2016年リオ五輪でベスト8、アジアでは3連覇を達成。アンダーカテゴリーでも世界大会で連続ベスト8以上に名乗りを上げている日本の女子バスケ。着実に力をつけている中で、Wリーグでは、昨シーズンに10連覇を達成したJX-ENEOSの『1強…

 2016年リオ五輪でベスト8、アジアでは3連覇を達成。アンダーカテゴリーでも世界大会で連続ベスト8以上に名乗りを上げている日本の女子バスケ。着実に力をつけている中で、Wリーグでは、昨シーズンに10連覇を達成したJX-ENEOSの『1強』時代が続いている。どこのチームも、JX-ENEOSが持つ高さと豊富なキャリアを打ち破れずにいた。



左から、髙田真希、オコエ桃仁花、赤穂さくら、赤穂ひまわり

 しかし、今シーズンこそはと、虎視眈々と優勝に狙いを定めているチームが多い。対抗馬の一番手としてあげられるのが、昨シーズンにWリーグと皇后杯で準優勝まで駆け上がったデンソーアイリスだ。その中心選手4人は、9月のワールドカップに向けて、日本代表の最終候補に選ばれている。

 キャプテンで日本代表の得点源である髙田真希(183cm)。昨シーズンにフル代表デビューしてアジア3連覇に貢献した赤穂さくら(183cm)。さくらの2つ下の妹で、昨シーズンの新人王に輝いた赤穂ひまわり(184cm)。パワフルプレーが持ち味で急成長中のオコエ桃仁花(もにか/181cm)。彼女らは全員180cm超のサイズを持つ。1チームで4人もの180cmオーバーの代表選手を輩出しているのだから、JX-ENEOSの対抗馬として期待されるのも当然である。

 話は少し逸れてリオ五輪後のシーズン(2016-17)に遡る。Wリーグの準決勝でJX-ENEOSに歯が立たずに敗れたデンソー。当時は世代交代を迎えていた事情があったものの、キャプテン1年目の髙田は「うちのチームに一番足りないのは技術。経験がないというのは言い訳で、技術で及ばないことを認めて鍛え直したい」と悔し涙を流して再出発を誓ったほどだった。

 そして昨シーズン(2017-18)は「いい意味で周囲の期待を裏切った」と髙田自身が手応えを語るほどの飛躍を遂げ、準優勝という好成績を収めた。オフシーズンの取り組みから見直した練習でガード陣が開花し、赤穂ひまわりやオコエを筆頭とした7人もの有望なルーキーの加入がチームに競争と刺激を与え、勢いという相乗効果までもたらしたのだ。何より成長していたのがキャプテンの髙田だった。すでに大黒柱として君臨しているが、進化したのはリーダーシップだ。

 2シーズン前にキャプテンに指名されたときの髙田は、クールに見える性格そのままに「声を出すのが得意ではなかった」と振り返る。しかし、チーム向上のためには自らが成長しなければならない。この2年は「練習で声を出すこと、選手に声をかけること」から取り組み、殻を破っていった。そして今季は、日本代表のキャプテンを務めるまでのリーダーシップを身につけている。

 決してグイグイと牽引していくタイプではないが、日本代表で揉まれてきた髙田のひと言は「経験に(基づいて)重みがあって、いつも心に響きます」(赤穂さくら)と若手選手にも理解され、信頼を得ている存在だ。

 今年の夏で29歳。今、彼女を突き動かしているのは「東京オリンピック」と「打倒JX-ENEOS」である。そのカギとなるのは高さを生かした攻防であることは明らかだが、「いかに苦しい場面でシュートを決め切り、ディフェンスで抑え、当たり前のことをしっかりできるかにかかっている。それができるからJX-ENEOSは強い」と課題を挙げている。さらなるリーダーシップで若いチームを導いていきたいところだ。

