WEEKLY TOUR REPORT米ツアー・トピックス 1230万人――これは、今季のメジャー最終戦、全米プロゴルフ選手権(8月9日~12日/ミズーリ州)の勝利が決まる瞬間、全米でテレビ観戦をしていた人の数だ。 最終日、メジャー15勝…

WEEKLY TOUR REPORT
米ツアー・トピックス

 1230万人――これは、今季のメジャー最終戦、全米プロゴルフ選手権(8月9日~12日/ミズーリ州)の勝利が決まる瞬間、全米でテレビ観戦をしていた人の数だ。

 最終日、メジャー15勝目を狙うタイガー・ウッズ(アメリカ)が、首位のブルックス・ケプカ(アメリカ)を猛追。一時、1打差まで迫る白熱した展開を繰り広げた。

 結局、ウッズは2打及ばず、通算14アンダー、単独2位に終わったが、自身のメジャー最終日のベストスコアとなる「64」をマーク。その奮闘ぶりと、メジャー大会におけるウッズの完全復活をひと目見ようと、多くの人々がテレビのチャンネルを合わせて、その画面に釘づけとなったのだ。



全米プロ選手権で多くのファンを沸かせたタイガー・ウッズ

 この日、テレビ放映の全米における平均視聴率は6.1%。ジャスティン・トーマス(アメリカ)が勝った昨年よりも73%アップし、平均して830万人がウッズの活躍を見続けていたことになる。

 また、開催コースのミズーリ州セントルイスのベルリーブCCにも、連日大ギャラリーが詰めかけた。その数は、1日3万5000人~4万人。コースは身動きが取れないほどの人であふれかえって、かなりの熱気に包まれていた。

 メジャー14勝、ツアー通算79勝。ウッズが近年のゴルフ界のベストプレーヤーであることは間違いない。

 しかしながら、今や42歳となって全盛期はすぎたと思われる。それでもなお、ウッズのプレーに人々が興奮するのはどうしてだろうか?

 ここ数年は、膝や腰のケガに悩まされ続けた。カムバックしては痛みが再発し、再び戦列を離れるという繰り返しだった。だが、昨年4月に4度目の腰の手術を受けて、ツアー復帰を諦めることはなかった。

 そんなウッズの、今もなお燃えたぎる”勝利へのモチベーション”こそが、多くの人々を魅了するのだろう。

「タイガー・ウッズの、今季のカムバックぶりは信じられない。これは、歴史に残る出来事だ」

 米放送局のCBSで解説を務めたメジャー6勝のニック・ファルド(イングランド)は、そう言ってウッズを称賛した。さらに彼は、2年前のマスターズにおけるチャンピオンディナーでのウッズと交わした会話を振り返って、こう続けた。

「あのときのタイガーは、全身がボロボロで、痛みに苦しんでいた。まともに歩くことさえできなかった。そして彼は、『もう2度とプレーできないと思う』――そう僕に囁いたんだ。

 それが、1年半後にはツアーに本格復帰を果たした。(その間は)肉体的にも、精神的にも、どれほど大変な時間だっただろうか。タイガーの”勝利へのモチベーション”には、本当に驚かされる」

 今年は、3年ぶりにメジャー4大会すべてを戦ったウッズ。結果はマスターズが32位タイ、全米オープンは予選落ちに終わったものの、7月の全英オープンでは最終日に一時首位に立つなど、優勝争いを演じて6位タイと善戦した。そして、この全米プロでは再び優勝争いに加わって、堂々の単独2位という結果を残した。

 今年1年を振り返ると、ツアーへの本格復帰初戦となった1月のファーマーズインシュランスで23位タイ。3月のバルスパー選手権では2位タイでフィニッシュし、続くアーノルド・パーマー招待でも5位タイと健闘すると、いよいよ”復活優勝”への期待が膨らんだ。

 ただ、その後は際立った成績が残せず、やや停滞していた。そうした状況を大きく変えたのは7月、自身が主催するクイッケンローンズ・ナショナルで長年愛用してきたパターを、マレット型に変更してからだ。ウッズが言う。

「ショットがようやくよくなってきたと思ったら、グリーン上で苦戦してしまった。今年の初めのような、いいパットさえ打てれば、すぐにでも上位で争える――そう思って、パターを変えたら、転がりも、自信も取り戻せた」

 そうして、クイッケンローンズ・ナショナルで4位タイとなり、全英オープン、全米プロと、メジャー2大会での優勝争いに加わる活躍につながった。

 さて、今年のメジャー大会は終わったが、ウッズの戦いはまだ終わっていない。この週末から始まるPGAツアー、フェデックスカップのプレーオフへ参戦する。

 8月20日現在、ウッズはポイントレースで20位。プレーオフ初戦のザ・ノーザントラスト(8月23日~26日/ニュージャージー州、リッジウッドCC)、第2戦のデル・テクノロジーズ選手権(8月31日~9月3日/マサチューセッツ州、TPCボストン)への参戦はすでに表明している。

 体調など崩さなければ、ポイント上位70人に絞られる第3戦のBMW選手権(9月6日~9日/ペンシルベニア州、アロニミンクGC)にも出場する見通しだ。無論、第3戦終了時にトップ30位以内にとどまれば、最終戦のツアー選手権(9月20日~23日/ジョージア州、イーストレイクGC)にも出場するだろう。

 2007年、2009年に続く、3度目の”年間王者”の座に就くことができるのか。復活優勝への期待も高まるウッズの動向から、まだまだ目が離せない。