池江璃花子(ルネサンス)がパンパシフィック水泳選手権で、優勝を狙っていた種目の女子100mバタフライで、堂々の泳ぎを見せた。

 午前中の予選は、大会新の56秒90で1位通過。池江自身も世界トップに一番近い種目と考えて今大会に臨んでいた。「金メダルを獲りたい」という思いもあって、レース前は緊張と不安に襲われていた。




目標通り、100mバタフライで金メダルを獲得した池江璃花子

 今年の池江は、日本記録を何度も塗り替え、6月には昨年の世界選手権3位相当の56秒23まで記録を伸ばしている。さらに、大会初日の混合メドレーリレーでも、スタートのリアクションタイムが普通のレースより速くなるとはいえ、55秒53のラップタイムを出しており、世界でまだふたりしか果たしていない55秒台も視野に入れていた。

 池江は、周囲からの「自分の泳ぎをすればいい」という言葉も素直に受け入れられたという。

「去年の世界選手権では、準決勝が思っていた以上に速かったからいけるんじゃないかなと思いましたが、いざ決勝を泳いでみたら力不足でした。レース前に不安になったりして、自分をネガティブな方向に持っていってしまった。でも、今回は日本開催という環境でリラックスできた部分もあり、自分の泳ぎに集中できた」

 レース前半は体の動きもしなやかで、余裕を感じさせる泳ぎ。折り返しの50mでは、タッチが流れるターンになったものの、通過タイムは25秒89と、サラ・ショーストレム(スウェーデン)が55秒48の世界記録を出したときの通過タイム26秒01を上回った。

「前半は速くて26秒0くらいかなと思っていましたが、そこまでとは思わなかったのでビックリしました。後半のしんどさは異常だったので、たぶん前半は速かったんだろうなとは思っていました。パワーがついてきて、自分の泳ぎをしていても自然にいけてしまうのだと思います。ずっと横を見ながら泳いでいましたが、最後はすごくバテたので『抜かれたらどうしよう』という気持ちでした。隣の選手もバテていたみたいで、そのまま1番でゴールできたのはうれしかったです」

 池江の後半50mは30秒19で、ケルシー・ウォレル(アメリカ)とエマ・マキオン(オーストラリア)に追い込まれたが、2位のウォレルに0秒36差をつけて優勝。世界選手権2位と3位の選手を相手に、自己記録を0秒15更新して金メダルを獲得して、世界のライバルたちに自らの存在を知らしめた。

「これまで日本ではいい記録を出して勝てても、世界大会では勝てないことが続いていましたが、今日の試合でアメリカの選手やオーストラリアの選手に勝つことができて自信がつきました。世界記録保持者のサラ選手と泳いでみたらどうなるかわからないけれど、来年は、自信を持って世界大会に臨めるのではないかと思います。

 最近は、自由形よりバタフライの練習の方が楽というか、50mを何本もやる時でも26秒7とかで、ほとんど26秒台でまとめられるようになってきました。自分がどんどん伸びていて、タイムを出せるのではないかと思える楽しい練習ができていました」

 もし50mの折り返しでタッチがきっちり合っていたら、「55秒台も出たのではないか」と言う池江は、「これからは、スタートでのドルフィンキックを何回にすればタッチが合うのかも考えていきたい」と、自己分析もできていた。

 もちろん、すべてを納得できたわけではない。

「自分のバタフライの特徴は、後半に伸びがあることだと思っています。今日は最後で体が動かなかったので、もっとうまく前半を楽に入って、後半まで体力がもつレースができればなと思います。

 この結果に満足することなく、世界記録まであと0秒6あるので、記録を出すために何をしなければいけないかを考えていきたいです。サラ選手の泳ぎを見ているとパワーで泳いでいる印象ですが、自分は181cmある彼女と比べれば体格も大きくないので、それを技術面で補わなければいけないと思います。技術を下げないで、そのままパワーをつけたら、サラ選手にも勝てるようになると思うので、自分のよさを伸ばしつつ、足りないところも伸ばしていけたらなと思います」

 また、今回逃した55秒台は「すぐに出ると思っています。今はまだ世界記録は遠いと感じるけど、55秒台を出せば近くに感じられるようになると思う」と話す。

 進化を続ける池江にとって、この大会で「最近は厳しいかなと思うようになっていた」と言う自由形で結果が出たことも大きな収穫だった。

 大会初日の200m自由形は、予選7位通過ながらも、決勝では序盤から3位につけるとラスト50mで自由形中・長距離の女王、ケイティ・レデッキー(アメリカ)を逆転して銀メダルを獲得。1分54秒85は昨年の世界ランキング3位に相当するもので、この種目の世界記録保持者、フェデリカ・ペレグリニ(イタリア)の昨年の世界選手権優勝タイムに0秒10差まで迫る記録だ。

「決勝の前は、今年の2月に出した1分55秒04を破れないんじゃないかとみんなで話していました。それに、自由形は世界に出ると弱いんだなと思っていたし、決勝前は本当に緊張して、メダルはおろか、自己ベストも出ないんじゃないかなという考えが頭をよぎっていたんです。でも、それで逆にいい感じでリラックスできたというか。

 前半からついていかなければダメだろうと思っていましたが、すごく気持ちよくいけました。後半はしんどくなって隣のラック選手には離されているなという感じもありましたが、その向こうにレデッキー選手が見えたので、最後まで絶対に勝ちたいと思って泳げました。この種目のメダルは想像できていなかったけど、レデッキー選手に勝てたことはうれしいし、自分に力がついているとわかったので、すごくいいレースになりました」

 大舞台で自分の力を出しきって2個のメダルを獲得した結果と、そこから得た自信は、これからの成長に必ず役立つはずだ。