 続いて、成長著しい注目選手たちを紹介しよう。

 赤穂さくら、22歳。強い体を生かしたインサイドを得意とするセンターだ。妹のひまわりが1年目から中心選手となった活躍を見て「私が新人の頃はあそこまで対応力はなかった」と言うものの、日本代表としてはすでに昨年にアジア制覇の歓喜を味わい、今は経験を一つひとつ積み上げているところだ。もちろん2年後の東京五輪に向けても意欲的で「主力で出たい」と公言する。

「昨シーズンに初めてファイナルを経験して、負けた悔しさと、”絶対にまたこの舞台に戻ってきてやる”という思いが強くなりました。JX-ENOSに唯一身長で対抗できるのはデンソーだと思う。でも勝つためには、もっと変わらなければなりません。昨シーズンのファイナルのあとJX-ENEOSが『うちのチームは負けず嫌いばかり。気持ちではどこにも負けない』と言ったのを聞いて、自分たちはチャンピオンになるための練習から負けていて、まだまだ甘いことに気づきました。日本代表では今まで核だった大崎(佑圭、JX-ENEOS)さんが抜けたので、そこをチャンスと捉えてポジションを奪いたい。東京オリンピックには主力になって出場したいです」

 赤穂ひまわり、19歳(8月28日の20歳)。184cmの身長で機動力を誇るフォワードだ。日本代表のトム・ホーバスHC(ヘッドコーチ)は「将来は2番(シューティングガード)ができる」と惚れ込み、今ではシュートレンジを広げるトライをしている。2つ年上の姉・さくらを追ってデンソーに入ったのかと思いきや「姉のことは関係なくて、私のことを必要としてくれたのでデンソーを選びました」とキッパリ言う向上心の強い昨シーズンの新人王だ。

「自分の武器は身長があるわりにアウトサイドのプレーができること。もっとリバウンドで強みを発揮できれば、誰にも負けないアウトサイドの選手になれると思っています。今年はじめて日本代表に選ばれ、東京オリンピックに出たい気持ちが強くなりました。今はまだそのレベルには達していないけれど、ワールドカップを経験することで、そのチャンスをつかみたい。今までの日本には185cmくらいの2番ポジションの選手はいなかったので、自分がそうなれるように成長したい」

 オコエ桃仁花(モニカ)、19歳。1歳上の兄、瑠偉(東北楽天ゴールデンイーグルス)の名が知られているが、妹も負けてはいない。ルーキーイヤーの昨季はケガで出遅れたが、随所に見せるパワフルさにホーバスHCはポテンシャルを見出し、初となる代表候補に選出。強化試合となった6月のチャイニーズタイペイ戦では、要所で3Pシュートを決めてプレーの幅の広がりをアピールするほど急成長を遂げている。有望なルーキーがひしめく中でデンソー入団を決意したのはチームの熱意を感じたからだ。

「スカウトの方に自分の育成プランをスライドで説明してもらい、毎年成長していく自分の未来図を見て感動した」ことが決め手だと語る。ちなみに、その育成プランによれば、2年後には東京オリンピックに出場することになっているが、代表選出は来年だったというから、その成長の速度には驚かされるばかりだ。

「昨シーズンはケガで出遅れたこともあったので、『経験を積めればいいな』という思いで代表の合宿に参加したけれど、練習をするたびに『自分でもできる』という手応えが出てきました。自分でチャンスをつかみとって最終選考まで残ったと感じています。日本代表では、一番の怒られ役。でも怒られたほうが早く成長すると思うし、怒られても今はバスケが楽しいので、もっと成長できるようにがんばります」

 デンソーの4選手は、8月5日(新潟・長岡)と7日(群馬・高崎)に開催される日本代表の強化試合のカナダ戦に出場する。この試合はワールドカップに向けた最終選考を兼ねている。髙田は初キャプテンとしてどうチームを導いていくか。そして、若き3選手は代表への生き残りをかけてどうアピールするかに注目だ。

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