マラソンといっても距離はさまざま。ハーフマラソンからフルマラソン、さらには100kmに代表されるウルトラマラソンまであ…
マラソンといっても距離はさまざま。ハーフマラソンからフルマラソン、さらには100kmに代表されるウルトラマラソンまであります。では、“24時間マラソン”をご存知でしょうか? よくチーム制のリレーマラソンが開催されているので、耳にしたことのある方は多いかもしれません。しかし、これを1人で走るとしたら……どんな世界が待っているのでしょう。
今回私は「24時間を走り続けるとどうなるか」を体験すべく、兵庫県神戸市で開催された「24時間リレーマラソン神戸大会」に参加してきました。これまで数多くのマラソン大会に出場してきましたが、24時間マラソンは初めてです。まさに人柱的な企画ですが、読者の皆さまにも新たな世界が拓けるかもしれません。ぜひご覧ください。

「24時間マラソン」とは?
24時間マラソンとは、その名の通り24時間を走り続ける耐久レースです。大会によって異なりますが、基本的には1.5km前後の周回コースをぐるぐる回り、「24時間で何周(=何km)走れたか」を競います。今回参加した「24時間リレーマラソン神戸大会」は周回1.7kmのコース。大会名からお分かりの通り、多くは複数名チームでのリレー参加です。しかし個人の部門でも100名を超える参加者が集まり、どれだけ世の中に変態ランナー(笑)が多いのかを痛感しました。

ゼッケンに計測チップが付いていたので、周回数を自分でカウントする必要はありません。とにかく、ただひたすら24時間後まで走り続けます。

正直にいえば同じ場所をぐるぐる走るのが苦手なのですが、いい精神修行になりそうな予感です。それでは、さっそく時間経過とともに感じたこと、身体的・精神的変化などをご紹介していきましょう。
テントを拠点にぐるぐる回る
大会では周回ごとに給水所で補給できますが、24時間となればそれだけでは足りません。そのため、テントを立てて拠点を作りました。補給食や水分だけでなく、着替えやタオルなども用意。特に今回は34度を超える炎天下だったため、コールドスプレーなど暑さ対策も欠かせませんでした。ちょうどスタート&ゴール付近、トイレも近い場所にテントを設営し、必要に応じて休憩やケアなどに駆け込みます。

周回ごとに休めることもあり、ランナーは走る時間に反して軽装です。私も走っている際はできるだけ身軽でいたいと考え、小さめのポーチに電解質やアミノ酸系のサプリを少しだけ入れておきました。サプリも使い切れば、テントに戻って補充できます。

走っては折り返し、再びスタート地点に戻ってくる。24時間マラソンでは、この繰り返しです。しかし暑さでそれどころではなかったためか、予想よりコースをぐるぐる回ることに“飽き”は感じませんでした。むしろ何かあっても1.7kmごとに休めることは、精神的に楽な面が大きいかもしれません。

いつ休憩しても、走らず歩いても自分次第です。中にはずっと走りを止めない人もいましたが、私は2時間ごとに“ご褒美タイム”を設定。2時間経ったらコース近くのコンビニで炭酸水などを購入し、飲みながら1周歩く。いったん身体を休ませてあげるとともに、短期的な目標ができると考えての対応です。おかげで、テントにはどんどんペットボトルが溜まっていきます……。

ちなみに応援こそありませんが、周回という特性上、常に他ランナーとすれ違ったり追い抜いたり(抜かれたり)することができます。私も何名か知人が参加していたので、声を掛けながら走りました。1人で黙々と走ることが好きな方以外は、ぜひ知り合いを誘って参加するとよいでしょう。

リレー部門の盛り上がりに便乗
大会中は、リレー部門と個人部門が一緒になって走ります。参加した大会では24時間のほかに6時間の部もあり、かなり大勢で走りました。

リレー部門は複数名で入れ替わりながらタスキを繋ぐので、当然ながらスピードが違います。同時に、タスキの受け渡しなど応援の声が響き渡り、最後まで非常に元気いっぱいです。この雰囲気は羨ましく感じると同時に、私まで元気をもらえるかのようでした。
テントの中の様子は
テントの中からは、仲間同士での楽しげな会話や笑い声が聞こえます。中には、その場でそうめんを作って食べたり、他ランナーにも水鉄砲で水を掛けてくれる方まで。ちなみに本大会、カセットコンロのみ火器の使用が認められていました。

