9月22日の開幕に向けて盛り上がりを見せる男子プロバスケットボールの『B.LEAGUE』。今回は、その旗揚げに尽力している公益社団法人ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ事務局長の葦原一正さんと、事業本部マーケティング部長の…

9月22日の開幕に向けて盛り上がりを見せる男子プロバスケットボールの『B.LEAGUE』。今回は、その旗揚げに尽力している公益社団法人ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ事務局長の葦原一正さんと、事業本部マーケティング部長の安田良平さんが登場。前編ではチケット戦略についてお伺いする。

 

開幕戦のチケットが6月18日(土)正午に発売となりました。プラチナボックス20万円、ベンチ7万円、最安シートでも5500円と、価格設定はやや高めという印象がありますが。

安田:開幕戦では、アリーナならではの音と光の演出、そしてデジタルとバスケットボールを融合させたものを提供する予定で、 みなさんの持つ“スポーツ観戦の価値観”が変わるまで徹底的にやりきりたい、そう思っています。ですから、実際に来てくださる方にはむしろ安いと感じていただけるよう設計はしているつもりです。テーマは、革新的、サプライズ、エキサイティングです。10年、20年先を見据えた新しいスポーツ観戦像を開幕戦の日にアウトプットして、それをリーグ戦まで継続させたいと考えています。

葦原:チケットにしてもスポンサーにしても、セールスする際にキーワードとなるのは“プライド”です。売る側が、時としてスポンサー金額を下げたり、招待券や格安チケットなどを展開して価値を下げたりしていたのが今までのバスケットボール界。でも、本来であれば価値に対して適正な金額を要求すべきです。席を埋めるだけなら安くすれば済みますが、それでは改革は起こせません。特にチケットに関しては、本場NBAでも“すべての生命線”と言われるほど事業において重要なエンジンですから、自分たちのコンテンツにプライドを持ってセールスすることが大事なのです。

安田:葦原も私も、もともと野球畑の人間でバスケットボールに縁はありませんでした。外から来ると「なぜこんな素晴らしいコンテンツなのにうまくいっていないんだ」という印象でしたね。競技人口も日本では63万人もいるわけですし。実際にバスケットボール界に入ってみると、コンテンツの価値がうまく伝わっていないだけだということがわかりました。自信を持って伝えれば、この競技は爆発すると思います。

 

チケットの金額設定においては、どのような判断基準を設けたのでしょうか。また、特典についてはどんなプランがあるのでしょうか。

安田:まずは、国内問わずさまざまなエンターテインメントやスポーツイベントを視察することから始めました。国内では、宝塚歌劇、劇団四季、クラシックバレエ、大相撲、プロレス、ボクシング、水族館などを見て回り、アメリカでも4大スポーツやミュージカルなどを見て勉強しました。それを踏まえ、演出感や規模感を考慮した上で価格を決定しました。

開幕戦チケットの特典ですが、バスケットボールの試合約120分間のコンテンツを楽しむ以外にも形として思い出を残してほしいという考えがあり、今回は開幕戦に出場する『アルバルク東京』と『琉球ゴールデンキングス』のそれぞれのチームカラーをベースに特別にデザインした記念Tシャツを開幕戦限定で制作し、来場者全員にプレゼントすることにしました。それを着用してもらいチームカラーで空間を埋め尽くす…これはアリーナで一体感を生むための演出の一つでもあります。

チケットも紙ではなく名前入りのカードです。B.LEAGUEのイメージカラーである黒のカードで、ブラックカードのように“選ばれた人しか持てない”といったプレミアム感を持たせています。ただバスケットボールの試合を観るだけの価値ではなく、トータルで価値を提供するということです。

 

今年1月にはNBAの本部を尋ね、試合の視察も行ったようですが、そこではどんな収穫がありましたか。

安田:その時はニューヨークのバークレーセンターやマディソンスクエアガーデンなどアリーナをいくつか回り、NBAだけではなくNHLなども視察しました。バスケットボールは本場だけあって、演出も含めてすべてが完成されているなと感じましたね。競技を軸にお客さんをどう楽しませるか、その手法については非常に勉強になりました。

いちばんの気づきは、試合の約120分間ずっとボルテージを上げるのはなく、メリハリをつけることが大事だということ。ここぞという時の“一瞬のインパクト”をどう残すか、どうお客さんの心に刻むか。その要素が重要だということです。その一瞬があるからこそ、お客さんはそれを写真に収めてSNSで拡散したりするわけですしね。「すごい!」と思わせる瞬間をどれだけ演出できるかが鍵だと思いました。

 

それを踏まえて、開幕戦、そしてその後に続くリーグ戦では、どのような空間を提供しようとお考えでしょうか。

安田: 9月22日の開幕戦は、我々がどんなスポーツ観を提供するのか、意思表明の日になると思います。1993年のJリーグ開幕の時に華々しくやっていた印象って、みなさんの記憶にも残っていますよね。あのイメージを、デジタル、サウンド、光を使った現代の形でお見せしたいと思っています。バスケットボール界としては異例の20万円のボックスシートはたしかにチャレンジですが、それに見合う快適空間は提供するつもりです。

開幕戦に続きリーグ戦も自信を持ってお届けしていくので、地元のクラブをぜひ応援しに行っていただければと思います。夏は野球やサッカーで盛り上がりますが、冬のスポーツとして男子プロバスケットボールの魅力を最大限アピールして、年間を通してスポーツが楽しめる文化を作ることも、我々のミッションだと考えています。

後編は6月27日(月)に公開予定です。

文:岡田真理

 

岡田 真理

立教大学卒業後、カリフォルニア大学バークレー校エクステンションにてマーケティングのディプロマを取得。帰国後はプロアスリート専門のマネジメント会社に勤務し、K-1選手やプロ野球選手などのマネジメントに携わる。退職後スポーツライターに転身し、アスリートのインタビュー記事やスポーツ関連のコラムを執筆。
2014年にNPO法人ベースボール・レジェンド・ファウンデーションを設立し、代表を務めている。