創志学園(岡山)の2年生エース・西純矢が、創成館(長崎)から16三振を奪って完封してみせた。

 創成館といえば、昨年秋の神宮大会で大阪桐蔭を破るなど準優勝を果たし、今年春のセンバツではベスト8に進出したのだから、間違いなく全国屈指の強豪校である。そんな強敵を相手に、許したヒットは内野安打を含めてわずか4本。しかも無四球という安定感抜群の内容だった。



センバツ8強の創成館から16三振を奪い、完封勝利を収めた創志学園・西純矢

 打者の懐(ふところ)を突いたかと思えば、次はアウトコースいっぱいを狙う。こんな鮮やかに”投げ分け”ができる2年生投手などそういるものではない。捕手の構えたミットに決められる精度の高さは、おおげさではなくプロのレベルに近い。

 精密なコントロールの要因は、しっかりとグラブでボールを隠したワインドアップと見た。

 実際にやってみればわかるが、グラブでボールを隠し、グラブをはめた手の甲を打者に向けて振りかぶると、両脇がキュッと締まる。この姿勢が、フォームの連動に”引き絞り感”を与えて、投げる際のばらつきを防ぐのだ。テークバックのときに、右手がきれいに巻き上がってくるのも、そのせいだ。

 私の見る限り、この試合で奪った16三振のうち12三振は勝負球の”スライダー”である。スロー映像で確かめると、人差し指と中指をくっつけて、そこに親指と”輪”をつくるようにボールを握り、強烈な腕の振りからボールを抜くようにして投げる”タテのスライダー”だ。

腕を地面に叩きつけるようにして投げるスライダーは、曲がり始めのポイントが打者に近く、しかも無駄に大きく曲がらないから打者に見極められることもない。「真っすぐだ!」と思ってバットを振り出した瞬間に、ボールはキュッと沈み、バットの下を通過したに違いない。

 普段はボールに喰らいつき、めったに空振りをしない創成館打線が最後まで翻弄され続けた。

 西のピッチングを見て、ハッとさせられた。「変化球って、本当はこうでなきゃいけないんだ」と。ストレートと同じ腕の振りで、握りを少し変えれば、変化こそ大きくないが打者にとっては厄介な球になる。

 ただ最近のピッチャーを見ていると、変化球を投げるときに「曲げなきゃいけない!」と意気込みすぎているように思えてならない。

「曲げなきゃ」と思えば、腕の振りが緩み、腕を振る角度も変わってしまう。そうなると、曲がり始めるのが早くなって、その分、変化の幅が大きくなり、打者に見極められてしまう。

 本物の”変化球”とは、一見ストレートのように見えて、打者が「よし!」とスイングを始めた瞬間にヒラリと軌道を変えていく。そういう”飛び道具”のことをいうのだ。

 奪った三振の8割ほどがタテのスライダーという変化球勝負だったのに、ピッチングに弱気な印象がまったくなく、強豪校相手に勇敢に立ち向かっていった記憶しか残っていない。

 西の快投から、変化球という存在の本当の”定義”と”あり方”を教わったような気がした。