常葉大菊川を破り17年ぶりベスト8「林君の先発が大正解だった」 第100回全国高等学校野球選手権記念大会第13日第2試合は、近江(滋賀)が常葉大菊川(静岡)を9-4で破り、準優勝した2001年以来17年ぶりのベスト8進出を決めた。今大会初先…

常葉大菊川を破り17年ぶりベスト8「林君の先発が大正解だった」

 第100回全国高等学校野球選手権記念大会第13日第2試合は、近江(滋賀)が常葉大菊川(静岡)を9-4で破り、準優勝した2001年以来17年ぶりのベスト8進出を決めた。今大会初先発の左腕・林が8回3安打1失点11奪三振と快投。4番の北村が4安打6打点と打線を牽引した。

 前評判の高かった近江だが、1回戦で智弁和歌山(和歌山)、2回戦で前橋育英(群馬)と優勝経験校を破り、この日は2007年の選抜優勝校の常葉大菊川も撃破。名将・野村克也氏の“右腕”としてヤクルト、阪神、楽天でヘッドコーチや2軍監督を務めてきた松井優典氏は、チームとしての総合力を高く評価した。

 まずは、この日の勝因について「林君の先発が大正解だった」と指摘。テンポの良い投球で強打の常葉大菊川打線を抑えた左腕、そして、好投を引き出した2年生捕手の有馬のリードを称賛した。

「ピッチャーを何枚か持っている中で、相手打線を見て林君を選んだ。先発投手の起用がまず当たり、それがゲームを作ったと言えるでしょう。林君はチェンジアップでもスライダーでもストライクを取れる。彼の変化球のコントロールというのものをよく見極めて起用したと思います。そして、テンポ良く、コントロール良く、持ち味を本当に出した投球内容でした。その中で大事なところは、有馬君のリードです。

 何がいいか。例えば、投球の基本としては、変化球は低くとか、左投手の左打者へのチェンジアップはなかなか打ち取りづらいとか、そういう傾向があります。ただ、有馬君はそういうものを捨てて、右打者の高めにチェンジアップを要求したりとか、左打者の内角にチェンジアップを投げたりとか、そういう傾向が見えて、相手打線に的を絞らせませんでした。常葉大菊川にはスイングスピードの速いバッターが多く、対応力がありました。そういう打線に対してどのように見せ球を有効に使うか。そういう配球をしていました。非常に良かったと思います。相対的に言えば、林君のコントロールの良さ、テンポの良さがあり、常葉大菊川が術中にはまった。それを助けた有馬君の良さが出ました。

 有馬君はキャッチャーとして、スローイングも非常にいいい。精神的に余裕があるので、見えているものが広いという印象です。もし何かに不安があると、見えるものが少なくなるものですが、有馬君は色んな方向に気配り、目配りが利いていた。フットワークのスピードがあるので、送球も速いし、コントロールもいい。有馬君というキャッチャーの評価は高いですね」

近江は「とても高校野球らしいチーム」、常葉大菊川では二塁・東の守備力が「特筆」

 もちろん、4番の北村の打撃も光った。4打席連続タイムリーで6打点。2打席目まで変化球を捉え、3打席目は直球、そして最後の打席はチェンジアップを捉えて三塁打とした。松井氏は対応力の高さを評価する。

「スイングスピードでいえば、常葉大菊川の奈良間君の方が速い。筋力の良さ、瞬発力を感じます。ただ、相手のピッチャーの力と自分の力を比較した中で、どういうふうに対応していくかというのを見せたのが、この試合の北村君の打撃でした。バッティングに関しては、頭がいい面も見せたし、パワーも見せた。バッターとして高く評価できます。この試合では速いボールに対応したという感じではなく、左の変化球ピッチャーと対峙して、対応のうまさは感じました。なので、瞬発力という部分では少し気になりました」

 一方、常葉大菊川は積極的な走塁がやや裏目に出たと指摘。松井氏は「結果論ではありますが、もうちょっとじっくりいったらどうなっていたかというのは気になりました」と振り返る。ただ、敗戦の中で光ったのが二塁手の東の動きだったという。

「外野に打球が行ったとき、ピッチャーが悪送球をしたときに、あそこまで行っているか、というバックアップを東君は見せていました。あのバックアップの速さ、守備力は特筆すべきものです。二塁を守っていて左翼に打球が飛んでも、全て追いかけているのではないでしょうか。遊撃の奈良間君も守備も含めてレベルの高い選手であることは間違いない。1つのボールに対する集中力が高い。本当にいいもの見せてもらいました」

 そんな常葉大菊川を破り、17年ぶりにベスト8まで駒を進めた近江。大阪桐蔭が大本命と見られている今大会で、頂点まで駆け上がることはできるだろうか。

「近江はバラエティーに富んだ戦力を持っています。それぞれの選手に役割があるのだろうというチームですね。面白いチームです。欠点があまり見当たらない。とても高校野球らしいチームと言えるのではないでしょうか。ドラフトで何人も指名されるようなチームとは違った野球。大阪桐蔭などとは違う楽しみがあるチームですね。いい勝負をするのではないでしょうか」

 ここまで3試合全てで強さを見せている近江。すでに優勝候補の一角に躍り出たと言えるかもしれない。(Full-Count編集部)