)をパスした。ところがそのポジションは、不運にもアクシデントの被害をもろに受ける位置だった。

 ハンター-レイとロバート・ウィッケンズ(シュミット・ピーターソン・モータースポーツ)のクラッシュで飛び散ったオイルを浴びた琢磨のマシンはコントロール不能に陥ると、スピンしたジェームズ・ヒンチクリフ(シュミット・ピーターソン・モータースポーツ)のマシンと壁とのサンドイッチになり、マシンは修復不能なダメージを受けた。

「ハンター-レイがウォールにヒットしたのを見てスロットルを戻したのだけれど、オイルを浴びてしまい、その後はもう何もできずに壁に向かっていった。500マイルのレースでこのようなことが起きたのは残念としか言いようがない。マシンはいいものになっていた感触があった」(琢磨)

 ケガがなかったのは不幸中の幸い。次戦ゲートウェイ 、そしてその後のロードコース2戦での活躍を期待するしかない。上位で戦えるだけの力が、今の琢磨&レイホールにはあるのだ。