エース吉田に注目集まる金足農は打線もOPS.990、高校野球をセイバー指標で分析

 ストレート最高速が150キロを記録したことのある投手の登板、史上7校目の夏連覇を目指す高校の登場など見所満載だった第4日目の試合をセイバー目線で分析してみましょう。

◯攻撃指標
OPS 出塁率+長打率
wOBA 1打席あたりにどれだけチームの得点に貢献したかを表す指標
O-swing% ボールゾーンのスイング率
Z-swing% ストライクゾーンのスイング率
Z-contact% ストライクゾーンのコンタクト率

【日南学園】
得点2 打率.265 出塁率.265 長打率.294 盗塁1/2
OPS .559 wOBA .278
O-swing% 26.4% Z-swing% 68.5% Z-contact% 94.0%

【丸亀城西】
得点0 打率.138 出塁率.242 長打率.138 盗塁0/1
OPS .380 wOBA .224 
O-swing% 15.0% Z-swing% 67.8% Z-contact% 92.5%

 日南学園59.6%、丸亀城西57.9%とZone%(ストライクゾーンに投じられる割合)が高く、しかも甘いコースに入らないという両投手の頑張りもあり、打線はどちらも低調になってしまいました。そんな中、少ないチャンスをものにした日南学園が効果的なタイムリー2本で勝利しました。ただ、丸亀商業のO-swing%は15.0%と選球眼の良さが光りました。

【鹿児島実】
得点1 打率.265 出塁率.306 長打率.324 盗塁1/1
OPS .629 wOBA .313
O-swing% 25.6% Z-swing% 58.7% Z-contact% 86.4%

【金足農】
得点5 打率.387 出塁率.441 長打率.548 盗塁0/1
OPS .990 wOBA .435
O-swing% 20.8% Z-swing% 64.9% Z-contact% 88.0%

 豪腕エースに注目が集まる金足農ですが、打の方でも2本の三塁打を含む12安打、OPS.990の打棒で得点を重ねました。鹿児島実は金足農・吉田投手の高めのストレートがストライクゾーン外にきても手を出して空振りすることが多く、14三振を喫しました。しかしながら7イニングで得点圏までランナーを進めるというチャンスは多く作るものの、そこで生まれたタイムリーヒットは1本のみというもどかしい攻撃が続いてしまいました。

【東海大星翔】
得点3 打率.265 出塁率.306 長打率.265 盗塁0/1
OPS .570  wOBA .257
O-swing% 27.3% Z-swing% 76.9% Z-contact% 80.0%

【大垣日大】
得点9 打率.344 出塁率.382 長打率 .719 盗塁1/1
OPS 1.101  wOBA .504
O-swing% 26.7% Z-swing% 63.6% Z-contact% 90.5%

 ヒット9本すべて単打の東海大星翔に対し、本塁打3本を含むヒット11本、OPS1.101と打で圧倒した大垣日大。東海大星翔・山下投手のストライクゾーンに入ったストレートに対し98.1%の割合でコンタクトするバットコントロールの良さが目立ちました。

【花咲徳栄】
得点8 打率.351 出塁率.405 長打率.541 盗塁0/0
OPS .945 wOBA .408 
O-swing% 24.1% Z-swing% 58.6% Z-contact% 97.6%

【鳴門】
得点5 打率.233 出塁率.378 長打率.267 盗塁3/4
OPS .645 wOBA .309 
O-swing% 22.5% Z-swing% 60.3% Z-contact% 87.8%

 前回優勝時には一度もリードを許さなかった花咲徳栄ですが、今大会初戦ではいきなり先制されリードを許す苦しい展開に。しかし、Z-contact%の97.6%に示されるようにバットコントロールが素晴らしい花咲徳栄の打線は、8回に鳴門・西野投手の球がストライクゾーンの甘いコースに集中するようになったところを逃さず集中打を浴びせ、土壇場で逆転しました。

150キロ右腕の金足農・吉田は平均ストレート球速141.2キロ

◯投手指標
P/IP 1イニングあたりの投球数
WHIP 1イニングあたりで安打、四球でどれだけ走者を出したかの指標
GO/AO ゴロアウトの総数をフライアウトの総数で割って算出

【日南学園】
辰己凌晟(右)
9回 投球数99 P/IP 11.00 WHIP 0.89 GO/AO 0.92

【丸亀城西】
大前輝明(右)
9回 投球数126 P/IP 14.00 WHIP 1.00 GO/AO 1.10

【鹿児島実】
吉村陸矩 (右)
6回2/3 投球数117 P/IP 17.55 WHIP 1.80 GO/AO 6.00
立本颯 (左)
1回1/3 投球数32 P/IP 24.00 WHIP 2.25 GO/AO 1.00

【金足農】
吉田輝星(右)
9回 投球数157 P/IP 17.44 WHIP 1.22 GO/AO 1.80

【東海大星翔】
山下朝陽(左)
8回 投球数126 P/IP 15.75 WHIP 1.63 GO/AO 0.64

【大垣日大】
修行恵大(右)
4回 投球数83 P/IP 20.75 WHIP 1.50 GO/AO 3.00
内藤圭史(右)
5回 投球数52 P/IP 10.40 WHIP 1.00 GO/AO 2.33

【花咲徳栄】
野村佑希(右)
9回 投球数149 P/IP 16.56 WHIP 1.56 GO/AO 1.00

【鳴門】
西野知輝(左)
9回 投球数127 P/IP 14.11 WHIP 1.89 GO/AO 1.10

 花咲徳栄・野村投手は序盤の2回で4失点。Zone%は45.9%と制球に苦しんだ様子が伺えます。しかし4回に自身で放ったホームランが効いたのか、その後立て直し、無失点で抑えました。

 150キロの速球が期待された金足農・吉田投手ですが、この日のMAXは148キロで、自身で球速差をつけたこともあり平均ストレート球速は141.2キロでした。

 なおイニング別のストレート球速は以下の通りです。

1回 141.4キロ
2回 138.6キロ
3回 141.1キロ
4回 142.3キロ
5回 143.0キロ
6回 143.1キロ
7回 140.8キロ
8回 138.0キロ
9回 139.8キロ

 最高の148キロを記録した5回と6回がピークとなり、100球を超えた7回以降は徐々にスピードが落ちていますが、次戦以降も吉田投手の快投に期待です。(鳥越規央 / Norio Torigoe)

鳥越規央 プロフィール
統計学者/江戸川大学客員教授
「セイバーメトリクス」(※野球等において、選手データを統計学的見地から客観的に分析し、評価や戦略を立てる際に活用する分析方法)の日本での第一人者。野球の他にも、サッカー、ゴルフなどスポーツ統計学全般の研究を行なっている。また、統計学をベースに、テレビ番組の監修や、「AKB48選抜じゃんけん大会」の組み合わせ(2012年、2013年)などエンターテインメント業界でも活躍。JAPAN MENSAの会員。一般社団法人日本セイバーメトリクス協会会長。
文化放送「ライオンズナイター(Lプロ)」出演
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