8回8安打4失点の投球は「クレバー」、野手としては守備に“課題”も 第100回全国高等学校野球選手権記念大会第9日、第1試合は優勝候補の大阪桐蔭(北大阪)が初出場の沖学園(南福岡)を10-4で下し、3回戦に進出した。プロ注目の根尾は先発マウ…

8回8安打4失点の投球は「クレバー」、野手としては守備に“課題”も

 第100回全国高等学校野球選手権記念大会第9日、第1試合は優勝候補の大阪桐蔭(北大阪)が初出場の沖学園(南福岡)を10-4で下し、3回戦に進出した。プロ注目の根尾は先発マウンドに上がり、8回8安打4失点7奪三振。一方、打者としてはバックスクリーンに豪快に運ぶソロ本塁打を含む3打数2安打1打点2四球だった。

 投打ともにハイレベルで、今秋のドラフトで上位候補とされる根尾。“二刀流”としての評価も高いが、名将・野村克也氏の“右腕”としてヤクルト、阪神、楽天でヘッドコーチや2軍監督を務め、鳴り物入りでプロ野球の世界に飛び込んできた若手選手を数多く指導してきた松井優典氏は「投手としても野手としても、通信簿に例えれば現在は5段階評価で『4』の選手。ただ、総合的に見れば、将来は野手でしょう」と言う。

 投打において高校トップレベルとされる根尾は、なぜ「4」なのか。

「まず投手としては、たとえば今日は最後に柿木君が出てきて、150キロを投げる。一方で、根尾君は140キロ台後半でした。(150キロを投げるような)そういう秀でたものはないけど、全体的にバランスが非常にいい。そういう評価ができる。あと、非常にクレバーであることは間違いない。投球パターンを5回からガラッと変えて、結果球がほとんど変化球でした。そういうことに対しての対応が非常に賢い。

 ただ、5回に先頭の森島君に抜け球をホームランにされました。評価する側としては、あれはホームランを打たれたらいけないんです。金足農の吉田君は、抜け球で三振を取れます。そこがピッチャーとしての根尾君と吉田君の差です。そういうことを考えていくと、根尾君はピッチャーとしての能力は『5』まではいかない。『4』かなというふうに見えます」

 一方で、野手としてはどうか。「5」ではなく「4」だとする理由は、ショートでの守備にあるという。

「この日は9回しか守備にはつきませんでしたが、守備位置が気になりました。先頭打者のセンター前に抜けた打球は、1歩ベースに寄ってほしかった。結果的に抜かれたかどうかは別にして、パッと1歩ベースに寄ってほしかったんです。見た時に、あのバッターに対して守備位置がすごく三遊間寄りだなと思っていたんです。ピッチャーなので、バッテリーのサインは分かってるはず。二遊間というのはそこが一番大事です。

 ピッチャーもやる選手であれば、キャッチャーのサインに対しての意識がどうかというところです。素晴らしい選手だけに、ショートを守っている以上はキャッチャーのサインに対しての動きと守備位置の変更というところまで高いレベルを要求したい。根尾君が野手として『4』のところを『5』にしようと思ったら、そういうところだと思います。ショートで言えば、報徳学園の小園君あたりとの比較になってきます。小園君も身体能力はすごくいいものがあって、双璧だと思います。ただ、そういう高いレベルで言うなら、根尾君には1球に対しての集中力、考え方を要求したくなる。

 あとは、バスターエンドランでアウトになった場面も、当然ベンチの作戦ですが、もうちょっといいところまで行ってアウトになってほしい。完全にアウトでしたから、そこに行くまでに準備はどうだったのかと。そこまで追求していきたい。いい選手だけに少し辛口になってしまいますが」

ドラフトでは1位指名も「十分にあり得る」、比較対象はホークス今宮

 一方で、松井氏は根尾のバッティングについては高く評価する。7回先頭でバックスクリーンへ運んだホームランは圧巻だった。

「あのホームランを見ても、一番感じたのはピッチャーとしてよりも、バッターとしての力の出し方がうまいということです。極端な話をすると、あのホームランを見ると、ピッチャーであれば150キロを投げられるくらいの身体能力があるのではないか、もっと荒々しく力を使って150キロくらい投げられる能力があるのではないか。そういうホームランでした。バッティングセンスも感じます。低めの変化球を見逃す感じなどは、一流を彷彿とさせます。打撃に関してのセンスは、やはりバッターかなと思う大きな理由です」

 では、ドラフトではどのような評価を受けるのか。投打ともにハイレベルとあって、各球団の判断は分かれるというのが松井氏の見方だ。比較対象としては、ショートでありながら甲子園で150キロ超の剛速球を連発した今宮健太内野手(現ソフトバンク)の名前を挙げる。

「1位指名も十分あり得るでしょう。ドラフトでは『この何人かは絶対に1位で消える』という選手はいますが、そこから先はチーム事情も考えながら、ドラフト1位に指名するという形になっていく。根尾君が断トツで1位で消えるかというと、少し疑問です。誰が見ても1位ということではなさそうです。あとは伸びしろをどう見るか。投手と野手で『4』の選手がプロに入ってどう変わっていくのかなと。そういう意味では、ドラフトは楽しみでもあります。

 似たタイプは今宮君ではないでしょうか。甲子園でリリーフして150キロ以上を投げた。身体能力のある選手が今、プロでああいうタイプの選手になっている。つい比較して見てしまう。今宮君は高校時代、小さかったけど150キロを投げて、打撃のパンチ力もあった。背が低いということだけでは片付けられないところもありましたが、プロの球団も現在の今宮君のことを考えながら、比較、評価するのではないでしょうか。『1』があっても『5』がある選手のほうがいいのか、それとも根尾君のような選手がいいのか。そのあたりにはそれぞれの球団の事情も絡んでくるはずです」

 史上最強とも言われる大阪桐蔭には、他にも能力の高い選手が多くいる。その中で、投打ともに軸となっている根尾。ここから先にどのようなプレーを見せるかも、ドラフトに大きな影響を与えそうだ。(Full-Count編集部)