たとえ知り合いでなくとも、孤独に走るのと周囲に人がたくさんいるのとでは、やはり気分が違います。この雰囲気に便乗できたことは、24時間を走り続けるうえでとても大きかったと思います。たまに辛いときは、チームメンバーに送られる声援を「自分への応援だ」と勝手に妄想して走らせてもらいました。
訪れるオーバーナイトラン
そして訪れる夜……。24時間マラソンで避けられない“オーバーナイトラン”が訪れます。日が沈むと涼しく走りやすいものの、すでに何時間も走って疲労困憊。まして高温の中を走り続けたため、体力消費は想像以上でした。

暗くなるとスピード感覚が日中と違ってくるようです。同じように走っているはずなのに、実際はペースが落ちているなんていうことも。足元や周囲が見えにくくなるため、同じコースが走りにくく感じました。
そして、何より強敵だったのが睡魔。これまでも夜寝ずに走った経験はありましたが、2時頃になって眠気に襲われました。走っていてもまぶたが閉じてしまい、フラフラと半睡眠状態に。ハッと気づくと、木にぶつかりそうになるなんていう場面も出てきます。おそらく日中の体力消費から、いつも以上に身体が睡眠を欲していたのでしょう。

本当は夜通し走る予定でしたが、危険を感じたので睡眠を取ることに。もちろん時間のロスではありますが、カフェインを摂っても回復の見通しがなく諦めました。それ以後は、たまに目を覚ましては「走れるかな」とリスタートし、やはりダメで再び睡眠……の繰り返し。これは、かなり想定外の出来事です。
ゴールへのカウントダウン
再び走り始められたのは、明るくなってから。それでも眠気がありますが、人は太陽の光を浴びると“起きるモード”になるようです。夜間に寝てしまい距離こそ走れなかったものの、おかげさまで体力や足の疲労はかなり回復。そうなれば、あとは24時間までカウントダウンです。

不思議なもので、24時間という長丁場も残り少なくなれば「もう終わりか」なんて思えてしまいます。もちろんペースは落ちていますし、再び暑くなって辛い。でも、終わりが見えれば頑張れる。これは24時間に限らず、マラソン全般を通じて同じことのようです。

そして24時間。結果的には98周走り、距離は166.6kmとなりました。そこまでいい成績ではありませんが、暑さなどの影響から皆さんも苦戦された様子。「夜ちゃんと走れていたら」と悔やまれる部分はありつつ、しかしものすごい達成感です。

24時間を走り終えてみて
24時間を走ってみて、もちろん驚くほどの疲労感です。ゴール後は座って一休みしましたが、「立ちたくない」と本気で思えるほど。しかし私の場合、足に痛みなどもなく走り終えられました。それ以上に、「24時間を走りきった!」という思いが大きい。この経験は、きっと今後のレースやトレーニングにおいて自信となってくれるでしょう。
想定外だったのは、やはり睡魔でした。そこまで眠気に強い方ではありませんが、まさか走れなくなるほど眠くなるとは……。他にも、疲労や眠気で夜に寝てしまい、中にはそのままリタイアしたという方もいたようです。
また、補給食は多めに持参したのですが、1つも使っていません。夜にお弁当が支給されましたが、そちらも知人にあげました。食べたのは給水所で提供されたフルーツのみ。24時間であれば、そこまで食べ物を補給しなくても走れるようです。ただし暑さもあり、水分補給は必須。むしろいつもの何倍も飲み、それでも喉が渇くほどでした。長丁場だからこそ、補給方法・内容は工夫が必要なのだと思います。

普段なかなか走る機会のない24時間マラソン。調べてみれば、年間を通じて各地で大会が開催されています。「自分の限界を超えたい」「味わったことのない達成感を知りたい」という方は、ぜひ挑戦してみてはいかがでしょうか。
・24時間リレーマラソン神戸大会
http://www.htj.gr.jp/untitled15.html
[筆者プロフィール]
三河賢文(みかわ・まさふみ)
“走る”フリーライターとして、スポーツ分野を中心とした取材・執筆・編集を実施。自身もマラソンやトライアスロン競技に取り組むほか、学生時代の競技経験を活かし、中学校の陸上部で技術指導も担う。またトレーニングサービス『WILD MOVE』を主宰し、子ども向けの運動教室、ランナー向けのパーソナルトレーニングなども行っている。4児の子持ち。ナレッジ・リンクス(株)代表。
【HP】http://www.run-writer.com
<Text & Photo:三河賢文>