第1日目の試合をセイバーメトリクスの指標で分析、3校の勝因は?

 第100回の全国高校野球選手権記念大会が開幕。史上最多の56校が甲子園に集結し、これから熱戦を繰り広げることでしょう。

 高校野球でもデータによる戦術、戦略が取り入れられる時代ということで、ここでは第1日目の戦いをセイバーメトリクスの指標で振り返ってみます。

◯攻撃指標
(O-swing%はボールゾーンのスイング率、Z-swing%はストライクゾーンのスイング率、Z-contact%はストライクゾーンのコンタクト率)

【藤蔭】
得点4 打率 .235 出塁率.257
長打率.235 OPS.492 盗塁3/4
O-swing% 41.2%  Z-swing% 68.6% Z-contact% 88.6%

【星稜】
得点9 打率.393 出塁率.441
長打率.607 OPS1.048 盗塁1/2
O-swing% 29.3%  Z-swing% 65.0% Z-contact% 92.3%

【済美】
得点5 打率.290 出塁率.361
長打率.387 OPS.748 盗塁3/3
O-swing% 25.0% Z-swing% 61.3% Z-contact% 93.5%

【中央学院】
得点4 打率.226 出塁率.265
長打率.323 OPS.587 盗塁0/1
O-swing% 44.6% Z-swing% 73.6% Z-contact% 94.9%

【中越】
得点2 打率.250 出塁率.333
長打率.281 OPS.615 盗塁1/2
O-swing% 31.9% Z-swing% 60.7% Z-contact% 97.3%

【慶応】
得点3 打率.212 出塁率.297
長打率.212 OPS.509 盗塁 0/0
O-swing% 24.1% Z-swing% 49.3% Z-contact% 91.2%

 第1日目では、始球式を務めた松井秀喜氏の母校・星稜が本塁打はないものの、長打4本をからめ、OPS「1」超えの打棒で勝利を収めています。また、勝利したチームはいずれもO-swing%が対戦相手よりも低いことがわかります。相手のボール球に手を出さないことで、投手へのプレッシャーをかけていることに繋がっているのでしょう。

 また、慶応のZ-swing%が50%をきっています。この試合での慶応のP/PA(1打席あたりに相手投手に投げさせた投球数)は4.0。5球以上投げさせた打席が45.9%と中越の投手の球を見極めてきました。同点で迎えた9回裏では、ボール球14球のうち慶応の打者が手を出したのはわずか2球。最後は左投げの山田叶夢投手に2打席抑え込まれていた宮尾将選手が、1球目に見逃したのと同じコースである外角真ん中のストレートをライトに運び、サヨナラ勝ちを呼び寄せたのです。

投手の指標は? 済美の山口は低めへの制球で中央学院を抑える

◯投手指標
(P/IPは1イニングあたりの投球数、WHIPは1イニングあたりで安打、四球でどれだけ走者を出したかの指標)

【星稜】
奥川恭伸(右)
8回 投球数111 P/IP 13.88 WHIP 1.13
寺西成騎(右)
1回  投球数9 P/IP 9.00 WHIP 0.00

【藤蔭)
吉村紘輝(右)
2回1/3 投球数45 P/IP 19.29 WHIP 3.00

市川晃大(右)
5回2/3 投球数90 P/IP 15.88 WHIP 1.41

【済美】
山口直哉(右)
9回 投球数109 P/IP 12.11 WHIP 1.00

【中央学院】
西村陸(右)
9回 投球数151 P/IP 16.78 WHIP 1.44

【慶応】
生井惇己(左) 
7回2/3 投球数131 P/IP 17.09 WHIP 1.56
渡部淳一(左)
1回1/3 投球数15 P/IP 11.25 WHIP 0.00

【中越】
山本雅樹(右)
5回2/3 投球数105 P/IP 18.43 WHIP 1.41
山田叶夢(左)
3回0/3 投球数43 P/IP 14.33 WHIP 1.00

 済美の山口投手は、スライダー、チェンジアップのコントロールが低めに決まり空振りを多く取ることができました。特に中央学院の4番、大谷拓海選手に対して投じた11球のうち5球で空振りをとり、2三振と抑え込みました。また9回で109球と球数も抑えています。

 中越は、右の山本と左の山田を交互に起用し慶応打線を抑えてきましたが、最後は左の山田が、左打者の宮尾に打たれサヨナラ負けを喫してしまいました。(鳥越規央 / Norio Torigoe)

鳥越規央 プロフィール
統計学者/江戸川大学客員教授
「セイバーメトリクス」(※野球等において、選手データを統計学的見地から客観的に分析し、評価や戦略を立てる際に活用する分析方法)の日本での第一人者。野球の他にも、サッカー、ゴルフなどスポーツ統計学全般の研究を行なっている。また、統計学をベースに、テレビ番組の監修や、「AKB48選抜じゃんけん大会」の組み合わせ(2012年、2013年)などエンターテインメント業界でも活躍。JAPAN MENSAの会員。一般社団法人日本セイバーメトリクス協会会長。
文化放送「ライオンズナイター(Lプロ)」出演
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