わずか半年で、ずいぶんと様変わりしたものだ。柏レイソルのことである。 1月30日、今季の初戦となったACLプレーオフのムアントン・ユナイテッド戦。柏はFWクリスティアーノの2発とFW伊東純也のゴールで3−0と快勝を収めた。昨季、リーグ…
わずか半年で、ずいぶんと様変わりしたものだ。柏レイソルのことである。
1月30日、今季の初戦となったACLプレーオフのムアントン・ユナイテッド戦。柏はFWクリスティアーノの2発とFW伊東純也のゴールで3−0と快勝を収めた。昨季、リーグ戦で4位と躍進を遂げた柏は、シーズンオフに他チームからレギュラー格を複数迎え入れ、2018シーズンのさらなる飛躍を予感させていた。
柏レイソルはホームで3試合連続の完封負けを喫した
成長過程にある若手が主軸をなし、3年目を迎えた下平隆宏監督のもとで、確かなスタイルが築かれてきた。的確な補強で選手層も確実に増している。そこには明るい未来が待っているはずであり、ACLとの並行戦を強いられるとはいえ、最低でも昨季の4位以上、ともすれば2011年以来の優勝さえあり得ると踏んでいた。格下とはいえ、シーズンの初陣でムアントンを圧倒したその試合を見たときに、筆者は今季の順位予想で2位の欄に、「柏レイソル」と記した。
あれから半年と少しが過ぎ、柏はまるで別のチームになっていた。8月11日、ホームにベガルタ仙台を迎えた一戦で、柏はいいところなく0−2と完敗を喫している。
この日の柏の先発メンバーには、ムアントン戦のスタメンがわずかに4人しかいなかった。GK中村航輔、DF中山雄太を負傷で欠き、DF中谷進之介はこの夏に名古屋グランパスに新天地を求めている。もちろん、中谷を除けばケガという理由があるにせよ、柏の希望と言うべき若き3人の不在の状況が、このチームが大きく変わってしまったと感じられた最大の理由だった。
監督が代われば、メンバーが変わるのは当然のことでもある。5月12日、柏は成績不振を理由に下平監督を解任。加藤望ヘッドコーチを監督に昇格させた。
ところが、加藤監督となってからも、状況は好転しているとは言いがたい。初陣となった第15節の名古屋戦こそ3−2と勝利を収めたが、ワールドカップ中断明け後の第16節のFC東京戦から4連敗。第17節の鹿島アントラーズ戦では6失点と、屈辱的な完敗を喫している。
第20節のコンサドーレ札幌戦で連敗を食い止め、いい流れで迎えたこの日の仙台戦だったが、決して状況が改善されていたわけではなかったことを露呈する試合となった。
それでも前半は悪くなかった。伊東とDF小池龍太の連係で右サイドを崩し、最前線に配置されたFW瀬川祐輔が鋭く裏を突く。瀬川が走ることで生まれたスペースにはMF江坂任が入り込み、攻撃に迫力を生み出していく。MF小泉慶のボール奪取やMF手塚康平のパスワークにも光るものが感じられ、仙台を圧倒する時間が続いた。
ところがこの時間帯で決め切れないでいると、流れは次第に仙台へ移っていく。後半に入り高い位置を取りだした両ウイングバックにサイドのスペースを使われだすと受け身となり、59分に右からのクロスをMF奥埜博亮に合わせられ失点。その後に攻勢を強めるも、前がかりとなったことで生まれた背後のスペースをカウンターで突かれて、80分に2点目を失って万事休した。
「チャンスは作っていると思いますけど、そこを決め切れないとか、シュートを打ち切れないとか、そういう課題がまだまだあるなと思います。決め切れないなかで隙を突かれてカウンターから失点したことは、僕自身の問題もたくさんあるなと感じています」
加藤監督が振り返ったとおりの試合だった。押し込みながらも決め切れず、隙を突かれて先制され、カウンターからダメを押される。攻撃型のチームの典型的な負けパターンである。仙台とすれば実に対策の取りやすいチームであり、まさに狙いどおりの試合運びを実現できただろう。
柏のストロングポイントは、右サイドの伊東の突破力にある。しかし、相手の警戒が強まると次第に孤立。強引なドリブルが増え始めれば、カウンターの温床となりかねない。
攻撃に幅が生み出せないなか、柏は中央からの打開を試みるが、人数をかけて守る仙台の守備を崩すには至らない。とりわけ、先制されてからはその状況がより強まり、密集地帯に無理に突っ込んでいっては、あっさりと跳ね返される。その繰り返しだった。
「攻撃しながらもカウンターを阻止して、また攻撃に出るという試合展開を、もっともっと理解する必要がある。それだけではなく、ちょっと違う戦い方にトライしないといけないと思っています」
加藤監督が指摘したように、今の柏に求められるのは攻撃のバリエーションだろう。技術に優れた選手が多く、ボールを持つことができるものの、崩しの選択肢に欠け、通り一辺倒の攻撃しか繰り出せない。これで加藤監督になってから2勝5敗。5敗のうち4敗が完封負けという状況が、今の柏の課題をはっきりと浮かび上がらせている。
もうひとつ気になったのは、クリスティアーノにまるで存在感がなかったことだ。規格外のフィジカルを備え、敵をなぎ倒すかのように突進し、破壊力抜群のフィニッシュを叩き込む。リーグ屈指のストライカーは、日本一の臨場感を誇る柏のホームスタジアムで、ひときわ大きく映ったものだ。
ところがこの日のクリスティアーノは、スピードにも力強さにも欠け、周囲との連動性もなく、そのプレーから怖さを感じることはなかった。その姿がどこか小さく見えたのは、こちらの気のせいだっただろうか。
下位に沈んでいた名古屋やガンバ大阪、サガン鳥栖が監督交代や夏場の補強で刺激を与え、結果を出せるようになったなか、柏はまだ光明を見出せていない。
気づけば、降格圏がすぐ背後に迫っている。