去年の勢いはどこへいってしまったのか――。

 日本ツアー4年目のキム・ハヌル(29歳/韓国)が、今季は苦戦を強いられている。



今季は苦しい戦いが続いているキム・ハヌル

 2011年、2012年と2年連続で韓国ツアーの賞金女王に輝いて、2015年から鳴り物入りで日本ツアー参戦を果たしたキム・ハヌル。1年目からツアー初勝利を飾ると、2年目の2016年は2勝、3年目の昨季は3勝と、年を重ねるごとに勝ち星を増やしてきた。

 とりわけ昨季は、前半戦で驚異的な強さを発揮。ツアー優勝を重ねて賞金ランキングのトップを快走し、賞金女王のタイトル獲得も、決して夢ではない状況にあった。

 最終的には、鈴木愛らと熾烈な女王争いを展開し、あと一歩及ばなかったものの、賞金ランキング4位となって、2年連続で獲得賞金は1億円を突破した。キム・ハヌル自身、目前に迫っていた女王の座を逃しながら、落ち込むようなことはなく、反対に日本での確かな手応えと自信を得ていた。

 そのうえで、キム・ハヌルは今季、開幕前にこんなことを話していた。

「去年は3勝だったので、今年は4勝を目標にして一生懸命がんばりたい」

 だが、そんな意気込みとは裏腹に、今季は昨季までの強さが陰を潜め、勝利から遠ざかっている。

 ここまで15試合に出場して、最高位はサイバーエージェントレディス(4月)の7位タイ。5月のほけんの窓口レディースでは背中痛で棄権するなど、予選落ちも2回あって、賞金ランキングは60位と低迷している。

 今年の12月には、節目の30歳を迎える。体力的には下降線をたどる年齢でもあり、何年もいい状態を保つことが難しいのはわかる。だとしても、昨季女王争いまで演じた選手が、ここまで急落することはとても想像できなかった。

 昨季の活躍ぶりからして、キム・ハヌル本人にとっても、想定外の結果だったのだろう。最初は話を聞くのも気の毒なほど、自信を失っているように見えた。

「昨季は、何度も試合で上位争いをして、賞金女王のタイトルも意識していたほど。それだけに、今年は結果が出ないたびに『なぜなんだろう……』と、すごく悩んでしまった。そこで、後ろ向きな考えをしてしまうことが、とても多かったんです。

 そうして、少しずつ自信を失ってしまった。それが(低迷の)原因だと思います。今は早くよかったときの気持ちを取り戻すことが、先決だと考えています」

 日本の環境とコースに慣れるための努力の甲斐あって、昨季までの成績は確かに上向いていた。それが、急に不振に転じてしまった。そこから抜け出すことの難しさは、彼女が一番よく知っているのだろう。それゆえ、安易に強がることもない。

「私は韓国でプレーしていたときも、調子の波がかなりありました。どの選手にも成績の浮き沈みはあると思うのですが、私はその傾向がより激しいのかもしれません。成績がいいときはすごくいいし、悪いときは本当にとことん悪いですから。

 そうした経験があるので、今は調子が戻ってくることを信じるだけ。1試合、1試合を大事にプレーしていきたいと思っています」

 キム・ハヌルの言うとおり、2011年、2012年と韓国ツアーで賞金女王となったときも、翌年から彼女はスランプに陥っている。ドライバーが不調で、イップス気味な状態にあった。おかげで、なかなか結果を出すことができず、当時韓国では”落ち目の選手”という意味で、彼女のことを「老将(ノジャン)」と呼ぶメディアさえあった。

 そうした苦悩を経て、キム・ハヌルは日本という新たな舞台に戦いの場を移して、3年でツアー6勝という結果を残してきた。酸いも甘いも知り尽くし、あらゆることを経験してきたからこそ、今の状態にも「焦ることはない」と言う。

「ゆっくり、自分のペースで練習して、いいときの自分が戻ってくると信じて、今は一生懸命やるしかありません。練習もしないで、調子が戻ってくるのを待っているだけでは、プロの選手として失格ですよね。とにかく努力を続けて、トレーニングも重ねて、精一杯がんばっていく。そうすればこの先、必ずよくなると思っています。

 それに、両親が精神的にも支えてくれています。『ここまで本当によくがんばっているし、何も焦る必要はない』と。そして、『”早く結果を出したい”という考えはするな』とも言ってくれています。そう言ってくれるだけでも、とても力になりますし、精神的に落ち着くことができます」

 状態が悪いときほど、必要なのは耐え忍ぶこと――その術(すべ)を心得ているからこそ、キム・ハヌルは投げやりになったり、諦めたりしない。

「今では、ショットの感覚もすごくよくなってきました。ちょうど1カ月くらいゆっくり休んで、体の痛いところをしっかりケアして、頭も体もきちんとリフレッシュできました。ですから、今はとてもいい状態です」

 そう言ったあと、何か少し考えてから、彼女はこう語った。

「一度でも自信を取り戻すことができれば、必ずよくなると思うのですが……。そのたった一度のきっかけを、何とかつかむことができれば……。そのためにも、やっぱり早く優勝したい。そして、自信を取り戻せるようにしたい」

 やはり、求めるのは結果である。それも”優勝”という結果だ。どんな状況にあっても、勝利に対する貪欲な気持ちが消え失せることはない。

 まして、韓国で2度、女王の座に就いて、日本でもその座に手をかけたキム・ハヌル。再び、輝かしいスポットライトを浴びたいに決まっている。

 今はその日が来ることを、じっと待つだけである。