大熱戦となった8日目第3試合、星稜はボール球をスイングした時にコンタクトする確率69.8% 大会8日目第3試合より、初戦を勝ち上がってきたチーム同士の対戦となりました。前試合との比較も含めながら、データで試合を分析していきます。◇済美 13…

大熱戦となった8日目第3試合、星稜はボール球をスイングした時にコンタクトする確率69.8%

 大会8日目第3試合より、初戦を勝ち上がってきたチーム同士の対戦となりました。前試合との比較も含めながら、データで試合を分析していきます。

◇済美 13-11 星稜

◯攻撃指標
OPS 出塁率+長打率
wOBA 1打席あたりにどれだけチームの得点に貢献したかを表す指標
P/PA 1打席あたりの被投球数
O-swing% ボールゾーンのスイング率
Z-swing% ストライクゾーンのスイング率
Z-contact% ストライクゾーンのコンタクト率

【済美】
打率.304 OPS .851 wOBA .396 P/PA 3.47
O-swing% 20.0%(前試合 25.0%)
Z-swing% 52.4%(前試合 61.3%)
Z-contact% 93.9%(前試合 93.5%)

【星稜】
打率.278 OPS.674 wOBA .318 P/PA  3.17
O-swing% 43.4%(前試合 29.3%)
Z-swing% 65.9%(前試合 65.0%)
Z-contact% 94.4%(前試合 92.3%)

◯済美・山口直哉投手の各指標
打者58 投球数184 WHIP 1.30
▼配給割合
高め 22.1%
中 16.6%
低め 61.3%

2試合通算 WHIP 1.18 GO/AO 1.41

 大会2度目となるタイブレークまで持ち込まれたこの一戦。最後に勝負を決したのは大会史上初の逆転サヨナラ満塁ホームラン。その打席で甘いボールを打ちあぐねていた済美の1番打者・矢野選手でしたが、低めストライクゾーンに入った112キロのスライダーを振り抜き、打球はライトポールに直撃。184球を投じた山口投手に報いる一打となりました。

 山口投手は初戦よりもスライダーの割合を増やし、星稜打線から多くの凡打を奪いましたが、前試合でのスライダーの空振り率が23.3%に対し、この試合では12.2%。それは星稜打線のO-swing%43.4%に表れ、変化球に食らいついている様子がうかがえます。なお、星稜のO-contact%(ボールゾーンの球をスイングしたときバットにボールを当てる割合)は69.8%と高水準に上ります。

 なお、山口投手は2試合連続完投で投球総数は293球に達しました。次戦は中3日の16日第3試合。充分なケアが必要でしょう。

慶応は打率とOPSで上回るも、得点は高知商が2倍に

◇高知商 12-6 慶応

◯攻撃指標

【高知商】
打率.308 OPS .810 wOBA .406 P/PA 3.98
O-swing% 34.8% (前試合 25.0%)
Z-swing% 67.5% (前試合 71.7%)
Z-contact% 94.6% (前試合 96.2%)

【慶応】
打率.389 OPS. 910 wOBA .393 P/PA  3.10
O-swing% 25.5% (前試合 24.1%)
Z-swing% 84.8% (前試合 49.3%)
Z-contact% 89.3% (前試合 91.2%)

◯高知商・北代真二郎投手の各指標
打者39 投球数121 WHIP 1.78
▼配給割合
高め 28.9%
中 19.0%
低め 52.1%

2試合通算 WHIP 1.89 GO/AO 0.89

 慶応のZ-swing%は初戦に比べて大幅に増加。初戦の中越戦ではじっくりボールを見るという攻撃方針でしたが、高知商戦では積極的に打ちに行く姿勢に。それがP/IPにも、中越戦4.0→高知商戦3.1、と表れています。

 打率、OPSでは慶応が高知商を上回ったのですが、得点は慶応が高知商の半分で終わってしまいました。その明暗を分けたのは序盤での攻撃に尽きるでしょう。1回裏の慶応は7者連続で出塁(5安打2四死球)したにも関わらず、このイニング2得点で終了。ヒットでの走塁ミスによって2つのアウトを献上してしまいました。2回表に高知商は長短打合わせて4安打、1四球に加え、失策2、三振振り逃げなど慶応守備のミスも重なり7得点。4回にも4点を追加し勝利を確実なものとするリードを奪いました。
 
 高知商・北代投手はスライダー、チェンジアップを効果的に使い、フライを打ち上げさせてアウトをとる方法で凡打を積み重ねています。(鳥越規央 / Norio Torigoe)

鳥越規央 プロフィール
統計学者/江戸川大学客員教授
「セイバーメトリクス」(※野球等において、選手データを統計学的見地から客観的に分析し、評価や戦略を立てる際に活用する分析方法)の日本での第一人者。野球の他にも、サッカー、ゴルフなどスポーツ統計学全般の研究を行なっている。また、統計学をベースに、テレビ番組の監修や、「AKB48選抜じゃんけん大会」の組み合わせ(2012年、2013年)などエンターテインメント業界でも活躍。JAPAN MENSAの会員。一般社団法人日本セイバーメトリクス協会会長。
文化放送「ライオンズナイター(Lプロ)」出演
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