第18回アジア競技大会2018(ジャカルタ・パレンバン/インドネシア)が、8月18日~9月2日の日程で行なわれる(サッカーなど一部競技は開幕前にスタート)。 ビーチバレーボールがアジア大会の正式競技になったのは、1998年タイ・バンコク大…

 第18回アジア競技大会2018(ジャカルタ・パレンバン/インドネシア)が、8月18日~9月2日の日程で行なわれる(サッカーなど一部競技は開幕前にスタート)。

 ビーチバレーボールがアジア大会の正式競技になったのは、1998年タイ・バンコク大会。以降、今大会で6度目の実施となる。

 その間、日本チームは男女合わせて、金メダル1個、銀メダル2個、銅メダル3個を獲得。アジアの中では常に存在感を示してきたが、前回の韓国・仁川大会(2014年)では、男女ともに最高成績はベスト8にとどまった。

 近年、カタールをはじめとする中東勢、中央アジアのカザフスタンなどが積極的に強化。中国やタイなど古豪も進歩を続けるなか、相対的に日本の地位は下がり続けている。

 それでも、女子はここ最近、積極的にワールドツアーを転戦。徐々にではあるが、結果を出しているチームが増え、巻き返しを図っている。

 その筆頭となるのが、今回のアジア大会に臨む代表2チーム、石井美樹(28歳)&村上めぐみ(32歳)ペアと、長谷川暁子(32歳)&二見梓(26歳)ペア。なかでも、ビーチ歴2年ながら急成長を遂げて注目を集めているのが、二見だ。



アジア大会に挑む二見梓(左)と長谷川暁子(右)ペア

 二見は、神奈川県の強豪・大和南高校でバレーボールに打ち込み、1年生のときに出場した全国高等学校バレーボール選抜優勝大会(春の高校バレー)でベスト8入り。大型センターとして活躍すると、そのすらりとしたスタイルのよさと端正な顔立ちから「春高のヒロイン」と呼ばれて脚光を浴びた。

 その後、高校で日本一には届かなかったが、卒業後にV・プレミアリーグの東レ・アローズに入団。2011-2012年のルーキーシーズンから奮闘し、同シーズンのチームのリーグ優勝に貢献した。

 以降もチームのレギュラーとして活躍し、ユース時代から日本代表にも選ばれて将来を嘱望されていたが、2015年に現役を引退。一度はバレーボールから離れて普通のOL生活を送っていたものの、やはりアスリートの”ハート”が疼いたのか、砂の上に戦いの場を変えて、競技の世界に戻ってきた。

 二見の大きな武器は、身長180cmという高さだ。世界では決して高いとは言えないが、その高さでのアジリティと大胆さを兼ね備えた攻撃力は、海外勢にもヒケを取らない。的を射たブロックも相手に脅威を与えている。

 さらに特筆すべきは、順応力の高さだ。

 インドアで大きな実績を残した選手でも、ビーチを舞台に移すと、対応できるまでに時間がかかるもの。体育館の床とは違って、反発力がない砂の上でのジャンプや、素早く移動するための体重のかけ方など、使う技術や筋肉が同じバレーボールであっても大きく異なるからだ。

 だが、そうした多くの選手が戸惑い、苦悩する時間を、二見はあっさりと乗り越えてしまった。その結果、2016年の夏から本格的にビーチを始めて1年足らずの、2017年の国内ツアー開幕戦で初優勝を果たしている。

 もちろん、ゲームメイクを担うパートナーの長谷川の力によるところも大きいが(長谷川もインドアからの転向)、ビーチではインドア時代にはほとんどプレーすることがなかったレシーブやトスの能力も求められることを考えれば、二見のポテンシャルの高さは並みではない。

 ふたりは、昨シーズンからイタリアのローマに練習拠点を置いている。そんな練習環境を含め、世界のトップチームが集まるヨーロッパに身を置いているということが、いい刺激となって、個々のレベルアップにもつながっているに違いない。

 昨季は、ワールドツアーのモロッコ・アガディール大会(1-Star〈※〉)で準優勝、オーストラリアのシドニー大会(2-Star)ではベスト4入りを果たした。いまだ優勝はないものの、グレードの高い大会でも着実に結果を残している。
※Star=大会のグレード。5段階に分けられており、最も高い大会が5-Starで、最も低い大会が1-Star。

 現在、ワールドランキングも上昇中で、30位前後につけている。2年後の東京五輪において、二見と長谷川はランキングによる出場権獲得(ワールドランキング15位以内)を狙っており、それもまったく夢物語ではなくなってきた。

 二見は、力が試されるビッグイベントに向けて、「自分としては、アジア大会は初めてだが、”プレ・オリンピック”という位置づけで臨みたいと思っている。メダルを持って帰りたい」と意気込んでいる。

 一つひとつのプレーには荒さがあって、狙われたときのメンタリティやゲームの組み立てなど、まだまだ心許ない部分もあるものの、逆にそれだけ伸びしろはあるということ。

 体がひと回り大きくなって、持久力も増した二見。もともと持っている思い切りのよさを生かして大暴れすることができれば、メダル獲得はもちろん、日本チームのアジアでの復権も叶えてくれるのではないだろうか。