イギリス・ロンドンで開幕したウィンブルドン(6月27日〜7月10日)。 全仏オープンで17年ぶりにグランドスラム大会を欠場したことは、ロジャー・フェデラー(スイス)にとって、体調を回復させ、ウィンブルドンに自信を持って臨む…

 イギリス・ロンドンで開幕したウィンブルドン(6月27日〜7月10日)。

 全仏オープンで17年ぶりにグランドスラム大会を欠場したことは、ロジャー・フェデラー(スイス)にとって、体調を回復させ、ウィンブルドンに自信を持って臨むために行う価値のあることだった。

 フェデラーは土曜日にオールイングランド・クラブで、背中の故障のため全仏出場を取りやめた際には、1999年以来ずっと出場し続けているウィンブルドンさえ断念しなけれならないのでは、という疑念もわずかながらあったと告白した。  「もし出場するのであれば、勝ち進み、優勝するチャンスもあるのだと感じられるようでいたい。そして、そう感じられるようになったからこそ、僕はここにいるんだよ」とフェデラーは言った。彼はウィンブルドンの郵便番号である「SW19」という文字の描かれた、彼の名を付けたウェア・ラインのTシャツを身につけていた。

 「パリで棄権したあと、このお気に入りの大会に戻ってきたということは、僕にとって勢いをつけるきっかけになり得る、非常に大きな励ましだ。今季の傾向を好転させるための大きなチャンスになるかもしれない」

 今季はフェデラーにとって、異常なまでにフラストレーションの溜まるものとなっている。

 全豪オープンの準決勝でノバク・ジョコビッチ(セルビア)に敗れた翌日、彼は子供たちのために風呂に湯を貯めているときに、はずみで左膝を痛めてしまった。手術を経て復帰したフェデラーだったが、今度はマイアミで胃のウィルス性疾患に見舞われ、さらにマドリッドでは練習中に背中を痛めてしまう。2013年にも背中の故障に長いこと煩わされていた彼は、ツアーをしばらく休み、まずは体調を回復させてリセットしてから、勝つチャンスの大きい重要な大会----ウィンブルドン、リオ五輪、全米オープン----に向けて準備することにした。  「この背中は、僕に『88』のタイトルを勝ち取らせてくれた」と彼はユーモアを込めて言った。「だからこの背中がときどき僕を困らせるようなことがあっても、それはよしとするよ」。  フェデラーはプレーをやめずにしっかり回復できなかった場合に、失い得るものが何かに気づき、そうなった場合のほうがより辛いと判断したのだと言う。彼はシュツットガルトとハレの芝の上でプレーを再開し、その両方で準決勝まで勝ち進んだ。  この10日間で7試合をこなしたことについて、「僕にとっては非常に重要だった」とフェデラーは言う。「僕はこのテストに合格した。体がこれだけのプレーの負荷に耐えられるということがわかったんだ。気持ちの部分でこういったことを知っているというのは、僕にとって大事なことなんだ。このようなステップを踏むことで、5セットでもいけると感じることができるようになる。おかげでより大きな自信を胸に、自分が今どの位置にいるかを知った上で、ウィンブルドンに乗り込むことができるんだ」とフェデラーは話した。  「タイトルのことは考えていない。それは遠く離れすぎている。ノバクとアンディ(マレー)が優勝候補だよ。僕はまず、自分をそういった立場までいざなうこと、つまり2週目まで残り、弾みをつけることに集中する必要がある。そこまでいけば、すべては自然に回り始めるだろう----と願っているわけだ。最初の週にしっかり任務を遂行することが本当に大事なんだよ」  フェデラーは、もう7ヵ月というもの、ひとつもタイトルを獲っていない。彼は4年前、ここウィンブルドンで17度目の、そして最後のグランドスラム・タイトルを獲得した。彼は過去2回の決勝でジョコビッチに敗れている。

 フェデラーの8度目のウインブルドン・タイトルへの挑戦は、サウスポーで初対面のギド・ペラ(アルゼンチン)が相手で始まる。ドローでフェデラーはジョコビッチと同じトップハーフにおり、第2シードで2013年優勝者のマレーは、世界4位で第4シードのスタン・ワウリンカ(スイス)と同じボトムハーフにいる。  マレーは、ワイルドカード(主催者推薦)のリアム・ブロディ(イギリス)との試合でウィンブルドンを戦い始める。両者は初対戦だ。  もしもシードが勝ち進むと、マレーは4回戦でニック・キリオス(オーストラリア)と対戦することになる。そのキリオスは、友人でもあるベテラン、ラデク・ステパネク(チェコ)との1回戦を軽視してはいない。ステパネクはドロー抽選に前に、キリオスの練習を助けたいと申し出ていたが、その抽選結果ゆえ、提案は丁重に断られることになった。  女子の新しい世界ナンバー2、ガルビネ・ムグルッサ(スペイン)は第2シードであるため、勝ち進めば今年もディフェンディング・チャンピオンのセレナ・ウイリアムズ(アメリカ)と決勝で対戦することになる。

 ムグルッサは、全仏オープンの決勝でセレナを破ったあと、グラスコート上で公式戦を一試合しか戦っていないことについて、特に気にしてはいない様子だ。母国スペインでの新しいWTA大会、マヨルカでの1回戦負けは、全仏オープンの直後に起きている。スペインにおいてグラスコート上でプレーするというのは「奇妙な感じ」と言いはしたが、彼女は国際大会なので、あまりスペインにいるという感じがしなかったとも言い添えた。  彼女はまた、全仏オープンで優勝したからといって追加的なプレッシャーを感じてはいないと言う。「別に違いは感じないわ」とムグルッサ。「私はどんな試合も勝って当然などと思ったりはしない。ほかの皆と同様にゼロからスタートするのよ」。(C)AP